イベント
2025年01月01日
血圧推移
2023年の11月末に脳動脈瘤になってから1年余り。1年間生き延びた。
11月に数か月ぶりにMRIも撮り、患部は1年間変化なし。自然治癒するものではなく、大きくなっていなければ血管が解離したまま安定しているということなので、一安心。統計的には、脳動脈瘤を持つ人の年間死亡率は10%。10人に一人が1年のうちに死んでいるが、危険な初期段階は過ぎたので、今のまま大人しくしていれば60代男性の一般的な死亡率である年間1%+α位で収まりそう。
この1年間毎日血圧を取るように言われて、取り続けた結果が下のグラフ。実データは毎日だが、これは朝一で取った数値の月平均を出したもの。夜も取っているのだが、夜は飲んでいたりいなかったり（少量ならOKが出た）、風呂に入る前と後で大きく違っていたりで安定性がない。
「発症前」のデータは毎年の健康診断の記録から取ったもの。こちらは発症前5年分の平均値。発症前は「105-72」で低血圧。それが、発症後「126-87」に急上昇したのは、動脈瘤で血管が狭まったせいか。
当初「飛行機も気圧が下がるのでダメ」と言われていたが、発症後3か月近く経ち、一番危険な時期は過ぎて2月にタイ、3月に欧州出張。血圧を測っていて分かったのは、出張準備が始まった段階から血圧が上がる。興奮状態というかプレッシャーが掛かっているのか、出張中はさらに高くなる。出張中は特に注意が必要な下の値が100を超えていたので、緊張した。
夏のあいだは出張もなく理想的に推移。9月に母が亡くなり、ストレスで上昇。10月は国内出張と、1週間のフランス人夫妻のアテンド。日本に10回以上来ている友達が今回訪問したいと言ったのは、辺鄙なところばかり。しかもその1週間の間に「四国→山陰→京都」で、「それはクルマでないと無理だろう」と、旅行相談にのっていた私が運転して案内することに。
私自身行ったことがない場所が多かったのでそうしたのだけど、彼の旅行スタイルが予め決めた場所が終わると、サッと次へ移動の繰り返しで、自分のペースと合わないので疲れた。連日200km以上の移動で血圧が上がる。
今年の目標は、出張ではない海外旅行。お得な「世界一周チケット」が、コロナ後の航空需要ひっ迫で近々無くなるらしいので、無くなる前に使ってみたい。
11月に数か月ぶりにMRIも撮り、患部は1年間変化なし。自然治癒するものではなく、大きくなっていなければ血管が解離したまま安定しているということなので、一安心。統計的には、脳動脈瘤を持つ人の年間死亡率は10%。10人に一人が1年のうちに死んでいるが、危険な初期段階は過ぎたので、今のまま大人しくしていれば60代男性の一般的な死亡率である年間1%+α位で収まりそう。
この1年間毎日血圧を取るように言われて、取り続けた結果が下のグラフ。実データは毎日だが、これは朝一で取った数値の月平均を出したもの。夜も取っているのだが、夜は飲んでいたりいなかったり（少量ならOKが出た）、風呂に入る前と後で大きく違っていたりで安定性がない。
「発症前」のデータは毎年の健康診断の記録から取ったもの。こちらは発症前5年分の平均値。発症前は「105-72」で低血圧。それが、発症後「126-87」に急上昇したのは、動脈瘤で血管が狭まったせいか。
当初「飛行機も気圧が下がるのでダメ」と言われていたが、発症後3か月近く経ち、一番危険な時期は過ぎて2月にタイ、3月に欧州出張。血圧を測っていて分かったのは、出張準備が始まった段階から血圧が上がる。興奮状態というかプレッシャーが掛かっているのか、出張中はさらに高くなる。出張中は特に注意が必要な下の値が100を超えていたので、緊張した。
夏のあいだは出張もなく理想的に推移。9月に母が亡くなり、ストレスで上昇。10月は国内出張と、1週間のフランス人夫妻のアテンド。日本に10回以上来ている友達が今回訪問したいと言ったのは、辺鄙なところばかり。しかもその1週間の間に「四国→山陰→京都」で、「それはクルマでないと無理だろう」と、旅行相談にのっていた私が運転して案内することに。
私自身行ったことがない場所が多かったのでそうしたのだけど、彼の旅行スタイルが予め決めた場所が終わると、サッと次へ移動の繰り返しで、自分のペースと合わないので疲れた。連日200km以上の移動で血圧が上がる。
