教育
2025年01月10日
言葉ができることはなんだろう
百万年書房の北尾さんが「天才」と絶賛していたので（ひょっとすると、自社で出版している作家は全員そう思っているのかもしれないが）、手に取ってみる。名前の「くじら」が気になる。世界一大きな動物の「くじら」なのか、それとも、全く別の意味があるのか。まさかGPIFとは関係ないだろうが。
著者は「国語教室 ことば舎」代表で、詩人。さらには、初めての小説『いなくなくならなくならないで』はデビュー作にして芥川賞候補となった。「ことば舎」は自学自習形式の塾で、「勉強も表現もない交ぜに教え」るらしい。そこには、自分が習った「嚮心塾」での体験がある。
くちぶえ、ソロで
12：読んだり書いたりすることのもっともいいところは、ひとりでできるところである。
犬ではないと言われた犬
19：「書いている人が、これは詩である、と言い張れば、詩です！」
ひとりで学ぶことについて
75：自分が習った「嚮心塾」自学自習形式
わたしはそこに通い始めるまで、一切勉強ができない学生だった。
ほら、フレディ
91：「つまりまず以前の詩人たちによって多様な拘束を身に負わせられる、次に新しい拘束を創案し加え、それを身に負い、それを優雅に征服する」（ニーチェ『人間的な、あまりに人間的な』）
ミケ
200：眉村ちあき「僕が僕であるために」（尾崎豊カバー）
204：眉村さんの歌が大泣きに拍車をかけ、ほかの乗客に不審な目で見られながら駅のホームに降りて、わたしは国語教室を作ることに決めた。作るなら、一回きりでない会い方がいい。勉強も表現もない交ぜに教え、今いるところに留まらず、つぎへ、つぎへと進めるような教室がいい。
あとがき：
人間と関係すること、人間以外と関係すること。「ありのまま」を克服すること。そして結局、ひとりでいること。
2024年12月22日
受験勉強
中学生の時に父親が失踪、高校生の時には母親が倒れて家事をこなしながら高校3年生となった著者。兄の成田悠輔は一浪して東大生となっていた。その兄から、和田秀樹の本を紹介され、「受験勉強は、ゴールから逆算して必要最低限の点数を取り切れるかどうかのゲーム」だと言われる。
つまり、合格がゴールだとすれば、合格最低点で受かればいいわけだ。ここから兄の通っている東大文二と慶應経済にターゲットを絞り、合格するのに「全体で何点が必要か」を基に、「科目別に目標点数」を決め、それを達成するための「時間を割り振り」して受験勉強を始める。
結果は、慶應経済〇、東大文2×で、東大は「2点足らず」であったという。自分が設定した点数（＝合格水準）はクリアしていたのだが、その年の試験問題が若干簡単で合格最低点が上がったのだという。東大が第一志望だったから、浪人する手もあったのだが、それよりも「やってみたいこと」があったので、遠回りはしないと決める。
実は、「高校卒業前に兄からアドバイスがあり、ビジネスに興味を持っていた」という。その時に、兄から言われて読んだのが、大前研一『企業参謀』と保田隆明『企業ファイナンス入門講座』であったというのは流石。普通の高校生は読まないし、読めと言われても、面白いと思うかどうか。
81：「会計・財務」「ソフトウェア」「起業家性」「ビジネスは面白そう！」�＿魴茲靴燭げ歛蠅筌粥璽襪�明確�▲繊璽爛好檗璽弔忙�ている��実社会と密接につながっていて、インパクトが大きい�いΔ泙�いけば経済的にも恵まれる
2024年12月21日
戦わずに圧倒的に勝つ人生戦略
私はよく知らなかったのだが、起業家でエンジェル投資家。慶応大学在学中に起業。その会社を退任して、大学4年生でクラウドワークスの創業期に執行役員として参画。取締役に就任後、創業わずか3年目（2014）、25歳の時に上場を果たす。当時、上場企業の取締役として最年少であった。上場後は副社長COOとして同社の全事業を統括している。2023年退任。
プロローグ：「人生をやり直したい」14歳で父が失踪→17歳で母が脳出血で半身不随→母が自己破産父＝知識人（麻布中高）でありながら、パチンコ、麻雀、酒、タバコに目がない→ギャンブルをしては借金
といきなり、衝撃的な話から始まる。これで自暴自棄にならずに、逆に「一念発起」したというのは、
もともと父親のダメな姿を見て育ったからなのか。
もともと父親のダメな姿を見て育ったからなのか。
「これからの人生、誰も助けてくれない。自分の人生をどうにかできるのは、自分だけ」
母親が倒れてからは、高校生だった著者が家事担当となる。今風にいえば、ヤングケアラーだ。
58：工夫をすれば解決策はある食費＝家族3人で、月3万円
その間、行政の支援があったのか、親族に頼らなかったのかなどは一切記述がない。普通、このような状態になれば、まず頼るのは親族だと思うので、これには違和感がある。そうできない事情があったのか。
この時、4歳上の兄（Yale大学助教授で若手論客として有名な成田悠輔）は東大生。うちも、父が脳出血で急死した時、私が19歳で、妹が16歳、弟は13歳。成田家とほぼ同年齢だが、うちは死亡だったのでその後の看護・介護は不要であった。母は結婚前から働いていた仕事を続けていたおかげで、それほど生活環境は変わらなかった。
この時、4歳上の兄（Yale大学助教授で若手論客として有名な成田悠輔）は東大生。うちも、父が脳出血で急死した時、私が19歳で、妹が16歳、弟は13歳。成田家とほぼ同年齢だが、うちは死亡だったのでその後の看護・介護は不要であった。母は結婚前から働いていた仕事を続けていたおかげで、それほど生活環境は変わらなかった。
「悩みや不安がない人生を送っている人は、誰一人としていない」→【人生を上昇気流に乗せる５つの考え方】�／誉犬乃�きることをすべてポジティブにとらえ、不幸も「明るい未来」への布石と考える�⊆�分の個性をよく理解し、信じ、育てる�６饌療�な目標を立てる・目的意識を持つ�ぜ匆颪両鐚韻簓澆�れたレールを疑い、競争せずに、試行錯誤を徹底的に繰り返す�ヌ椶料阿僕茲娠燭鬚弔�み取る
2024年12月04日
名門Q女子高
田舎の公立校育ちの私にとって、東京に出てきて初めて知ったのが、名門私立校の存在。中高一貫で、中には小学校まであるというのに驚いた。香川にも私立中高一貫校はあるにはあったが、中学校から通うには遠すぎたし、高校を公立のすべり止めに受けただけ。進学すれば学費を無料にするという特典が付いたが、県立高校の学費は月に数千円程度でそれほど変わるわけでもないので、断った。
主人公の女子中学生は、仲の悪い妹と離れて暮らしたくて、家族でスイスに引っ越すというのに、日本に一人残る。そうして、頑張って「名門Q女子高」を受験し、入学を果たす。
モデルは明らかに慶應女子高校で、これも、東電OL事件の被害者と同じ出身高校。これが本当なら、外部から入ると大変だ。89：入学式内部からの生徒と外部からの生徒の差は一目瞭然でした。それは、制服のスカート丈の違いだったのです。
94：内部生が発散する富の淫らさ
富というのは、常に過剰を生む。だからこそ自由で淫ら。
106：「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ。日本で一番だと思う。見栄がすべてを支配してるの」
118：悪魔の不在
ミツルのように巧緻でもなく、わたしのように冷酷でもない。何かが根本的に弱かった。
121：和恵はQ女子高に入ってはいけなかった
これほど嫌らしく見栄の絡み合った複雑な世界はないのに、自分がこえまで培った努力と勤勉という価値観で通ると思っている。
123：独立独歩と自尊心
純粋培養された教師たちによって、学園の教育理念はさらに抽象的な意味を失い、この学校では「何でもあり」だということをわたしたちに教えてくれた。
2024年09月14日
大学全入時代
私立大学の59%がついに定員割れ！（本年度の入学者）。私立大学だから、勝手に赤字を出して、勝手に潰れればいいじゃないかという声もあるが、�〇篶�大学といえども文科省から運営補助金が出ている、�△海Δ靴芯螳�割れの私立大学が高卒レベルにも満たない「学士」を量産しているため、社会全体の生産性が上がらない、という点で問題があると思う。
日本大学の事件で明らかになったが、日本大学は年間90億円の私学助成を受けていた。かように、日本の私立大学は主に学生数に応じて、数十億円の助成を受けている。その総額は年間3000億円に上る。だから、税金が使われているという意味で、全国民に関係がある。
第二に、定員割れしている私立大学の多くは偏差値も低い。私も、一時、偏差値40ちょっとの地方私立大学の講師をしていたが、日本語が通じない。その何割かは中国人留学生で、驚くべきことに、その大学では「留学生割引」があって、70万円の授業料が半額になっていた。日本人学生だけでは全く定員に満たないので、不足分を留学生で埋めていたのだ。
言ってみれば、納税者の税金で、留学生の教育をしている。何人かの中国人留学生に「なぜわざわざ留学してきたの？」と聞くと、「中国ではいい大学に入れないから」と言う。中国でも大学は増えていて、入れる大学もあるはずなのだが、「いい大学に行けないなら日本に留学する方がいい」という。
留学費用はいずれにしろ親が出してくれるし、中国に帰ったとき、「日本に留学していた」方が、国内の三流大学よりいいのだそうだ。
132：イギリスでは自分の住んでいる家を勝手に変えることもできない
建て替えて前とは違う高い建物にするとか、壁の色を変えるとか、そういうことは一切できない。
133：イギリスの風景を変えたくない
自分の国を愛するということは、街や地域を含めた、その全体の風景を大事にすること。
168：大学の全入時代
ここ4，5年の間に大学の学部の数は急増。国立大学でも、公立大学でも、私立大学でも学部が次々と新設。他方、消え去った学部はたった25。
169：日本の大学総数は700近く
教育に手放しの自由競争を持ち込むのが間違い。
「子どもには自由にやらせて勉強を強制したことはありません」
186：男性側に相手がいない
女子学生のほうは勉強はできなくても自分は胸で勝負するとか、顔を整形して勝負するとか、短いスカートをはいて勝負するとかいって異常なほど自信を持っている。
193：イギリスの大学生2割がドロップアウト
銀行から無利子ローンを借りて大学進学が多いので、学位も取れなくて、借金だけ増えてしまう。ドロップアウトする学生には、親がワーキングクラスで、大学を出てない家庭の子どもたちが多い。←労働党のブレア政権が、これまで大学に行った人のいない家族の中の子どもたちを大学に行かせようと、大学を拡大。新大学の多くはかつては専門学校。
2024年09月09日
実際に使える英語
今年イギリスでお亡くなりになったのを聞いて、何冊か読んだなかの一冊。
20年近く前の本だが、この点特に変わっていない。この20年で日本企業の国際化はグッと進んだ。国内市場に見切りをつけて、本格的に海外市場に取り組み始めた。同時に、欧米市場での保護主義が進んだので、これまでのように製造業も輸出で済まなくなり、現地生産に舵を切った。結果、駐在員が増え、並行して帰国子女も増えた。はじめに：中高校時代に海外へ語学研修に行った人も多いしかし、日常会話をこえた、自分の意見を述べる、議論をするなどという段になると、とたんに言葉に詰まり、支離滅裂になる人が意外と多い。
最後に：英語の達人は日本語の達人結局、思考や意思伝達の手段である言葉を大切にする人は、言葉に関心が高く、興味さえ持てば外国語のレベルも上がると思う。外国人と軽やかに口語で話すのはかっこよく見えるかもしれないが、仕事でしっかりした組み立ての文章を書いたり、交渉相手を説得することとは関係ないので、それだけで終わってしまう。
40：countable/uncountable
最近はイギリスでも、a cup of tea→a tea/teas
70：リズムが悪いと通じない
発音より大事なリズム。
135：idiomが分からなければ、簡単な文もわからない
使えるidiom。
2024年08月12日
貴族にとっていちばん大切なこと
この価値観は貴族だけでなく、イギリスの価値観として大切にされていると思う。言ってみれば、日本のカワイイ文化と対極にある。
166：貴族として暮らしていくのにいちばん大事なこと
女性であれば人前で泣かないこと。自分は何もわからないし、できない、かわいそうな女の子ですといったポーズをしないこと。