今年の目標は、出張ではない海外旅行。お得な「世界一周チケット」が、コロナ後の航空需要ひっ迫で近々無くなるらしいので、無くなる前に使ってみたい。
2024年10月20日
お山の大将
バルミューダ躍進のきっかけが『アメトーーク！』でTKO木本氏が紹介した同社の第一号製品だとはしらなかった。
112：第一号商品「グリーンファン」を『アメトーーク！』で紹介。当時のバルミューダは社員が3名。この製品がダメだったら会社をたたむつもりだった。オンエアの翌日には初回生産分が完売し、家電量販店からの注文の電話が鳴りやまず。
これも、木本氏の性格で、何にでも興味を持ち、詳しくなって、人にあれこれ教えてあげるのが好きなのだという。
家電芸人としては、バルミューダの恩人となったが、投資話ではこれが裏目に出た。173：お山の大将「自分が一番詳しい」という知ったかぶり人に相談されることが多い人生。投資話の一連の流れを作った張本人。
今では、「人をイジるよりも、どうやってイジってもらうか」だという。233：人から「すごい」と思われたい「なにかをおすすめする役」からも降りる。
235：仕事を再開してからは、こればかりを意識している。今回の騒動を含めて、もともとあまり見えないようにしていた天然の部分。
2024年10月19日
自分は特別
長年続いている早朝勉強会で著者に会う機会があり、著書も読んでみる。恥ずかしながら、バラエティー・お笑いの類は全く見ないので、TKOも名前を知っていただけ。
芸能界に居れば、そして売れ始めればなおさらちやほやされる。もともと面倒見のいい「長男気質」である木本氏には取り巻きも多かった。はじめに：19歳で大阪松竹芸能の養成所に入所以来、定職に就いたことがなく、芸能の世界しか知らない。思い起こせば、自らそれを引き寄せてしまった。
誰でもクラスの人気者になりたいが、木本氏の場合は、どんなTV番組が面白いか、次はどの曲が流行るかなど、クラスで「マウントを取る」ための努力は全く苦にならなかったという。46：子ども時代マウントを取るためならば、あらゆる行動が屁でもない。
それは大人になっても変わらず、それが芸能界での成功にもつながるわけだが、「仲間」には自分で調べていいと思ったものは「一緒に楽しもう」「一緒に儲けよう」と勧めていた。逆に、親しい人から薦められると、向こうも善意で勧めてくれていると疑いもしなかった。83：人から信用されること⇔人を信用することFXの運用を任せていたAとは、家族ぐるみの付き合い。こちらはファミリーと思って信頼していたし、向こうも同様だと疑いもしない。
最初のFXは、詐欺ではなく、当初はうまくいっていた運用に途中から失敗。損を取り返すために、より大きなリスクを取り、結果どうしようもなくなるという、プロ運用者でも陥るパターン。一時連絡が取れなくなっていたが、その後見つかり、今では少しずつ返済しているという。92：FXの損失を不動産で取り返すつもりが他のメンバーも出資を決め、僕を含めた4人からBに渡った総額は5億円（自身は10M）。
94：詐欺師は詐欺師の顔で近づいてこない
その後に引っかかってしまった不動産投資は、最初から詐欺で、特殊詐欺に引っかかった高齢者が（リストが出回っていて）「取り返しましょう」と再び狙われるパターン。気持ちの焦りに付け込まれる。
なぜ自分は2回も引っかかってしまったのか？イベントで木本氏は、子供のころからの気質に加えて、「自分は芸能人だから特別なのだ」という感覚も告白していた。「特別な人だから、特別な儲け話が来るのも不思議ではない」という感覚だ。
2024年10月14日
恵比寿盆踊り
『自分思い上がってました日記』北尾修一2023
「恵比寿盆踊り」って、そんなに盛り上がっているんだ
「恵比寿盆踊り」って、そんなに盛り上がっているんだ
84：7月13日 大原扁理・稲垣えみ子
「冷蔵庫と病院が人間社会をダメにした」「食べ物や命を不自然に延命させることの功罪」
88：7月16日 向坂くじらセルフライナーノーツ「狂ったままで踊りを終えろ」
ひょっとしたら自分は今、天才と仕事をしているのかもしれない。