167：男性の貴族にとっていちばん大切なこと
危機に瀕してパニックに陥らないこと。危機に瀕してなおかつユーモア精神があること。
172：イギリスの大学
学期のはじめに、この学期に読むべき本のリスト（5〜15冊）。学生はリストに上げられた本を読んでいることを前提として講義。
193：日本語学習者が急増
へたをすると、日本経済が下向きになったとたんに、日本語なんか見向きもされなくなるかもしれない。
2024年08月11日
英国病の克服
イギリスの大学は、米国に比べれば安いと言われるが、それはイギリス人の場合。私が留学していた35年前は、授業料は�．ぅ�リス人、��EU国籍、��その他の三段階あった。運営補助金をもらっているのだから、税金を払っている家庭は安いという論理である。
その後ビジネススクールへの政府補助金は無くなったので、現在では同じ授業料となっているが、一般大学の授業料は今でも格差がある。こちらの同じロンドン大学のUCLに留学している日本人学生によれば、「外国人留学生は現地人の3倍（約600万円）」とのこと。
10年ほど前に、当時所属していた国立大学で試算したところ、学生一人当たりに掛かっている費用は約200万円であった（学部生の場合）。学費は当時も今も変わらず年間535,800円なので全くカバーできていない。後は、少しばかりの医学部附属病院の収益があるのみ。残りの大半は運営補助金、つまり国税で支払われていた。ちなみに、東大の場合は学生1人当たり700万円以上が投入されており、4年間で2900万円の税金がつかわれている。
先のUCL留学生も書いているが、日本の場合は、逆に留学生を優遇している国立大学が多い。留学生の授業料は日本人より安く、寮費が無料であったり、場合によっては生活費の補助迄出ている。それらは全て日本人の税金で賄われているわけで、それはおかしいと思うのは当然だろう。
企業で値付けは大変重要だ。提供するサービスにいくらの値段を付けるかそのものが、その企業の姿勢、マーケットでのポジションを決める。もちろん、それだけの価値があるかどうかを決めるのは消費者だが、コストを大きく下回る値段では早晩会社が潰れるので継続できなくなる。最初から安い値付けでは、安さにひかれた消費者（大学であれば学生）しかやってこなくなる。
国立大学は段階的に実際に掛かっている費用である200万円を賄うため、そこまで学費を値上げすべきだろうし、それで必要な学生には奨学金を充実させればいい。それでもその大学で学ぶことに意義を見出す学生を集めればいいし、コストもカバーできない大学は統合、あるいは廃止されても仕方ないだろう。何しろ、この50年で子供の数が半減しているのに、大学の数が逆に増えているというのは進学率が高まったとはいえ、おかしい。
97：英国病
労働党は、経済などということをあからさまに言うのは卑しいことであり、イギリスほどの大国であればよそからお金を借りて来たってなんとかなるのだから、自分たちで無理して働かなくてもいいのではないかという態度。
98：1970年代イギリスの大学・専門学校への進学率は7,8%
名門大学卒の人たちは、ほとんどが学者になるか外交官になるか、あるいは銀行家になるか。
→ポリテクニクと呼ばれる専門学校を増やす（サッチャー政権）
119：70年代の労働党政権下では、大学、学校、美術関係、文化関係、そして福祉関係は、経済の低調にもかかわらず、たっぷりお金を使っていた
サッチャー政権の下で自給自足へ。大学は60%は政府から、あとの40%は自分で。
企業から寄付金を仰ぐか、外国からの留学生を増やすか（留学生の学費はイギリス人の2~3倍）。
121：日産研究所
2024年07月09日
核の脅威は本当か
3.11以降、一時は先進国で原発離れが進んだ。「チェルノブイリ原発事故（ウクライナ）ならともかく、あれだけ厳格な基準で運用されている日本でも事故が起こるのだから原発は危ない」という認識が広がったためだ。
著者は、まず、核テロは恐れなくていいという。国家が総力で取り組んでやっとできるレベルの難しさなので、テロ組織では無理。より可能性の高いのは、放射性物質を使ったDirty Bombだが、放射線が届く範囲は限られているので、仮に使われたとしても、被害は限定的だ。42：核兵器の製造はテロリストレベルでは不可能水爆＝核爆発を起こして水素の核反応を誘発するという二段階方式＋誰かが手を加えようとすると自爆するように設計されている
元の原発の話に戻れば、今の原発は方式が違うので、安全性は非常に高い。残念なことに、津波が襲った福島第一原子力発電所は国内でも最も古い原発で、設計はGEの初期型であった。48：放射能汚染爆弾〜過剰反応爆発後は、被害地がよほど狭い場所でない限り、放射能は希釈され、放射線症の閾値以下に低下する。もっとも大きな危険は、人々の思い込みから生じるパニックと過剰反応。
69：エネルギー問題の知られざる真実・ガソリンのエネルギーは、同量のTNTの15x・石炭のコストは、同じエネルギー量当たりガソリンの1/20・真昼に１㎢当たりに降り注ぐ太陽光から、1GWの電力を供給することができる・１�崚�たりの地表に降り注ぐ太陽光から、およそ1馬力のエネルギーが得られる・ガソリンのエネルギーは、同じ重量当たりでアルカリ乾電池の1000x、Li-ion電池の100x・液体水素のエネルギーは、同じ体積当たりガソリンの1/4.5・非充電式電池のエネルギーのコストは、壁コンセントのおよそ1万倍
2024年07月08日
知っておくべき最先端の科学
UCバークレーの物理学教授による、一般向けに書かれた科学を理解するための本。「最先端」と書かれているが、内容的にはむしろ基礎的で、高校で習った物理のおさらい。取り上げられている事例が（当時の）「最先端」なだけ。英語版の発売は2008年だ。
しかし、驚くべきことに、高校どころか中学校の理科の内容も「習わなかったの？」と疑う自称「大卒者」も多いので、デマやマスコミ報道に騙されず、正しい判断をするために皆が読むべき本だと思う。
21：9.11事件
ビル崩壊の主原因は飛行機衝突ではなかった。
飛行機の運動エネルギー＝TNT火薬1t分（重量131t 速度960km/h）
22：崩壊の主原因はジェット燃料から放出された高エネルギーと高熱
米国内線の旅客機は平均60tの燃料を積んでいる。
1tのジェット燃料が空気中で燃焼するとTNT火薬15t分のエネルギーを放出。
15 x 60t = TNT9000t
飛行機2機でTNT火薬1.8kt！
＊ガソリンにはTNT火薬以上のエネルギーがある
25：1日に取る食事のエネルギー量（2000kcal）
1cal=水1gの温度を1℃上げるのに必要なエネルギー量（熱量）
１ジュール＝1kgの物体を1m毎秒の加速度で、1m動かすのに必要なエネルギー
1kcal=4.2ジュール
TNT火薬1g＝0.65kcal
＊2000kcal/0.65kcal/g＝3080g
1日の食事は、TNT火薬3kg相当と同じエネルギー
27：起きたのは高熱による物体の不安定化と鉄骨の湾曲
2024年06月25日
中退そして渡米
熊楠が渡米したのは、19世紀の終わり。当時のアメリカ人の感覚は、「アジア人は鉄道敷設や農場で働く安い労働者」。米国でのアジア系差別に直面し、「東洋人のために気を吐くのだ」と熊楠が憤慨したのもうなづける。
その熊楠が学んだのは、ミシガン大学。国際法の権威であったJ.B.エンジェル教授が学長を務めており、不平等条約改正のために必要な国際法の勉強のため当時すでに20人ほど、後には30〜40人もの日本人留学生が学ぶ当時としては日本人留学生の多い米大学であった。
67：東京大学予備門中退
第数で不合格、落第。中退。
1886年の暮れに19歳で横浜を出航し、アメリカに。そして33歳で英国から帰国するまで、14年間にも渡る長い海外生活。
105：ミシガン大学博物館
アナーバー滞在中の熊楠さんは、独学でさまざまな西洋の学問をきわめようとする。
2024年06月24日
冒険と学問のマンダラへ
幼い頃から和歌山の森と図鑑に遊び、アメリカでの学生生活やキューバでの冒険旅行後に渡英。大英博物館に通いつめ、帰国後は粘菌などの研究や、故郷の森の保護運動で知られる南方熊楠。
和歌山と言われると、今では田舎のイメージだが、「江戸時代には全国で8番目の大都市」というのに驚き。徳川御三家と言えば、水戸に尾張に紀州。親藩の中でも最高位とされる大藩を置いたのだから、それだけ地政学的にも重要だったことがうかがえる。「徳川」の姓と「三つ葉葵」の家紋使用を許されたのは御三家だけだ。
江戸時代の経済の中心は大坂で、政治の中心は江戸。その二カ所をつなぐ物流を担うのは船であり、紀州はその要衝にあった。さらに、現在でも使われるたまり醬油は紀州発祥で、それが、黒潮に乗って房総半島にまで漁に出ていた紀州の漁民によって銚子に伝わる。大消費地である江戸に川を下るだけで醤油を運べる野田にやがて生産の中心は移っていく。
2：神童クマグス
江戸時代の経済の中心は大坂で、政治の中心は江戸。その二カ所をつなぐ物流を担うのは船であり、紀州はその要衝にあった。さらに、現在でも使われるたまり醬油は紀州発祥で、それが、黒潮に乗って房総半島にまで漁に出ていた紀州の漁民によって銚子に伝わる。大消費地である江戸に川を下るだけで醤油を運べる野田にやがて生産の中心は移っていく。
2：神童クマグス
慶応3年（1867）生まれ。紀州藩の和歌山城下の金物屋。明治維新の前年。
江戸時代には全国で8番目の大都市だった和歌山城下。
7：東洋と西洋の異なる二つのものの考え方
青年期までは漢詩や俳句に親しんでいたものの、大学では英文学を専攻せざるを得ず、東洋と西洋の考え方のちがいに悩み続けた夏目漱石（熊楠さんと同い年で、東京大学予備門では同級生）。
13：図鑑に夢中
幼少の頃のおびただしい量の細字による写本。驚くべき読解力と記憶力。
21：『和漢三才図会』を数え13歳から2年以上かけて筆写
1893Nature投稿論文に引用。
2024年04月09日
「できるようになる」とはどういうことか
政府をあげての「リスキリング」。英語が得意そうでない方々が外来語を持ち出すときは用心したほうがいい。
今井先生は、これは、「More is Betterバイアス」の一種であり、「学習はリニアに進化する」という信念に裏付けされているという。そこには、「知識を入れれば入れるほど、知識は増加し、学習が進むという考え」がある。実際は、「知ること」と「できること」は違うので、学べばリスキリングが成功するものではない。
174：スティーブン・スローマン『知ってるつもり』
私たちはほとんどのことを外部の知識に頼り切っていて、自分の外にある知識を自分の知識と同一視している。
181：伸び悩み（今井）
目標を合格・不合格などの二値的に捉え、合格すればOK、不合格だと人生の敗者のように考えてしまうと、合格することに最適化してしまい、そこまではよくても、その後、伸びなくなる恐れは非常に高い。
217：トップ選手を真似るとパフォーマンスが落ちる
新人の頃はみな、ある程度同じ型を学んで中央値を目指した方が競技力が高くなる。中央値を抜けたあとは、個別性の世界がやってきて、それぞれの骨格に合った動きをすることが大事。
日本一の選手は、個性に突き抜けたような例なので、ただ動きを真似ても本質を真似ることが難しい。
おわりに：今井
More is Betterバイアス→リスキリング、タイパ
「学習はリニアに進化する」という信念
このモデルでは、学習者が間違いや失敗をするということは考慮されていない。2024年03月22日
新科目「歴史総合」
高校の「世界史」教科書の歴史を振り返ると、戦後、新制高校となり、新教科書「世界史」はアメリカの経験主義の影響を受けたものであったらしい。それが、1958年にはその揺り戻しなのか、学習指導要領で系統主義への転換が図られる（経験主義・系統主義）。
1960年代以降は、過激化した学生運動への恐れなのだろう、マルクス主義など「世界史の基本法則」を構築する歴史研究が衰退し、専門分化が進んだ。その結果、「各国史の寄せ集めのフレームを維持したままボリュームだけが増える」という結果になった。
これでは、歴史の大きな流れを掴まないまま、覚えることだけが増えるので、歴史嫌いを招く。平成になり、また、その反省で、歴史事象を教室で議論しようという流れがある。
これでは、歴史の大きな流れを掴まないまま、覚えることだけが増えるので、歴史嫌いを招く。平成になり、また、その反省で、歴史事象を教室で議論しようという流れがある。
今年からは、世界史と日本史の近現代史をまとめた新科目「歴史総合」に変わっているらしい。どこの高校でも、古代史から始まって、中世、近世あたりでほぼ1年が終わってしまい、肝心な近現代史を端折ってしまう先生も多く、これは良い変化だと思う。94：議論の「答え」の妥当性を判断する基準があいまい議論を重ねても真理からは遠ざかる→最終的に「人それぞれ」で片づけられる
103：�‘�本の歴史教育史上初めて日本史と世界史を統合した近現代史をすべての高校生が学ぶ�¬嵳綸�な知識注入にならないように３つの大項目の形「近代化と私たち」「国際秩序の変化や大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」に焦点化�Ｎ鮖乏惱�の意義の一つを、現代的な諸課題の歴史的経緯を解き明かすことにおき、過去と現在のつながりが重視される�い燭世涼亮碓典�ではなくて、資料や歴史叙述を読んで「問い」を抱き、その問題意識を持って歴史を探求することによって、歴史事象の特色や意味を多面的に考察する力と、歴史的な課題を解決策まで含めて構想する力、そして考察・構想を説明して議論できる力などを育成する
2024年03月21日
教室の歴史対話
芥川龍之介『藪の中』（映画化され『羅生門』）にもある通り、同じ現場に居合わせても人それぞれの体験は違う。ましてや「歴史」とは、解釈によって、その意味合いは大きく変わる
58：私たちが参照する歴史とは「探求された歴史（歴史叙述）」なのであって、「実際に起こった歴史」そのものではない。
著者は、「歴史実践の六層構造」を提言している。
A【歴史実証】問題設定に基づき、諸種の史料の記述を検討することにより、「事実の探求」（確認・復元・推測）を行う。B【歴史解釈】事実間の原因と結果のありよう（因果関係）やつながり（連関性・構造性）、そして比較したときに浮かび上がるありよう（類似性・相違性）について、問題設定に関わる仮説を構築することにより、「連関・構造の探求」を行う。C【歴史批評】その歴史解釈にもとづき、より長い時間軸やより広い空間軸においてみたときの意義や、現代の世界に対する意義について、「意味の探求」を行う。D【歴史叙述】歴史解釈や歴史批評を論理的・効果的に表現する「叙述の探求」を行う。E【歴史対話】一状のいとなみについて事実立脚性と論理整合性に基づいて検証を重ね、特に歴史実証の矛盾や歴史解釈の矛盾のうえに歴史批評や歴史叙述が行われていないか、歴史批評や歴史叙述のありかたが歴史実証・歴史解釈を歪めていないかなどを、他者との協働によって考察することにより、「検証の探求」を行う。F【歴史創造】歴史を参照しながら、自分の生きている一を見定め、自分の進むべき道を選択し、自らが歴史主体として生きることにより、「行為の探求」を行う。
例えば、英国が清国を植民地化した戦争として悪名高いアヘン戦争だが、「イギリス商人からアヘンを購入したのは、小型の快速船舶に乗って沖合で小規模な貿易活動を展開する福建省・広東省の人々」だったという。中国商人にとっては、禁止薬物であろうと、儲かるのなら密輸入して儲けたい。売っていたのはイギリス商人だが、買って国内で流通させていたのは中国商人なのだ。
70：18世紀の中国の沿海部の商業活動を見るならば、広州のみに限定された西欧諸国との海外貿易の輸入品は、福建省の厦門から国内各地に流通。しかし天然の良港である厦門の商業活動に重い税がかけられると、人々は厦門を離れ、華南の小さな港や東南アジアなどを利用して貿易活動を続ける。19世紀前半にイギリス商人からアヘンを購入したのは、小型の快速船舶に乗って沖合で小規模な貿易活動を展開する福建省・広東省の人々（村上2013）。
ここまで議論するとなると、今ではもう大学のレベルだろう。しかし、本来、「高等」学校という通り、義務教育ではない。高校卒業のレベルが下がってしまったため、中学校レベルの英語や数学を教えているのが今の多くの大学のレベルだ。中学校の3年間で済ましておくことが、終わらないまま、エスカレーター式に大学まで行くので、本来3年間の社会負担がその倍以上掛かっている。
82：教室の歴史対話�‖佻辰梁仂櫃縫織屐爾鮑遒蕕覆���対話に参加するメンバーは全員が（歴史の人物を含めて）対等であり、互いにいのちをリスペクトしあうこと��自分の見えていない事実・解釈・意義付けに気づけるかもしれないという、「自分を相対化する」意思を大切にする
2024年03月19日
揮発性の言葉
本章で触れられているのは、1994年に起こった松本サリン事件。翌年の地下鉄サリン事件の前哨ともいえる事件で、犯人がオウム真理教ということは地下鉄サリン事件まで分からなかった。
その時、容疑者として扱われたのが、第一通報者でもあった河野氏。奥さんはサリンで意識不明の重体。そのまま回復しないまま14年後に亡くなり、自らも入院した被害者であったが、長野県警は容疑者として捜査を続け、マスコミもリーク記事を書き続けて完全に犯人扱いした。
その時、容疑者として扱われたのが、第一通報者でもあった河野氏。奥さんはサリンで意識不明の重体。そのまま回復しないまま14年後に亡くなり、自らも入院した被害者であったが、長野県警は容疑者として捜査を続け、マスコミもリーク記事を書き続けて完全に犯人扱いした。
19：河野さんは、謝罪に来る元信者の人々を家に招き入れ、彼らと対話
マスメディアが報じないオウムの一般信者の「一人の人間」としての誠実さを見る。
21：論理整合性の観点
早期の逮捕や詳細な報道を煽り立てた「私たち」の存在。
22：世界史を視野に入れた日本近現代史の通史を描いた成田龍一
大日本帝国の解決されざる矛盾と戦後日本社会の矛盾、そして冷戦体制崩壊後の矛盾などが一挙に現れた「分水嶺」の1995年。
26：石川啄木「揮発性の言葉」
オウム真理教の信者たちもナチス・ドイツの残虐行為に嫌悪していた。でも彼らは残虐行為を遂行した。
2024年03月18日
「歴史実践」のために
『世界史とは何か』という大きく振り被ったタイトルで、どんな歴史学者なのかと思ったら、長野県の高校教師だった。しかし、岩波書店から出ているだけあって中身は大学教授に劣らない。むしろ、それを県立高校で実践しているというのだから、流石は教育県といわれる長野県だ。
思えば、私の高校のときの担任が歴史の先生。この先生が早稲田出身であったことが、後に受験の時に土壇場で早稲田も受けることにつながる。他校受験のついでだったので、願書を出したのもギリギリ、それから赤本に取り組み始めたので、受験まで一月しかなかったが、結果的に早稲田に進学することになったのは、正に、網野先生との縁。
私より上の世代では、早稲田の教育を出れば、高校の教師になるのが定番だったが、その教育学部を出た娘に聞くと今は教師になるのは2割もいないという。バブル崩壊後、しばらくは公務員人気で、小中高の教師は狭き門だったらしいが、人手不足になってからは逆に人気が無くて、定員不足になっている地域もあると聞く。
教育の重要性を考えると、教師に良い人材が集まらない状態は良くない。フィンランドは90年代初めにソ連崩壊で、ソ連との窓口としての機能に依存していた経済が崩壊。日本よりひどい不況に見舞われた。その時に、「これからの時代に備えた教育改革」として実施されたのが、現在の教育体制。
フィンランドが最初に行ったのは、人気がなくなっていた教員養成のための教育大学と一流大学との合併。人気大学の教育学部になることで、応募者の質を上げた。教員の待遇改善も行い、全体として教師の質が上がった。フィンランドの教育改革を研究した本によれば、「一番、教育の質を上げるのに効果が高いのは、教師の質」。ITも教材もほとんど関係無いという。
はじめに：教室の学びとはこれまでに人類が蓄積してきた学問の宝庫を見つめつつ、人々の未来の幸せのために、それをどう活用していくかを探求するいとなみ
世界史はつねに「変化の激しい予測困難な時代」の連続。
２：松本サリン事件
車中の男たちは、山梨県の本部を出発してから松本に向かう道中、テレビのアニメ番組「魔法使いサリー」の主題歌を合唱していた。女の子が「不思議な力」で「夢と希望」を町にふりまく。
8：『ショア』の上映会 SHOAH＠松本深志高校
1995クロード・ランズマン監督 9h27mの大長編映画
2024年03月14日
教育システムのアップデート
なにかと批判されることの多い学校教育。それほど批判するなら、自分でやってみたらどうだと思うのだが、声高に批判する人ほど、人任せ。難しい仕事に携わっている教育者は尊敬されるべきだろう。
筆者は、「教育システムのアップデート」を提案する。
教師の負担が増えるのは、余りに多くを期待するからだ。教師を、「教える役割＝インストラクターから解放し、生徒の探求学習を最適化する役割＝ファシリテーターとして活動する時間を増やす」というのが提言。111：教育→協育（パートナーシップによる人材育成）未来をよくしようと思うすべてのステークホルダーが、学校と協力しながら、自ら育っていけるように環境を整える。
164：伸ばせる能力vs.伸ばせない能力The Science of Dream Teams by Mike Zani「難しいが、可能」＝やり方次第で伸ばせる←教育はここに集中すべき戦略スキル、判断力、一流スタンダード、自立性、ストレスマネジメント、適応性、好感、傾聴力、チームプレーヤー、交渉力、説得力
2024年03月05日
『太陽の季節』
石原慎太郎のデビュー作『太陽の季節』が、弟・裕次郎の放蕩を描いたものというのは有名な話だが、それが出た経緯については、今回初めて知った。
湘南高校（入学時は旧制中学）在学時に文学に興味を持った慎太郎は、当初、京大文学部を目指していた。それも仏文だ。それで、フランス語も勉強していたらしい。その前に父親を亡くしている。
父親の役員退職金も出たし、「残された二人の子どものために」と取締役会から追加の資金提供もあったという。それで兄弟が大学を出るまでの生活費は十分なはずだった。ところが、慶應義塾高校に通っていた裕次郎は、母親の預金通帳から勝手にお金を引き出して同級生たちとの遊びに散財してしまう。お手伝いさんも雇えなくなり、それまでの重役の妻としての生活は一変したという。72：「船舶界で屈指の配船屋」父51歳で急逝父は会議のために出かけた新日本汽船の社長室で会議の途中で眠り出し、疲労のためだろうと気遣った周りが父をそのまま残して昼食のために外出してしまい、戻ってみたら昏睡していて手遅れとなったそうな。
ある時、家に立ち寄った父の元同僚に進学のことを聞かれ、「京大文学部」と答えたら、「文学部じゃ苦労しているお母さんを助けられない。公認会計士制度が出来て、それなら卒業後すぐに稼げる。在学中の合格を目指すなら商大だろう」ということで、一橋大学を勧められたそうだ。そうして、首尾よく合格するのだが、公認会計士の勉強は半年で向いてないと諦める。
公認会計士を諦めた後は、再び、文学への思いが募り、戦時中から休刊していた同人誌『一橋文学』を同じく文学好きの仲間と復刊させる。77：公認会計士を目指して一橋大学へ在学中に放棄した生半可な学問の余韻ははるかに年を経て私が東京都の知事に就任した後、思いがけぬ形で蘇り、都の財政再建のために決定的に役立ったものだった。それは国も都も財政運用のために踏襲している単式簿記なるものが、発生主義による複式簿記に比べていかに効率の悪い制度かという認識をもたらしてくれたことだった。
93：苦労の末に出来上がった復刊『一橋文芸』は左翼学生が牛耳っていた大学新聞ではさんざんの不評で、私の書いた処女作の『灰色の教室』は堕落したプチブルの学生を描いた駄作という酷評だった。文学部を持たぬ社会科学専門の大学だけに学生たちの反応も鈍く、せっかく復刊できた雑誌も学生たちに黙殺されたという形だった。
この反応に意気消沈していたところ、慎太郎の処女作は『文学界』同人雑誌評欄の浅見淵の目に留まり、高評価を得た。その『文学界』が新人賞を募集していることを知り、処女作『灰色の教室』の中から、特にインモラルなエピソードを選び書き直したのが『太陽の季節』。これが、芥川賞を受賞する。