92：7月19日 映画『君たちはどう生きるか』
本当につまらなかった。（中略）アニメだから絵で描けば何でも表現できるわけで、あれを現実に作り上げるホドロフスキーの凄さを再認識しただけだった。
105：7月28日 恵比寿盆踊り
人生最後の盆踊りのつもりで踊る。恵比寿盆踊り恒例の「ラヴィアンローズ」「ヘイ、ミスター恵比寿」どちらも最高の曲だ。2時間以上踊り続けて汗だくで帰宅。
2023年12月31日
令和5年（2023）
年の瀬に当たり、ご挨拶申し上げます。
今年はついに還暦となりました。年を取るにつれ「時間がたつのが早い
」というのは、共通の感覚だと思います。その理由の一つは、人間は経験を積んで賢くなり、効果が確かなことだけをやり、新しいことをして失敗することを避けようとするからかもしれません。
そのことは50歳を過ぎるころから意識していて、毎年幾つか新しいことにチャレンジするようにしてきました。とはいえ、10年前は子供たちは大学生を筆頭に、高校生と中学生で、一方、収入の方は国立大学に中途で転職したことで半減し、金銭を伴うリスクはなかなか取れなかったのですが、3人とも社会人となり、名実ともに子育ては終わりました。
家族的には、1月の長女の結婚。昨年9月に紹介されたときはZoom
実物かどうかも定かではなかったのですが、冬休みに一時帰国し、訪問してくれました。正月に両家で初めて顔合わせ。来年6月の卒業式には見に行きたいのですが（そういえば、子供たちの卒業式には一度も出たことがない
）、病気治療次第で（後述）。
個人的には、子供の頃からの夢であった47都道府県制覇。自然体で、行く機会があるときに行きたいところへ行っていたら60年もかかってしまった。最後に残っていたのが青森県で、還暦前に行っておこうと。弘前が良かった。
仕事では、インドに16年ぶりで訪問。前回行ったときはLBS後輩の結婚式でチェンナイ。今回は展示会への出展で初訪問のハイデラバードと、友人の息子さんの結婚式でバンガロール。チェンナイの友達の子供たちはティーンエージャーとなり、時が経ったのを実感。
と、ここまではよかったのだけど、インド出張最後の方で頭痛がし出した。帰国後も治らないので、受診。CT→MRI→3D造影CTを繰り返し、結論は解離性脳動脈瘤でした。痛かったのは、正に、血管が剥がれていたんですね
今年はついに還暦となりました。年を取るにつれ「時間がたつのが早い
」というのは、共通の感覚だと思います。その理由の一つは、人間は経験を積んで賢くなり、効果が確かなことだけをやり、新しいことをして失敗することを避けようとするからかもしれません。そのことは50歳を過ぎるころから意識していて、毎年幾つか新しいことにチャレンジするようにしてきました。とはいえ、10年前は子供たちは大学生を筆頭に、高校生と中学生で、一方、収入の方は国立大学に中途で転職したことで半減し、金銭を伴うリスクはなかなか取れなかったのですが、3人とも社会人となり、名実ともに子育ては終わりました。
家族的には、1月の長女の結婚。昨年9月に紹介されたときはZoom
実物かどうかも定かではなかったのですが、冬休みに一時帰国し、訪問してくれました。正月に両家で初めて顔合わせ。来年6月の卒業式には見に行きたいのですが（そういえば、子供たちの卒業式には一度も出たことがない）、病気治療次第で（後述）。個人的には、子供の頃からの夢であった47都道府県制覇。自然体で、行く機会があるときに行きたいところへ行っていたら60年もかかってしまった。最後に残っていたのが青森県で、還暦前に行っておこうと。弘前が良かった。
仕事では、インドに16年ぶりで訪問。前回行ったときはLBS後輩の結婚式でチェンナイ。今回は展示会への出展で初訪問のハイデラバードと、友人の息子さんの結婚式でバンガロール。チェンナイの友達の子供たちはティーンエージャーとなり、時が経ったのを実感。
と、ここまではよかったのだけど、インド出張最後の方で頭痛がし出した。帰国後も治らないので、受診。CT→MRI→3D造影CTを繰り返し、結論は解離性脳動脈瘤でした。痛かったのは、正に、血管が剥がれていたんですね