結婚当時二人は学生。それも、相手は高校生。二人でホテルから出てくるところを奥さんの親せきに見つかってしまい、問い詰められて結婚。105：私は大学4年生、妻はまだ高校の3年生彼女は私の母親の親しい友人の娘で、彼女の父親は彼女がまだ母親のお腹の中にいる間に中支戦線の激戦地呉松クリークでの戦いで前日小隊長が戦死し、先任将校として急遽隊長を務め、翌日の戦闘で胸に関通銃傷を受けて戦死した。
108：「あなたの家庭は奇跡ですね。私も有名人の家庭をいろいろな関りで知っていますが、4人も男の子がいて、それがすべてまともに育っているのは、あの奥さんのお陰ですよ」（幻冬舎社長 見城徹）
2024年01月28日
オッカムの剃刀
「オッカムの剃刀」は知らなかった。14世紀イングランドに生まれたオッカムは、オックスフォード大学で哲学と神学を学ぶ。当時は、スコラ哲学の全盛期でオッカムもスコラ哲学を中心に学ぶのだが、次第に疑問を持つ。
スコラ哲学は神学と哲学を融合させたことから始まった思想。そのつじつまを合わせるため、さまざまな理論が動員されていた。オッカムはそこをバッサリ「無駄」だとした。1350年ごろのことで、これ以降、再び神学と哲学は別の道を歩み始め、神学の束縛から免れた哲学は現在に続く近代哲学となる。
筆者あとがき
453：25ドルの金を必要としていたストリッパーと、セーターを着たがった中途半端な見栄っ張りのせいで、オズワルドが法廷で裁かれる機会は失われ、自白をする真の機会もまた永久に失われた。
454：名声に憑りつかれた危険な小男が、たまたま幸運を手に入れられる自分に気が付いた。
455：オッカムの剃刀
もっとも単純な説明が、いつも決まって真実。
459：ダラスは憎悪に満ちた街
南部連合国旗は正式に掲揚され、アメリカ国旗は上下さかさまに掲揚されていた。
2023年12月27日
逗子開成中学
暁星を退学した平野。東京や横浜の学校では入れてくれず、開成中学（逗子）に転校する。
154：東京や横浜の学校ではいれてくれないというあきらめから、いなかの学校をえらぶことにした。それも、みすみす、5年生から1年損をして、逗子の開成中学の4年に、やっとのことで入れてもらった。
ここでも見た目の違いから、「あいのこ」とからかわれる。そして、ある時、しつこくからかった同級生の山本君の眼をえぐってしまうのだ。山本君はそれで、失明する。
164：かれは、30数年前、ぼくに目をえぐられたそのしゅんかん、ふしぎにもすこしの怒りもうらみも感じなかったという。むしろ、自分が悪かった。あいのこよばわりをして、なんの罪もないぼくを、ぶじょくしたことを、ふかく後悔した。
今なら大問題になるところだ。しかし、山本君本人が「自分がからかったのが悪い」と、平野を責めない。それで、学校も山本君の両親も納得してしまうのがスゴイところ。「こどもの喧嘩に親は出ない」のだ。
2023年12月26日
格子なき牢獄
それでも、キリスト教会系が人気があるのはどうしてなんだろう。
73：父の帰国
生まれるとまもなく、父はフランスへ行ってしまった。だから、ぼくは、小学校にはいるころまでは、父を知らなかった。ぼくが小学校1年の終わりごろに、8年ぶりで帰ってきた。
85：格子なき牢獄
とんでもない学校だった。この学校は、いまでも、いわゆるブルジョアの子どもが、親のくだらない虚栄心の満足のために、さかんに入れられている、九段坂上のG学園なのだ。
89：このような異常な、さんこくなしおきが、毎日くりかえされた。スマートで高尚なフランス的教育の殿堂という何かくれて、このような生徒いじめが、くりかえされていたのだ。
117：許可をうけた本のほかは、どんな本でも、読むことは許されなかった。ぼくは、こっそり買ってきた、なにかの小説を読んでいるところを見つかって、一週間の停学をくらったことがある。
149：小学校のはじめから、ものすごく高い月謝をすいつづけたキリストぼうずの学校は、子飼いのこひつじを荒れ野にほうりだしたのだ。
2023年10月20日
インターナショナルスクール生が使う裏技
学校生活で後悔していることの一番が、交換留学に行かなかったこと。できれば、高校で1年、大学で1年行けばよかった。帰国子女など皆無だった50年前の四国。それでも、AFSなどの交換留学制度はあった。
その時期に行っておけば、その後相当違ったと思う。高校の交換留学では費用は掛からなかったし（ホームステイで生活費も基本無料）、大学でもおそらく交換留学に繋がっただろう。米国の大学は授業料が500〜1000万円とバカ高いが、交換留学なら国内の学費を払うだけで済む。
さらに、この本を読んで分かったのは、「編入」という裏技。国内のインターナショナルスクール生がこれを使って毎年何十人と米国の上位大学に編入するのだという。最初から受験しようとすると、米国の上位大学は願書に、推薦状、小論文、SAT、TOEFLと書類が大量に必要で、国内受験よりよほど大変。それが、3年次から編入ならGPAとTOEFLだけで済む。
それでも、交換留学も編入も希望する日本人学生は少ないらしい。国内大学に比べて、授業負担が圧倒的に高いので、遊ぶ時間などまずない。日本なら大学生がアルバイトで稼ぐのは当たり前だが、欧米ではまずいない。成績が悪ければ容赦なく落とされるので、そんな余裕がない。
245：インターナショナルスクール生が使う裏技
国内の交換留学に強い大学に入学（同志社、青学、立教、関西学院、早稲田、慶応）
252：海外のTOP200大学への直接の日本人入学生は200人だけ（大半が帰国子女）
明治時代と同じ水準。交換留学制度は充実してきたが、日本の大学生は留学したがらない。
あとがき：4者をセットで育成し、4人ユニットとして私立学校に派遣
学校を変えるには校長だけではなく、有能で志のある事務長、教務部長、教員育成の責任者が不可欠。
2023年10月19日
海賊になろう
態度がはっきりしないとか、ディシプリンがないとかで、「世界に通用しない」と言われる日本人だけど、裏面では強さにもなる。
しかし、対立する両者を調整するのは凄く骨の折れることで、体力と地力がとても求められること。それができる日本人がどれだけいるかという問題はありそう。もう一つは、それに対して、どう報酬を払ってもらうのか210：日本の強さは「まあまあ力」調整力にすぐれている。文化的背景の異なる人同士が激しく対立する世界。中庸さは文化的な対立が激しさを増すこれからの世界でますます求められる。
211：治安のよくない国で相手を軽々しく論破しない
いまの日本は「論破」が流行していますが、これはとても危険。
議論では勝ちをゆずり、相手を気持ちよくさせておくと、交渉はうまくまとまる。
221：海賊になろう（スティーブ・ジョブズ）
軍人には自分の意思は要らない。求められるのは忠犬になること。
海賊は個の集まり。海賊はプロジェクトチームのようなもの。カネで雇われ、一つの目的に向かい、目的を達成すると解散。
2023年10月18日
いまの学校はオワコン
教育制度改革が難しいのは、外野が多いからかもしれない。皆一家言持っていて、一つでも変えようとすれば、議論百出となるし、成果が出るまで待ってられない。文科省から、教育委員会、そして現場の学校と、「補給路」が長すぎて、文科省の意図が現場に行くまでに、曲解されたり、忖度されたり、無視されたりと千差万別なのだ。
その点、私立学校は有利だ。教育理念はそのまま教師の採用、評価、管理に反映されるから、徹底する分、成果は出やすい。変えようと思えば、教師の地位が公務員として保障されている公立学校に比べれば、容易。その結果、全国的に、私立学校の方が人気になっているのは道理だろう。
54：いまの学校はオワコン社会の変化に追いついていない。これまでの学校は、忠犬ハチ公のような労働者を大量生産する「いわない」「いえない」「いわせない」組織。意識すべきは「2050年」。30年後の日本はメキシコやナイジェリアと同じ経済規模。日本国内だけでは生きていけなくなる。
これも30年前から言われてきたことで、20年前には「ゆとり教育」が始まった。2002年から施工されたが、5年も経たないうちに学力が低下しているとの批判を受け、2008年には実質廃止された。意図は悪くなかったと思う。
119：日本人が英語をできないのは英会話力の問題だけではない。自分の意見や考えを素早く論理的にいえるかなど、「思考力」「社会力」が足りない。留学した時に痛感したのがまさにこれ。英会話力の問題よりも、言うべきことを持っているかどうか。答えがある問題ばかりやってきた日本人には、この壁を超えるのが困難だった。本来であれば、少なくとも大学は、答えのない問題を議論し、考えるところなのだけど、50%以上も大学に進学する日本では、専門学校のような大学が多い。
79：短期留学プログラムは何の役にも立たないそれまでの箕面高校では、夏休みにNZでの2週間のホームステイ（費用60万円）。英会話や異文化体験なら60万円も払わなくても、いくらでも日本でできる。→MITの起業家精神要請プログラムを日本の高校生向けにカスタマイズ英会話の訓練ではなく、英語で起業家精神を学び、自分なりのBPを考える
2023年10月09日
「脳の老化」をストップする方法
老化すれば誰もが最後はなるという「認知症」。「脳の老化」をストップする方法は、やはり、運動だという。
313：加齢による前頭葉の萎縮の進み具合は、カロリーの消費量と密接に関わっている。よく動いてカロリーをきちんと消費する人は、加齢による前頭葉の萎縮の進行が遅くなる。
意識して歩くと、それだけで「認知症」発症率が40%減るという。
336：脳の最も重要な仕事は「移動」地球上に初めて現れた脳細胞の最も大切な仕事はその生物を移動させること。
270：天才の条件
「統合失調症」脳内が情報であふれてしまう→現実から乖離し、妄想にとらわれ、視覚や聴覚による幻覚
脳が大量のイメージを受け取ってしまうため、現実の世界が認識できなくなる。
273：脳のほかの機能が正常であれば、たとえ情報量が多すぎても病気にはならない
「創造性」という恩恵だけを受け取るのではないか。
正しく意図して創造性を上げるには、脳内のあらゆる部位にアプローチできる「運動」が最適。
2023年09月19日
生命とは何か？
3年間という短期間だったが、国立大学法人に在籍した。大学教員になったのも、国家公務員になったのも初めて。
その時分かったのは、
１．国立大学法人化されて以降、毎年運営交付金が減らされている
２．大学の役割としては研究と学生の教育があるが、この両立は難しい
３．研究者として生き残りを目指すなら論文を書くしかない。
その結果、毎日おびただしい数の論文が作成され、共著が増えている。一人で書いても共著でも1本は1本なので、共同研究の結果、共著が増える。今やっている、牧野富太郎をモデルにした朝ドラにも出てきたが、「一番最初にそれを発見したのは誰か」が常に競われるのが研究の現場なのだ。そして、狭い専門領域の同業者は常に競争相手となる。
プロローグ：生命とは何か？
それは自己複製を行うシステム。
1953Nature DNA「二重らせん」わずか千語の論文
ルドルフ・シェーンハイマー（ユダヤ人科学者〜自殺）
生命が「動的な平衡状態」にあることを最初に示した科学者。
36：ウイルスが、生物ではなく限りなく物質に近い存在
ウイルスは、栄養を摂取することができない。呼吸もしない。二酸化炭素を出すことも老廃物を輩出することもない。つまり一切の代謝を行っていない。
38：縁の下の力持ち＝an unsung hero
1977サイデンステッカー＆松本道弘『日米口語辞典』
102：匿名のピア・レビュー法
細分化されすぎた専門研究家の仕事を相互に、そしてできるだけ公正に判定する唯一の有効な方法。しかし、同業者が同業者を判定するこの方法はそれゆえに不可避的な問題を孕む。
113：盗み見られたX線写真
ウィルキンズとフランクリンが所属していたロンドン大学キングズカレッジと、ワトソンとクリックが所属していたケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所はDNA構造解明を巡ってライバル関係にあった。
1968ワトソン『二重らせん』→大ベストセラー
DNA構造の解明競争にまつわる研究者たちの赤裸々な実態、不安や焦燥、猜疑心、嫉妬やねたみ。
著者ワトソンだけが、無邪気な天才という安全地帯にあって、他の人々はあまりにも戯画化。
最も不当に記述されたのがロザリンド・フランクリン。