還暦を迎え、「これからは好きにするぞ」と思っていた矢先で、ここ2週間ばかり、受け入れられずにいました。飲みたくても、禁酒。激しい運動もダメ。定期的に行っていたサウナもダメ。それではストレスが溜まりますが、それもダメ
落ち込んでばかりもいられないので、これを機に、60歳の「新しい現実」に向き合い、体質改善しようと思います。
落ち込んでばかりもいられないので、これを機に、60歳の「新しい現実」に向き合い、体質改善しようと思います。2021年06月28日
ハロウィンの起源は江戸時代の花見⁉
クリスマスがキリスト教とは関係のない別の宗教（ミトラス教）の「太陽の祭典＝冬至」だったとすれば、ハロウィンの起源は「古代ケルトの正月」。「大晦日の10月31日は死者の霊が家族の元へ戻ってくる」というのは、お盆にそっくり。
ハロウィンを日本に広めたのは、TDLということ。アメリカの本家ディズニーランドには日本のようなスペシャルイベントはないらしいのだが、日本人はイベント好きなため、東京だけの催しとしてハロウィンはじめ、スペシャルイベントが増えてきて、今では1年の半分以上がスペシャルイベントなのだという。日本人は根っからの祭好きなのだ。
これに対して、イスラム教の信仰と直接にかかわる祭は二つだけしかないのだという。それは、「断食終了の祭」と「犠牲祭」。さすがは、商人の宗教と言われるだけあって、日々商いなのだ。
さて、タイトルの「ハロウィンの起源は江戸時代の花見」。江戸随一の花見の名所と言えば飛鳥山だが、ここでは「仮装・鳴り物・音曲おかまいなし」であった。いうなれば、「コスプレは日本で生まれたもの」で、それは昔から「無礼講や仮装の伝統があったから」なのだ。
179：ハロウィンの起源古代のケルト人にとって、11月1日は、新年のはじまりであり、大晦日の10月31日は死者の霊が家族の元へ戻ってくると考えられ、その2日間には、「サウェン」という祭が催された。180：ディズニーランドが広めたハロウィンTDLでは、スペシャルイベントとして、1997年から、10月31日に「ディズニー・ハッピー・ハロウィーン」を行うようになり、2000年からは10月全体にそれが拡大された。こうしたことに影響され、21世紀に入ってから、若者たちが仮装して、繁華街に集まる行事に発展していった。182：本家にはないスペシャルイベントこうしたスペシャルイベントはしだいに増えてきたもので、開園当初にはなかった。アメリカのディズニーランドでは、現在でも、日本のようなスペシャルイベントは、カリフォルニアでも、フロリダでも実施されていない。183：TDLでは、1年の半分以上がスペシャルイベントの期間日本人の祭好き、イベント好き。185：イスラム教の信仰と直接にかかわる祭は二つだけEid al-Fitr 断食終了の祭Eid ul-Adha 犠牲祭189：通過儀式としての性格その地域に住む子供たちが大人になるための儀礼。祇園祭も博多祇園山笠もそうした性格を持つ。194：飛鳥山〜江戸随一の花見の名所は「仮装・鳴り物・音曲おかまいなし」コスプレは日本で生まれたもの。無礼講や仮装の伝統があったから。
2021年06月27日
クリスマスはキリスト教の行事じゃない
昨日のキリスト教（風）結婚式に次いで、「キリスト教徒でもないのに、クリスマスを祝う」のか？という批判。しかし、こちらの方は、そもそもその起源からして怪しい。
「新約聖書のどこを見ても、イエスが12月25日に生まれたとは書かれていない。12月に生まれたともされていないし、季節さえ特定されていない。」
というのは、比較的よく知られた話。結局、これは、当時ローマで人気だったミトラス教で「太陽を崇拝する日」であったのを、「正義の太陽」であるイエス・キリストが降誕し、顕現した日として、そのまま取り入れたのがはじまりらしい。
というのは、比較的よく知られた話。結局、これは、当時ローマで人気だったミトラス教で「太陽を崇拝する日」であったのを、「正義の太陽」であるイエス・キリストが降誕し、顕現した日として、そのまま取り入れたのがはじまりらしい。