ウィルキンズがひそかにフランクリンの撮影したDNAの三次元形態を示すX線写真を複製→ワトソンに見せる！
2023年08月19日
迷走科学の顛末
1989年に突如起こった常温核融合の嵐は、3月16日ユタ大学の発表が発端だった。
本来、発表するような段階ではなく、確かな証拠は何もなかった。なのに、学長自らなぜ大々的に発表したのかプロローグ：1989年3月16日ユタ大学チェイス・ピーターソン学長は、常温核融合研究の対外発表を決断。核融合の確かな証拠は何もなくて、そういう核反応もありうるかもしれない、ひょっとすると実験で見たのはこれかもしれない、といったあやふやな話。
実は、この時ユタ大学は補助金申請の大事な時期なのに、研究成果が乏しくて困っていた。それが、このフライングに繋がった。12：3月23日
「合衆国はここ数十年で、核融合の研究に80億ドル（1兆円以上）をつぎこんだ。核融合こそ人類を救うエネルギー源になる。そもそも太陽や星が光るのも核融合のおかげで、これを意のままに操れば無限のエネルギーが生み出せる」
15：ポンズとフライシュマン
「2，3年のうちには、常温核融合が発電に使えるようになるだろう。燃料になる重水は海水にたっぷり含まれ、数百万年は心配ない。科学技術がついに世界を救った」・・・そう言っているのと同じ。
16：科学の逸話
翌朝までに常温核融合は全世界のトップニュースになり、この状況がその後数ヶ月続く。以後わずか1年のうちに実験を確かめようとして世界中の研究者が使った研究費を合わせると、ほぼ1億ドルになる。（中略）記者会見のあとどこかの時点で、ポンズやフライシュマンも、あるいはピーターソンやブロフィーも、ひょっとして常温核融合は幻にすぎないのではと思ったはずなのだが、誰ひとり口に出しはしなかった。
2023年06月04日
私は独学者
13歳から読書時間の記録を取り始めたという著者。どういう理由なのか詳しくは書かれてないのだが、週に30~60時間を読書に充てていたという。週に一日くらい出かけたり、イベントがあったりして週6日で考えると、1日5~10時間になるから、学校に行っている時間と睡眠時間を除くと、ほとんど読書していたことになる。
これをいつまで続けたかもはっきりとは書かれてないが、その博覧強記ぶりから、読書時間の記録を続けているかどうかはともかく、その習慣は続いているということなのだろう。自分で自らを「独学者」だと言っている。
確率に興味を持ったのは、ウォートンでMBAを勉強している時で、統計学の授業で疑問を持ったからだという。
これをいつまで続けたかもはっきりとは書かれてないが、その博覧強記ぶりから、読書時間の記録を続けているかどうかはともかく、その習慣は続いているということなのだろう。自分で自らを「独学者」だと言っている。
確率に興味を持ったのは、ウォートンでMBAを勉強している時で、統計学の授業で疑問を持ったからだという。
そこからは、大いに「独学者」の才を発揮する。その集中力がスゴイ。それから数年間、確立のことだけを読み、考えた。403：教授がうまく説明できず、軽くあしらわれていた統計学＠Wharton私はどこかに詐欺が潜んでいることに気づいた。６Σの事象（非常にまれな出来事）というのは大いなる計算ミス。
確率の限界は火を見るより明らかだった。私は本屋に行って、題名に「確率」と名の付く本を一つ残らず注文した。それから数年間、私はほかに何も読まなかった。教材も、新聞も、文学も、何もだ。（中略）私は似たような本を注文し続けた。微小な確率の問題について、どんどん知りたくなっていった。まったく苦にならなかった。それは最高の投資だった。リスクは私の一番よく知る話題になった。
サブプライムローンの危険性に気づき、空売りで世界金融危機で世界一大儲けした人物になったのはその5年後のことだ。
その5年後、私は一生食っていけるだけの富を手に入れ、今では微小な確率の事象のさまざまな側面を研究する生活を送っている。もし型どおりの方法で確立を学んでいたら、今頃不確実性はカジノか何かのなかのお話だと思い込んでいたはずだ。まともな応用数学というのは、言語の習得と同じように、先に問題を見つけて、それを解決する数学を探し出すことであって、定理や人工的な例を使って架空の世界でお勉強をし、その例に合わせて現実を作り変えることではないのだ。
404：ある職業で成功するために知っておくべき極意みたいなものは、必ず教科書以外にある
それも中心からなるべく離れたところに。
2023年06月02日
国策アクティブ・ラーニング
「今後10〜20年で全米の雇用のうち47%がAI等によって置き換えられる」
世界中で報道されたこの話。出典はワーキングペーパー「雇用の未来」（Frey＆Osborne 2013）で、文部科学省も含めて、国策アクティブ・ラーニング推進派によって引用されている。
163：直接の分析対象はわずか70職種。AIによる代替可能性の判定は、経済や雇用問題の専門家ではなく、専門外の機械学習の研究者の主観的な判断を基に集計したもので、検証の手続きに問題。査読論文ではない。
ということで、信頼度はクエスチョン・マーク。実は、さかんに言われるアクティブ・ラーニングも、効果が実証されているわけではないという。
アクティブ・ラーニングは学生の積極的な参加が前提だ。そもそも、積極的に参加しない学生が大学に行くのはどうかと思うが、進学率が50%を超える日本では、本来の学力レベルに達していない自称大学生がたくさんいる。151：国策アクティブ・ラーニング試行的にアクティブ・ラーニングを受けてきた現在の大学生の学習意欲は低下傾向にあり、キャリア意識も含めて学生間の意欲や意識の格差が明らかになっている（溝上2018b）。それにもかかわらず、アクティブ・ラーニングの「徹底」を通じて、その問題を克服しようとする動きや主張も一部で見られる。（小針2019：215）
159：無理にやることの弊害学校の授業改善（主体的・対話的で深い学び）→大学入試改革→大学の授業改善（アクティブ・ラーニング）→21世紀型人材・スキルの育成→Society5.0？
2023年06月01日
ファシリテーションの誕生
ファシリテーションの元々は、カウンセリング時の「心理療法における個人の成長や変容促進」だったらしい。
100：Rogersによるファシリテーション・ファシリテーターという言葉の確立
Rogersはクライエント中心療法を提唱したカウンセリングの大家であり、1950年代までは、カウンセラーとクライエントとの1対1の関りにおける「クライエント中心療法」の重要性を提唱していた。彼が当初、「ファシリテート」や「ファシリテーション」という言葉を用いたのも、心理療法における個人の成長や変容を促進するという文脈においてであった。
104：1970年代に入り、ビジネス領域における会議の場面で働きかける人がファシリテーターと呼ばれるようになる
それらは会議やミーティングの「タスク」の達成を重視した流れであり、会議ファシリテーション、グループ・ファシリテーション、ミーティング・ファシリテーションなどと呼ばれた。
109：社員1000名以上の規模の企業において、約50％の企業がマネジャーに対するコーチング研修を実施し、約25%がファシリテーション研修を行っている（リクルートマネジメントソリューションズ2017）
112：ファシリテーター教育の４つの次元（Thomas 2005）
�ゝ蚕囘�なファシリテーター教育（スキル中心で紋切り型）
��意図的なファシリテーター教育（理論に意図的に根差したアプローチ）
��パーソン・センタードなファシリテーター教育（ファシリテーターの態度、個人のありよう、プレゼンスを強調したアプローチ）
�と稟重�なファシリテーター教育（ファシリテーションのポリティカルな性質への認識を低減するアプローチ）
2023年05月31日
コミュニケーション幻想を超えて
ファシリテーション学び直しの続き。そもそも日本でファシリテーションが言われ始めたのは、ワークショップがきっかけだったらしい。
はじめに：ワークショップの発展がファシリテーションを洗練させたファシリテーションはもともとワークショップの現場に埋め込まれた機能だった。
ファシリテーターの本来の役割（中野民夫2003：45）
基本的な心構えとしては、ワークショップの場を支配したりコントロールするのではなく、その場全体を「ホールドする」（保つ、支える、保持する）といいう視点ではないだろうか。いつも張りつめているわけではなく、むしろ緩めていることが多いが、「手綱」は決して手放さずにしっかり持っている感覚。「誰がその場をホールドしているのか」がハッキリしていないと、場が落ち着かないし、人々は不安になる。要は、参加する人々が、存分に可能性を発揮し合える「安心」（精神的）で「安全」（物理的）な器づくりを担い、進行促進していく役回りだ。
33：得意先と広告会社の一方通行の関係
一方通行の応酬の関係性にみんな消耗し疲れていた。新しいブランドのビジョンなどは、関係者に集まってもらって一緒に一気に創った方が、みんなにとって「自分ごと」になるからいいものが生まれるし、後々まで続いて浸透していく。
88：ビジネス領域におけるファシリテーターへの注目
米コンサルタントのフラン・リース『ファシリテーター型リーダーの時代』2002
堀公俊『問題解決ファシリテーター』2003
中野民夫『ファシリテーション革命』2003
2023年05月17日
常温核融合
副題に「研究者たちの苦闘と成果」とある通り、その画期的な発見にも拘わらず（あるいはそのために）長年「似非科学」と差別されてきた常温核融合研究者による記録。著者の水野先生自身が、執筆の時点で北大の助手。当時60歳で、それまで数多くの論文を発表してきたことを考えれば、異例の冷遇なのだ。
その象徴が、当時の東大の学長であり、原子物理学者である有馬朗人の発言。
「もし、『常温核融合』が真の科学現象ならば、私は大学をやめて坊主になる」
学会の権威が新しい学説を否定する現象は世界中でいつの時代にも起こっている。しかも、マスコミが火に油を注ぎ、マスコミにちやほやされることを嫌う保守的な学者から攻撃の対象にされる。
学会の権威が新しい学説を否定する現象は世界中でいつの時代にも起こっている。しかも、マスコミが火に油を注ぎ、マスコミにちやほやされることを嫌う保守的な学者から攻撃の対象にされる。
46：1989阪大高橋「中性子検出に成功」（朝日新聞）まだ研究途中だから、新聞には載せないでほしいと頼んだ。しかし、翌日の朝日新聞を見て驚いた。
特に原子力分野は、エネルギー政策、軍事にも直結するので、政治の関与が始めから大きい。
15：原子力中曽根予算「親方日の丸」の原子力研究のスタートが研究者の自発性を損ねた。
こうして、1989年に世界的に注目された常温核融合は、再現実験に手間取ったこともあり、それから15年間冬の時代を迎える。
はじめに：常温核融合＝核融合？
実は、核融合とは全く違う反応が起こっている。
反応機構は水素核と自由電子が関わる機構で説明できる。
68：1989NTT山口「常温核融合で火傷をした世界で初めての人間」
熱で金がパラジウムに溶け込んで合金化。
1992第3回常温核融合国際会議
NHKが学会での発言を意図的にカットして結論を180度変えて報道。
2023年05月16日
社会を「脆く」する犯人「フラジリスタ」
社会を「脆く」する犯人「フラジリスタ」とは、社会から「反脆さ」を奪い、混乱に陥れる人たちのこと。
著者は、「ソビエト＝ハーバード流の錯覚」をする人とも書いている。ソビエトは、共産主義が実現すると信じて革命を起こした。共産主義では、日々上下する市場に任せるよりも、政府が「科学的に」価格も生産もコントロールする方がいいと考えた。
結果は歴史が示した通りで、ソ連でも、それを真似た中国でも、政府発表ではうまく行っているように見えた。穀物生産も工業生産も5ヵ年計画で決められたとおりに増えていく。実際は、工場では割り当てられたノルマどおりに数だけ辻褄を合わせ、全く役に立たない在庫を積み上げていたり、農場では当然、天候によって収量が左右されるのに、「うまく行っている」と虚偽の報告をしていただけだった。
ハーバード大学がそうだとは思わないが、本書では、世界一の頭脳を自負するハーバードでは、万能感にあふれた人が多いので、「科学的知識の適用範囲を（非科学的に）過大評価する」傾向があるという。結果、「鳥に飛び方を教える」ようなことになる。
277：金融におけるバーベル戦略
「許容できないシナリオの確率をゼロにする」（伝説の投資家レイ・ダリオ）
�ぅ�プション性、技術、そして反脆さの知性
・状況を理解していなくてもへっちゃらなオプション性という概念
・ソビエト＝ハーバード流の錯覚「鳥に飛び方を教える」
・知識と試行錯誤の対立関係「グリーン材の誤謬」
313：政府も大学も、イノベーションや発見にはほとんど貢献をしていない政府や大学が求めているのは、複雑で、派手で、センセーショナルで、話題性があって、科学的で、壮大なもの。
315：試行錯誤の価値
試行錯誤はランダムな行為ではない。むしろ、オプション性のおかげで、ある程度の理性が求められる。良い結果を見分け、切り捨てるべきものを理解するだけの知性がいる。
335：教育≠富
「政治家や評論家は、教育にお金をつぎ込めば経済成長という形で返ってくる、という単純な一方通行の関係性がお好きですが、そもそもそんな関係は存在しません。それに、教育の世界が巨大で複雑になればなるほど、生産性との関係はあやふやになっていくのです」（アリソン・ウルフ）
344：デブのトニー＠湾岸戦争
みんな戦争で原油価格が高騰するのに備えている「もう戦争は織り込み済み」
開戦→原油価格半減
トニー 30万ドル→1800万ドル
多くの人たちは、戦争を正しく予測しておきながら、原油価格の暴落で無一文になった。
341：投資銀行
外国為替のトレーダーは、NJやブルックリンのイタリア系の連中ばかりだった。彼らはもともと銀行の裏方で送金の仕事をしていた泥臭い奴らで、商業の発展や通貨の変動相場制の導入によって市場が爆発的に拡大すると、トレーダーに転身し、通貨の売買で頭角を現した。そして大儲けした。
385：逆七面鳥問題
試行錯誤のような反脆いシステムでは、実績の標本を取ると、長期的な平均が過小評価される傾向がある。短所ではなく長所が隠れてしまうためだ。
387：正の非対称性を無視するという誤り
ゲイリー・ピサノHBS教授
「数社が商業的な成功を収め、業界全体では収益が目覚ましく成長しているものの、ほとんどのバイオテクノロジー企業はまったく利益を上げていない」
388：負の非対称性に関する誤解
ケネス・フルート教授ハーバード大学
「再保険会社は、会社の引き受けているリスクと比べて儲かりすぎている」
大惨事は会社にとってはマイナスにしか働かず、しかも（まれなので）過去のデータには表れていないことが多い。
2022年09月29日
京都先端科学大学
ここ数年、永守社長が仕事以外で情熱を燃やしているのが大学教育。あまりに仕事の出来ない大卒社員が多いので、大学教育を変えなければダメだと決意したらしい。
当初はゼロから大学を創ろうとしたが、大学設立にはキャンパスの広さや教職員の数など、沢山の必要条件がある。それらを全部満たそうとしていると時間もお金もかかる。
そうしたところ、京都の既存大学から申し出があり、そこの経営を任されることになった。それが現在の京都先端科学大学で、日本電産型M&Aと同じで、経営陣の入れ替えや人員整理はせずに、「教職員の意識改革から」始めているという。
そこで力を入れているのが、「グローバル社会人基礎能力」で、それは、
・コミュニケーション能力
・チームワーク
・リーダーシップ
だという。
確かに、マッキンゼーの採用責任者が書いた本でも、指摘されていたのは、「日本人学生にも頭のいい人はたくさんいるが、リーダーシップが欠けているので、結果的に採用するのは留学生が多くなる」ということだった。
232：グローバル社会で活躍できる人材
自分で燃える人（自燃型） 3%
他人の火をもらって燃える人（他燃型） 80%
まったく燃えない人（不燃型） 17%
＊不燃型が20%を超えると組織は潰れる。日本電産では10%以下。
238：2019京都先端科学大学
239：食事をしながらの懇談会
15~20人毎に全教職員と。ポケットマネー。
244：グローバル社会人基礎能力
コミュニケーション能力、チームワーク、リーダーシップ。
3P＝指示待ちでなく自ら考えて行動（Proactive）、専門能力（Professional）、生産性（Productive）
266：1973年創業時に3人の社員を前に100分の演説
20年後に自社ビル、30年後に京都で一番高い本社ビル。50年後に売上1兆円。
2022年09月23日
正反対の家庭環境だった神童二人
タイトル通り、「東大から刑務所へ」行った共通点のある二人。ホリエモンは東大中退で、井川氏は卒業という違いはあるものの、ホリエモンはプログラミングの方が面白くなり、ちょうど流行り始めたインターネットで、ウェブサイト制作の仕事を始めたらめちゃくちゃ儲かり、そちらの方が面白くなって中退。
家庭環境はずいぶん違っていて、ホリエモンが中学生でPCが欲しくなったが、親に買ってもらえず、親から借金して買い、その返済のため新聞配達をしていたとは初めて知った。一方、井川氏は地元の名門企業の三代目だから絵にかいたようなお坊ちゃま生活。大学在学中は、親が保有していた「神仙の2LDKで一人暮らし。BMW635を乗り回していた」という。
164：堀江父親「せからしか！」（やかましい）
読書を通じて得た理屈を口にすると、「せからしか！」とキレてビンタする。
166：中学生になった瞬間からパソコンにハマル
2台目は20万円もするので親から借金して買って、新聞配達で返す。
167：井川が通った小学校（伊予三島）
1学年200人くらいしかいない田舎の学校だったから、小学5年生くらいまでの勉強なんて、何もしなくても常に成績トップ。小学5年生のとき代ゼミの夏期講習で模擬試験を受けてみたら、全国2位。
169：全教研（福岡でNo.1の学習塾）
孫太蔵君と一緒。学校の勉強は簡単すぎてつまらないんだけど、全教研の勉強はやりがいがあっておもしろかった。
176：筑駒
学校では教師が好き勝手やって生徒は自由放任。
教師の大半は日教組。半分くらいは共産党員。
2022年09月03日
サイバー戦線異状あり（トム・レイトン）
第5章は「サイバー戦線異状あり」（トム・レイトン）。MITの応用数学科教授にして、アカマイ・テクノロジーズの共同創業者＆CTO。アカマイって、ハワイ語だったんですね
201：数学者でありながら、自らの理論を引っさげてインターネット戦場に乗り込んでいき、1998年にハワイ語で「インテリジェンス」を意味する「アカマイ」を社名に冠したアカマイ・テクノロジーズ社を設立、もっぱら数学を武器にして戦いながら、約10年余にして年商10億ドルを超える会社に成長させた。
204：一般的に言って、数学の理論というのはなかなか実践には繋がらない。繋がったとしても、理論の発見から実践まで大体20年くらいかかるもの。
われわれの場合、インターネット上の交通渋滞を避けるための経路決定アルゴリズムを作るところから始まって、さまざまな課題に取り組んできました。たとえば、ネットフリックスの映画DBのような情報を、どうやって効率的にサーバーに保管して、どこからでも容易にアクセスできるようにするか。
206：誰も知らないインターネット上最大の会社
ほぼ全てのウェブ上最も人気の高いサイトの内容を配信したり、スピードアップしたりしているので、誰もがアカマイ社を使っていることになります。毎日13万以上のウェブサイトが、アカマイ社を通じて配信されていますから。
208：北米では、EC100社のうち96社が、世界ではEC100社のうち60社が当社の顧客
日本でもだいたい同じ状況で、主要なECはおしなべてアカマイ社を使っている。
210：毎日の総情報量の15-30%がアカマイ社を通して流れている
iTunesで配信しているものは、全てアカマイ社が提供。
214：サイバー攻撃は組織化されてきている
ロシアや東ヨーロッパ、アジアの一部から、報酬目当ての組織的なサイバー犯罪が出てきていて、実際彼らは大金をせしめている。また、政治的な目的を持った「アノニマス」のような、ゆるい形態の政治的ハッカーたちもいます。
236：アカマイ社はMITを基礎にした会社
大学から1ブロックしか離れてないところに会社があり、第1期の採用者は全てMITの学生。
2022年07月30日
「このままじゃ『生きジゴク』になっちゃう」
昭和61年の”葬式ごっこ”自殺は何度読んでも悲惨。いじめの対象になった中学2年生が自殺に追い込まれ、「葬式ごっこ」には教師まで参加していたことが発覚。この事件がきっかけで、文部省はいじめの発生件数を調査し、公表するようになった。
それで、減っているかと言えば、この10年小学校で急増している。これはほんとうにこれほど増えているのか、それとも調査方法が変わるか何かで、より多く報告されるようになったのかは不明。20年度は久しぶりに減っているが、これはコロナで登校が制限されたためだろう。
ある空間を支配するのにもっとも易き方法は、特定の人物や集団をターゲットにして、共通の意志をもって排除や攻撃の対象にすることだ。そうなればそこに連帯感が生まれる。（中略）昭和という時代の局面には、そのようなことが幾つもあったと気づく。
㉔グリコ・森永事件
昭和59年（1984）から翌年にかけて
「けいさつの あほども え かい人21面相」
劇場犯罪
グリコ・森永事件のプロセスで、この犯罪に似せた事件は98件起こった。そのうち67件では犯人逮捕。
グリコ・森永事件は、平成12年にすべて時効。犯人グループはひとりも逮捕されることはなかった。
㉕”葬式ごっこ”自殺
「このままじゃ『生きジゴク』になっちゃう」昭和61年2月1日
校内暴力 昭和55年「教師への暴力」YoY+45%
いじめ→登校拒否→ひきこもり
昭和55年 大阪府 中学1年生の少年が縊死
同級生や上級生に日常的に恐喝を受けていた。
㉘天皇の退位についてのおことば
平成31年4月30日
「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきました」（平成28年8月）
「平成の30年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちましたが、それはまた、決して平坦な時代ではなく、多くの予想せぬ困難に直面した時代でもありました」（平成30年2月24日）
近代天皇制＝天皇制絶対の超国家主義的国家→戦後民主主義の平成天皇
2022年02月24日
バークレー人民共和国
サンフランシスコ大学でMBAを取得した単は、本来、中国に戻るはずだったが、当然、戻りたくない。そこで一計を案じ、留学をスポンサーしてくれた米アジア財団を上司が訪問したときに、財団から言ってもらうのだ。
「単さんは、優秀な成績でサンフランシスコ大学を卒業しました。UCバークレーが博士課程で受け入れると言っています。いいですよね？」
当時のUCバークレーは左翼的な学生運動の中心。People’s Republic of Barkley（バークレー人民共和国）と呼ばれることもあった。キャンパスでは中華人民共和国がユートピアのように語られ、毛沢東はヒーローのように扱われていた。その中国から命からがら脱出したばかりの単は愕然とする。
488：バークレー人民共和国
次に私を担当する学部の助言者、ジャネット・イエレン教授との面談に行った。彼女の日当たりのいい部屋は適度な広さで、よく整理整頓されていた。彼女は私を温かく迎え、私をたまたま部屋に居合わせた夫のジョージ・アカロフ博士に紹介した。彼は経済学部の教授だった。
490：アカロフ博士
1970年に出版された「レモン市場：品質の不確実性と市場メカニズム」という大きな影響を与えた論文で有名だった。論文は、同じ製品について売り手と買い手の間で価値の評価に差異が生じる原因は「情報の非対称性」にあると説明した。その他の応用のなかでも彼の分析はとりわけ、保険業界が保険商品の価格を設定するための理論的な基礎を築くことに貢献した。この発見とその他の経済理論への貢献により、彼は2001年にノーベル賞を受賞することになった。
502：鉄のカーテン
中国と先進国との生活水準の差は、たとえば、東西ドイツの差よりもずっと大きかった。海外へ勉強に行った多くの中国人学生が決して帰らないことは明らかなように思われた。中国が経済発展のために以前にも増してより優秀な若者を必要としているまさにそのときに、��の門戸開放政策が頭脳流出を招くことはほとんど間違いないことのように思われた。