158：1952年のクリスマス・イブ『朝日新聞』12/25「24日夜、クリスマス・イヴの東京の盛り場はごらんの通り大変な人出。こども連れやアベックなどは、歓楽極まった千鳥足のクリスマス族のウズに巻き込まれて身動きもできぬ有様だった。（中略）ケガ人や交通事故が続出して救急車はひっきりなしに出動、中には酔った勢いで火災報知機のいたずら者もあって消防車が繰り出す騒ぎも数回」162：「キリスト教徒でもないのに、クリスマスを祝う」という批判が成り立つのか新約聖書のどこを見ても、イエスが12月25日に生まれたとは書かれていない。12月に生まれたともされていないし、季節さえ特定されていない。166：12月25日＝太陽神の祭典＝冬至インドやイランで栄えたミトラス教がローマでキリスト教と拮抗。ミトラス今日では、12月25日は太陽を崇拝する日。ローマ皇帝のアウレリウスは、この日を「不滅の太陽の誕生・顕現の祭」として国家の祭典に定める。そこから、キリスト教会は、ミトラス教に対抗するため、この祭典の日が、「正義の太陽」であるイエス・キリストが降誕し、顕現した日ととなえるようになった。
2021年06月26日
香典返し
これも、ずっと続いた日本の伝統かと思っている「香典返し」だが、今のように香典の半分を返す習慣は、最近のことなのだという。例えば、1989年に出版された『岩波仏教事典』では次のように解説されている。
「葬儀や法事で施主はまとまった出費がかかるため、まわりの者はその一部にと香奠を提供するので、仏事が終わり余りが出れば、香奠返しをする。また仏具などを買って菩提寺に寄進する」
つまり、香典は葬儀や法事費用として全額頂いて良いのが原則で、その趣旨から「余ったら」その分をお返しする。あるいは、菩提寺に寄進するということだ。
この長年の風習が変わったのが昭和から平成にかけて。それは、葬儀の場所が自宅から葬祭会館・セレモニーホールに変わったことと関係している。葬祭会館・セレモニーホールで行われるようになると、「香典返し」が葬儀とパッケージになっていて、デフォルトで組み込まれることとなった。
つまり、香典は葬儀や法事費用として全額頂いて良いのが原則で、その趣旨から「余ったら」その分をお返しする。あるいは、菩提寺に寄進するということだ。
この長年の風習が変わったのが昭和から平成にかけて。それは、葬儀の場所が自宅から葬祭会館・セレモニーホールに変わったことと関係している。葬祭会館・セレモニーホールで行われるようになると、「香典返し」が葬儀とパッケージになっていて、デフォルトで組み込まれることとなった。
個人的には、自宅でやる方が故人のそれまでの生活が感じられ、より思いをはせることができるので、好きだ。考えてみると、自宅で行なわれた葬儀に出たのは平成10年ごろ香川で行われた大叔父が最後。地方でも、この頃を境に自宅で行うことは激減した。
さらに、最近では、家族や親せきのみで行う「家族葬」が増えているという。そうなると、香典もなければ、香典返しも存在しない。その背景には、死亡年齢の高年齢化で、社会との接点が少なくなったことがある。
132：公共性を失った家現代において葬儀が行われる場所は、主に葬祭会館、セレモニーホールになってきた。全日本冠婚葬祭互助協会による1万人アンケートによれば、1990年までは、およそ半数が自宅での葬儀だった。それが減り続け、2011年以降では、自宅での葬儀は全体の4.6%に過ぎなくなった。葬祭会館が85.6%で圧倒的多数を占めている。寺で葬儀をしたというのも5%程度と、かなり少ない。137：戒名料日本に戒名の制度が生まれたのは、禅宗、とくに曹洞宗において、仏教式の葬儀が開発されたからである。曹洞宗では、雲水の修行を支えるために経済的な基盤の確立が必要になり、密教を取り入れたり、葬儀の開発を行ったりした。その際、修行中の雲水が亡くなったときのやり方がモデルになった。雲水は、正式な出家とは言えない。そこで、雲水の葬儀では、死者に剃刀を当てて出家したことにし、その上で、戎を授け、戒名を与えた。ここで言う戒名は、出家して僧侶として名乗る名前のことである。138：浄土真宗と日蓮宗には戒名は存在しない。代わりに、浄土真宗では「法名」と言い、釈○○、女性なら釈尼○○とする。日蓮宗では、日や妙といった字を入れ「法号」と称してきた。ただ、戒名と法名や法号との違いは、一般にはほとんど意識されていない。