509：博士号取得
私の論文のテーマは、大手の製薬会社とバイオテクノロジーのスタートアップ企業の協働関係だった。何が両社の関係を規定するのかについての実証実験だった。
2022年02月23日
旧金山
外貿学院を優秀な成績で卒業した単は、そのまま学院の講師になる。10年間の文化大革命の間、大学はじめあらゆる学校は閉鎖されており、教師が不足していたのだ。
その間にアメリカとの関係修復が進み、米アジア財団から、学院の教師を1年間アメリカの大学で学ばせるという申し出がある。受け入れ大学は、スタンフォード、UCバークレー、サンフランシスコ大学だったらしいのだが、アメリカの大学について何も知らない学院関係者は、「スタンフォード？知らない。カリフォルニア大学バークレー校？これは分校のようだから、レベルが低いだろう」という理由で、サンフランシスコ大学を選ぶのだった。
大学のレベルから言えば、今も昔も（学部にもよるが）スタンフォードとバークレーが双璧で、サンフランシスコ大学は一段劣る。しかし、単は、サンフランシスコ大学関係者に助けられ、教授から私的奨学金までもらって、1年の留学を延期し、MBA学位まで取得することになる。
因みに、サンフランシスコを中国では「旧金山」と書くらしい。漢字名がある日本の地名は別にして、中国で欧米の地名は基本的に発音が近い漢字を当てて表記する。ところが、サンフランシスコはその街の歴史を表す「旧金山」。19世紀後半に佳境を迎えた米大陸横断鉄道の建設に携わったのは10万人に及ぶ中国人労働者「苦力」。その多くが、サンフランシスコ港に上陸したことから、サンフランシスコには北米最古・最大の中国人街ができる。
単は100年前の同胞の辛苦を思う。
418：1977年7月、��小平は中国の新しい指導者、華国鋒のもとで再度、党の指導部に復帰
1966年以来中止になっていた大学入学試験を復活。その年、大学入学試験に1000万人を超す応募があり、最終的に570万人が試験を受けた。そのうち5%を下回る、わずか272,287人が学生として受け入れられた。新たな学生の年齢は13歳から37歳までにわたり、10年間の文化大革命がつくりだした学校教育の空白を映し出していた。
452：サンフランシスコ大学での最初の学期の中頃には、私はキャンパスでちょっとした有名人になっていた。誰も紅い中国から来た人間と会ったことがなかったので、多くの人が好奇心に駆られて私と話をしたがった。しばらくの間、彼らはかわるがわる私のいるところに顔を出した。（中略）私はまるでパンダになったような気がした。
456：文化大革命は恣意性の好例
彼に先立つ皇帝たちの言葉が法であったように、毛の言葉が法であった。毛時代の混乱が終わりを告げたいまでも、法律、政策、ルールは恣意的に、あるいは突然、変わりえた。
470：当時、中国の大きな都市には実質的に私有地はなかったが、無関係の人が入り込まないように、すべての居住区や作業所は高い壁で取り囲まれていた。北京にはいたるところに壁があり、最も大きく高い壁は中央政府がある中南海を取り囲む壁だった。ここアメリカでは壁はほとんどなく、個人の家の前には芝生が広がっているだけだった。しかし、人々は習慣として私有地を尊重していた。実質的に私有地のない北京では壁が必要で、土地がすべて私有地であるグリニッチで壁が必要ないとは皮肉だと思った。
2022年02月15日
切り上げられた学校生活
文化大革命が始まると、学校は無法地帯と化していく。毛沢東は大躍進政策での失敗から、自分の政治基盤が弱くなることを恐れ、この政治キャンペーンを始めた。
「造反有理」（反抗するには理由がある）と生徒・学生たちを煽り、自らの政治闘争のために、反対派を「反革命分子」として攻撃させたのだ。
小学校を出たばかりの単は、最初は、そのお祭り気分を楽しんでいたが、運動はどんどんエスカレートしていく。1966年、北京市内のある女子中学校で、女子生徒たちが一人の中年女性に暴行している現場に出くわす。女子生徒たちは集団で、ベルトを鞭にして、バックルで女性を痛めつけていた。
死んだ女性は、その女子中学生の副校長だったと後にわかった。
40：反右運動
このキャンペーンの結果、多くの著名な学者、作家、科学者、社会活動家を含む100万人以上の人々が「右派」の反革命分子とか、人民の敵などの汚名を着せられ、降格や追放になり、場合によっては投獄されることもあった。20年後、毛沢東が死ぬまで、彼らが公式に復権することはなかった。そのときにはすでに、彼らと彼らの家族の生活は破滅していた。
49：造反有理
紅衛兵たちが何をしでかそうと、その革命的な行動を止める勇気のあるものはいなかった。数か月の間に非常に多数の死者が出た。噂によれば、市の火葬場はフル稼働で、次々にトラックで運び込まれる死体の山を処理しきれないという事だった。
57：紅五類
誰もが紅衛兵になれるというわけではなかった。加入するためには、学生と言えども、革命幹部、工場労働者、貧農などを含む「プロレタリアート」家庭の出身でなければなかった。（中略）多くの紅衛兵のリーダーたちは、特に中学校では、高級幹部の子弟だった。（中略）多くの高級幹部の子弟が紅衛兵の最も独善的で自信過剰なメンバーであり、最も残忍で野蛮なのも彼らであった。
2022年01月12日
”ブラウン管テレビ”を作るような教育
「”ブラウン管テレビ”を作るような教育」とは、言い得て妙。確かに、話題になるのは、入試制度改革ばかりで、「日本の教育をどうしたいのか」のグランドデザインが見えてこない。実はしっかり議論されていて、それが定まった結果、「入試制度改革もその一部として実施されている」というのなら、いいのだが。
本質的な問題は入試制度ではなく、日本の大学で教えていることが「21世紀の世界に合わなくなっている」こと。メーカーの生産に喩えれば「そもそも、どういう商品を作らなければならないのか」という商品設計の議論がないまま、製造プロセスを見直して品質管理のポイントや回数を変えていこうという議論。
226：大学ランキングは「卒業生の給料」で決まる
卒業生に「稼ぐ力」があるか否か、「値札」がつくか否かが、大学の格を決める。
227：推薦入試・AO入試
高校卒業レベルの学力がない。
230：大学を減らして職業訓練校を作れ
いま世界で強いのはドイツとスイスだが、この２国はともに大学進学率が４割くらいで、あとは高校時代から職業訓練専門学校に向かう。職業訓練専門学校の多くが「デュアルシステム」。１週間のうち２日間は学校で理論を学び、３日間は会社に行って実習をする。職業訓練専門学校を卒業すれば20歳で自分の腕で食べていけるだけの技術を身につけることが出来る。
2021年11月10日
日本出版史上空前の大ベストセラー
『学問のすゝめ』は第17編まで発刊され、全部あわせると340万部。当時の日本人口3480万人に対し1/10、全国民の10人に一人が読んだ勘定になる。当時の識字率や、海賊版の出回り、さらに書き写した人もいることを考慮すれば二人に一人くらいは読んだのではないかという。その基本の精神は「独立自尊」。読者の中心は、元武士（推定200万人）や、その子弟であった。
66：サムライの読書
「およそ書を読むにはまず手を洗い、心を慎み、姿を正しくし、机のほこりをはらい、書物を正しく机の上において座って読むがよい」（貝原益軒『和俗童子訓』松田道雄現代語訳）
70：正座
江戸時代のはじめに徳川幕府が大名などの上級武士にむけて制定した武家儀礼によって成立。それが中級や下級の武士をへて一般庶民の間にまでひろまったのが江戸中期。
「正座」の言葉が定着したのは、明治期の礼法教科書をへて、大正から昭和初期。
90：福沢諭吉『学問のすゝめ』1872-1876
日本出版史上空前の大ベストセラー（300万部以上）
読者の中心は、元武士（推定200万人）や、その子弟。
当初は木版→1874第4編活版→翌年の第10編木版→第11編活版→第12-16編木版→第17編活版
2021年05月29日
図解 教養事典 科学
Crouch, Jennifer
Carlton Books Ltd
2019-10-03
読んだのはこの本の日本語版（2020ニュートンプレス）。なぜか、Amazonで検索できず、原書を入れておきます。著者は、「アーティスト、教師、研究者、職人」で、英ポーツマス大学の博士号候補生で、ロンドン大学先端生物医学イメージングセンター(CABI)にてアーティストとして教鞭を執っているということ。
現代社会を理解するのに不可欠な科学の知識が1項目1ページでコンパクトにまとめられており、科学が得意だった人も、そうでなかった人も、知識をアップデートするのに重宝する。内容は、�／�学、�∧�理学、�２蹴悄↓だ己�学・:医学、�ッ麓然悄�生態学、�Ε謄�ノロジーに分かれている。
基本的には、分かりやすく書かれているのだけど、基礎知識のない分野では理解に困ることも多い。例えば、
太陽光：太陽が輝く理由は、陽子がエネルギー障壁を通り抜けるからです。同じ電荷が反発する概念にはなじみがあります。しかし陽子は、量子力学的なサイズでトンネル効果を持つので、それらは太陽の表面に近づくことができ、宇宙線として放出されます。
と書かれても、理解できず😓
はじめに：物理は自然そのものではなく、自然を説明するものに過ぎない」物理学者ニールス・ボーア108：人痘接種1022年、中国、セイシュンの尼僧が、天然痘のかさぶたを挽き砕き、健康な人の鼻に吹き入れた。これによって多くの人が天然痘に対する免疫を獲得した。この慣例はトルコまで広がった。109：殺菌の歴史Ignaz Semmelweis, 1818-1865はハンガリー人医師で、患者と患者の治療の間に手を洗うことによって感染の広がりを防ぎ、命を救うことができる「消毒手順」を初めて取り入れた。当時の医学界では、医師が病気を広げているという考えが受け入れられず激しい怒りを買い、手洗いを拒否された。111：緩歩動物クマムシとしても知られるこれらのほとんど顕微鏡でしか見えない無脊椎動物は、真空で生きることができ、大気圏の6000倍の圧力に耐えることもできる。また乾眠（仮死状態）することもできる。154：ジャカード織機〜コンピューターの原型1804Joseph Marie Jacquardが複雑な織物を機械化するために考案。
2021年05月27日
2021年05月20日
ノーベル賞は「過去」を、大学は「未来」を表す
ノーベル賞の研究をしたのは、ほとんどが受賞者が20代の頃で、実際に受賞するのは50代以降だ。画期的な研究程、それが学会に認められ、そして世間に恩恵をもたらすまでにはそれだけの年月が掛かるということ。
日本人受賞者の数はアジアではトップだが、それは30年前の研究の成果である。30年前と言えば、バブル経済崩壊時。ここ10年間のノーベル賞は1980年代の研究成果なのだ。
当時の日本の大学の給与は経済の好調を背景にアメリカより高かったという。その後、平成時代を通じて日本の給与は官民ともに上がらず（公務員給与は民間給与水準を基準に決められているので、民間が上がらなければ公務員も上がらない）、今では東大教授が平均給与1200万円なのに対して、アメリカではその3倍以上になるという。
これでは日本に世界トップレベルの研究者は来ない。逆に、日本でトップレベルの研究者は、アメリカやシンガポール、そして最近は中国の大学に移っていくことになる。かくも、経済力と研究開発の関係は強い。
262：ノーベル賞は「過去」を、大学は「未来」を表すコンピュータサイエンス大学院で精華大学が世界一で東大は134位。ノーベル賞は過去の研究に対して与えられる。262：1980年代〜90年代は日本の大学の給与のほうがアメリカより高かった2017年度 東大教授 平均給与1200万円ucberkley経済学部教授 35万ドル（3900万円）香港の大学教員 日本の倍272：縦割り社会がもたらす問題現在の日本のITシステムの問題は、発注側が評価能力を持たないため、SIの言いなりになり、古いシステムが温存されてしまうことにある。
2021年05月02日
美しい女たちと、粋な男たち
初出は「新潮」1991年5月号というから、今からちょうど30年前。そのためか、「近頃の高校生は、ファミコンのソフトを買うために避妊具の節約をする程、経済概念を発達させている」とかいう話も出てくる（p115）。
主人公の時田秀美は男子高校生。社会人の彼女がいて、「ぼくは日曜日に、祖父と釣りに行くべきか、母の買い物につき合うか、恋人の桃子さんとセックスをすべきかの楽しい選択に心を悩ませながら放課後を待ちわびた」（p24）といううらやましい身分だ（笑）。
家は母子家庭で・・・というと「可哀そう」という固定概念があるが、本人も母親も、まったくそういう感じではない。「うちは貧乏」だというが、母親は大手出版社の編集者で、5万8千円のハイヒールを履き、毎週のようにデートをするのを優先しているだけで、必要にして十分な稼ぎはある。
そんな母親と、これまた、老いてますます盛んな祖父に育てられた秀美は、「女にもてないという事実のまえには、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。変な顔をしたりっぱな人物に、でも、きみは女にもてないじゃないか、と呟くのは痛快なことに違いない」（p27）という価値観を持っている。
そんな母親と、これまた、老いてますます盛んな祖父に育てられた秀美は、「女にもてないという事実のまえには、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。変な顔をしたりっぱな人物に、でも、きみは女にもてないじゃないか、と呟くのは痛快なことに違いない」（p27）という価値観を持っている。
今なら、いや30年前でもだろうが、そんなこと言ったら「容姿で差別するなんて
」と非難されそうだ。しかし、小賢しいことを言っても、そうした美意識は否定できないじゃないか、Politically Correct（政治的に正しい）は建前だろう、という本が30年経っても人気というのもうなずける。しかし、本書が「学校の課題図書になることもあった」（著者まえがき）というのにはちょっとびっくり。秀美君、普通にバーで酒飲んで、彼女と寝てますからね。それこそ、30年前のほうが、許す雰囲気が社会にあったと思うけど・・・。今でも学校の課題図書になっているのか聞いてみたい。
2021年01月23日
すばやく鍛える読解力
「文章指導歴35年」で、「受験小論文指導の第一人者」という著者による、読解力の鍛え方。世の中は動画の時代かもしれないが、契約書はもちろんのこと、メールやSNSなど、コミュニケーションの多くはやはり文章が基本になる。そして、「社会の動きを見たり、自然の変化を読み取ったりするのも広い意味での読解力」である。
読解力を鍛えるには、�仝贏知詫楡�、�∧絃藁詫楡�、�Ｆ媛鯲詫楡�の順番がいいらしい。競技を実際にやったことのない人が、いくらその競技を見ても、本質が理解できず面白くないのと同じで、やはり、自分で書いてみることが、読解力養成の一番の方法だという。
「下手な文章のパターンを知っておく」のも読解力養成になる。なぜなら、「多くの人が同じような傾向の下手な文章を書く」ので、「前もって下手な文章のパターンを知っておくことは、読み取りを正確にするために役立つ」からだ。
そこで出された「下手な文章」の例が面白い。一つは、安倍首相の所信表明演説で、もう一つは朝日新聞の「天声人語」。どちらもプロの手による作品だから、「あえて読みづらくしている」可能性が高い。その目的は、論理的な文章にすると批判されたときに、「趣旨が伝わらなかった」と言い逃れできなくなるし、論理的であるよりも情緒的であることを目指したためであるようだ。
そこで出された「下手な文章」の例が面白い。一つは、安倍首相の所信表明演説で、もう一つは朝日新聞の「天声人語」。どちらもプロの手による作品だから、「あえて読みづらくしている」可能性が高い。その目的は、論理的な文章にすると批判されたときに、「趣旨が伝わらなかった」と言い逃れできなくなるし、論理的であるよりも情緒的であることを目指したためであるようだ。
はじめに：読解力は世の中を読み取る力とつながっている社会の動きを見たり、自然の変化を読み取ったりするのも広い意味での読解力。14：読解力を鍛えるには�仝贏知詫楡��∧絃藁詫楡��Ｆ媛鯲詫楡�16：語彙力を鍛える「言い換え力」をつける。36：文章力を鍛える論理的な文章に共通する３つの「型」�ヾ靄�A型200-300字の短い文章。１．ズバリと言いたいことを書く２．第一部で書いた内容の説明��基本B型200-300字の短い文章。基本A型をひっくり返した「型」。１．主張したいことの理由をまとめる。また、具体的な出来事。２．最後に主張や抽象的なまとめを示す。�４靄�C型（樋口式四部構成）300字以上の文章。まとまった文章を書く時には常にこの「型」。１．問題提起（全体の10%前後）設問の問題点を整理。イエスかノーの問題提起。２．意見提示（全体の30-40%）「確かに・・・・・。しかし・・・・・」３．展開（全体の40-50%）自分の意見の根拠。「理由は２つある」４．結論もう一度全体を整理し、イエスかノーをはっきり述べる。68：下手な文章のパターンを知っておく多くの人が同じような傾向の下手な文章を書く。前もって下手な文章のパターンを知っておくことは、読み取りを正確にするために役立つ。125：2019第200回臨時国会での安倍首相の所信表明演説「一億総活躍社会」「みんなちがって、みんないい」あえて読みづらくしている。キーワードの定義や具体例が示されていない。弱者に心を寄せた情緒的な文章にしたい。135：朝日新聞「天声人語」しばしば論理がねじれ、意味がとりづらい。これほど要約がしづらい文章も珍しい。
おわりに：読解には共感の気持ちが不可欠
文章は、それを理解しようという気持ちがなければ理解できない。
2021年01月22日
人生と仕事の原則
昨年も読んだが、再読。著者Ray DalioはBridgewater Associatesの創業者である。1975年に創業し、当初は投資助言会社だったが、2000年以降資産運用も始め、世界最大のヘッジファンドになった。「アメリカで5番目に重要な非上場企業」（Fortune)であり、ダリオは「世界で最も富裕な100人の一人」（Forbs）である。
PART1は「私の生い立ち」。ダリオはNYの生まれで、高校生までの成績は普通。教室に座って、先生の言うことをおとなしく聞くということが苦手だったらしい。したがって、進学した大学も一流校ではなかった。
それが、大学に入って、暗記ではなく、知的好奇心を突き詰めるやり方がピタリとあって、抜群の成績を収める。日本では、高校と大学の間のギャップはそれほどでもないが、大学進学率が低かったころの伝統が残る欧米では全く違う。そのため、高校までの成績は良かったのに、大学ではオリジナリティを出せなくて退学する学生も多い。
ダリオは大学の成績が良かったので、HBSに進学する。ケーススタディの本家本元だ。ケーススタディは更にダリオの性に合う。
それが、大学に入って、暗記ではなく、知的好奇心を突き詰めるやり方がピタリとあって、抜群の成績を収める。日本では、高校と大学の間のギャップはそれほどでもないが、大学進学率が低かったころの伝統が残る欧米では全く違う。そのため、高校までの成績は良かったのに、大学ではオリジナリティを出せなくて退学する学生も多い。
ダリオは大学の成績が良かったので、HBSに進学する。ケーススタディの本家本元だ。ケーススタディは更にダリオの性に合う。
「その秋、HBSに入学し、この地球上のあらゆるところからやってきて私の同級生となる桁外れに知的な人々と会い、私は興奮した。高い期待を抱いていたが、実際の経験はさらに素晴らしかった。エキサイティングでさまざまなものがある環境で、世界中からやってきた人たちと生活し、パーティをした。黒板の前には、これを覚えなさいと言って、テストをする先生は立っていない。その代わりに実際の事例を与えられ、読んで分析することを求められた。私たちはグループに分かれて、こういった状況で自分がその立場に立ったらどうするだろうと話し合った。これは、まさに私のための学校だ！」（p31）
32：ニフティ50誰もが同じことを考えているとき（たとえばニフティ50は確実に儲かるとみんなが考えているとき）には、それは価格に織り込まれていて、誤った結果になる。また、すべてのアクションには（たとえば金融緩和）アクションにほぼ比例する結果がついてくる（この場合高インフレ）。それがおよそ同じ程度まったく逆の反応（金融引き締め）を引き起こし、市場は逆転する。115：シェーパーの資質周りの猜疑心と反対を乗り越え、比類のない貴重なビジョンを描き、見事に構築する人。Elon Musk, Jeff Bezos, Reed Hastings, Bill Gates, Muhamad Yunus, Winston Churchill, Martin Luther King, 李光耀、��小平共通点：自分の頭で考え、大胆な目標を達成するためには、何ごとも何人も障害とはしなかった。どうすべきかがしっかりと頭に描かれていた。と同時に、それを現実世界でテストし、もっとよく機能するように変更することを潔しとした。彼らはものすごく立ち直りが早い。120：「優れた経営をシステム化する」2012/11/10経営委員会宛てメール投資の意思決定プロセスが効果的なのは、投資原則が意思決定のルールに組み込まれ、それに従うようになっているからだ。経営の意思決定プロセスが効果的でないのは、経営の原則が経営の意思決定ルールに組み込まれていないからだ。
2020年12月20日
人類4000年の特等席
以前読んだマッキンゼー(日本）の採用担当者の話に、「日本人でも能力の高い人はいるが、決定的に不足しているのがリーダーシップ」という話があった。
どうして日本ではリーダーが育たないのか。第一の理由に、「日本の歴史は世界と比べると非常に平穏」で、「統率者に抜群の力量は必要なかった」ということが挙げられるだろう。民族同士がその存亡をかけて争いの絶えなかった大陸に比べると、日本は平時が長くて、混乱期は短い。「戦争の合間に平和がある」と言われる大陸とは真逆だ。
平時が多いのなら、メンバーを引っ張るリーダーよりも、調整型のリーダーのほうがよい。問題は、今日のグローバルな環境では、日本企業にもあるいは日本国にも、グローバル競争に通用するリーダーが必要とされていることだ。
グローバルリーダーの特徴は、「雄弁、しぶとさ、カリスマ性」だという。日本ではあまり好かれないタイプでもある。
178：面白いことこの上ない中国の歴史書中国を本当に知ろうとするならば、中国の哲学、思想、宗教などについての観念的な説明をしている書物ではなく、残酷で悲惨な中国の実態を反映した本物の歴史書を読むのが一番だ。193：中国では悪事もきっちり書き残しておくというのが伝統資治通鑑を読まずして中国は語れない、そして中国人を理解することも不可能。199：当時の畿内の人口は少なかった（鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』）縄文期 総人口10−30万人（9割が北陸・東海以北。とりわけ、奥羽、関東）弥生期 総人口60万人（北陸・東海以北50%、畿内とその周辺20%、山陽・山陰以西30%）奈良期 総人口450万人（北陸・東海以北45%、畿内とその周辺20%、山陽・山陰以西35%）204：古墳建築の労働力はどこから？人口の少ない畿内で、この大土木工事を行うために日本武尊は人集めのリクルーターとして派遣された？日本武尊から見て、応神天皇は孫、仁徳天皇はひ孫。宣伝文句・干拓した土地は私有財産に！・先進的な農業(稲作）・土木(干拓）技術を無料で伝授！・先進的な冶金技術も無料で伝授！226：英雄不在の日本日本の歴史は世界と比べると非常に平穏→統率者に抜群の力量は必要なかった227：グローバルな環境でのリーダーシップ世界の人物伝から我々が模範とすべきリーダーを探すことに意味がある。彼らは、日本のような単一の価値観ではなく、錯綜する複雑な価値観を見事に操りながらリーダーシップを発揮していった。それ故、人物伝を読むことは、人間として偉大な英雄や偉人を選ぶというより、グローバルな環境において通用する行動規範を具現化している人物を選び、そのリーダーシップのエッセンスを学ぶ、という意味で価値がある。229：現在のグローバル化の中心が欧米と中華圏グローバルな環境に通用するリーダー「雄弁、しぶとさ、カリスマ性」＊日本人としてまねて良いかどうかは別問題。