139：バブルの時代に流行した戒名院号の院は建物を意味。本来は、建物を寄進するなど、菩提寺に対して多額の布施をした者に、死後与えられるもの。バブル経済になる直前に山梨県の山村で調査したとき、院号のついた戒名を授かっている家は、およそ170軒ある檀家のうち、20数軒。1割強。142：NHK「無縁社会〜無縁死 3万2千人の衝撃」2010長年音信不通で、家族としての縁もなくなっているということで、引き取りを拒否。自治体が遺体を火葬に（直葬）。144：家族葬が当たり前公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」H29年間42万6000を超える取扱件数一般葬（50人以上の参列者） 63%家族葬（50人未満） 28%直葬 5.5%通夜を行わない一日葬 2.8%社葬 0.3%150：個人の死は、なくなる年齢が高くなればなるほど、プライベートな出来事となり、社会性を失っていく。家族以外に参列者のいない葬儀には、香典もなければ、香典返しも存在しない。
2021年06月25日
結婚式に祝儀など持って行かなかった
「日本ほど一神教が浸透していない国は珍しい。にもかかわらず、キリスト教式の結婚式が、半数以上」という日本。
一体、いつから？と思っていたが、それは、「1972年西郷輝彦と辺見マリの結婚式がきっかけ」だったということ。その舞台となった軽井沢聖パウロカトリック教会は、その後しばらく一番人気の結婚式教会となる。
では、それまで主流だった神道式の神前結婚式が日本の伝統であったのかと云えば、そうでもない。神道式が始まったのは大正時代以降のことで、それは、1900年皇太子時代の大正天皇「婚礼の儀」がきっかけだったという。
神道が国家宗教となって初めての天皇家の結婚式であり、それまで宮中で行われていた「婚礼の儀」が国家行事となった。この時、「伊勢神宮の神宮司長東京出張所としてはじまった財団法人神宮奉斎会が、この婚礼の儀に則って、神前結婚式の形式を定め、それが全国に普及していった」らしい。
それまでは、各々の家で、神様に関係なく行われていたという。だから、今増えている「人前式」というのは、昔に戻ったともいえる。
101：恋愛結婚全盛の時代結婚式のためだけに仲人を立てるというしきたりも、すっかり廃れた。仲人には、新郎新婦の経歴を披露するという役割があったが、それもスライドショーに取って代わられてしまった。108：1900年皇太子時代の大正天皇「婚礼の儀」伊勢神宮の神宮司長東京出張所としてはじまった財団法人神宮奉斎会が、この婚礼の儀に則って、神前結婚式の形式を定め、それが全国に普及していった。110：ブームになったキリスト教式の結婚式1972年西郷輝彦と辺見マリの結婚式がきっかけ。＠軽井沢聖パウロカトリック教会113：韓国戦後の経済成長にともなって、ソウルへの一極集中という事態が生まれ、それと並行してキリスト教の信仰が拡大した。それも、韓国では、儒教が強く、しばしば仏教を抑圧してきたからである。日本でも、明治に入る時点で、廃仏毀釈が起こるが、それは一時的なことに終わった。韓国では、仏教が抑圧されたことで、庶民層の信仰に空白があり、そこをキリスト教が埋めたのである。114：日本ほど一神教が浸透していない国は珍しい。にもかかわらず、キリスト教式の結婚式が、半数以上。117：結婚式教会での神父や牧師に見える人物の正体〜アルバイト白人の男性ということが多く、彼らは牧師のような恰好をして、結婚式を司る。
2021年06月23日
初詣は鉄道会社の発明
日本伝統の行事のように思われている初詣。実は、大正時代に鉄道の営業戦略で始まった。
昔は正月は年神さまを迎える時なので、江戸時代には初詣に行く人などいなかったらしい。俳句の季語に初詣が入ったのは1908年で、さらにそれが定着したのは昭和に入ってからだった。
その間に何が起こったかというと、大正時代に新設された鉄道会社が、旅客を増やすため、こぞって「初詣」を宣伝したということ。成田鉄道（現：JR成田線）が「成田山初詣」の新聞広告を始めた出したのが1910年で、同じく、京浜電気鉄道は1912年から川崎大師への初詣広告を開始する。
その間に何が起こったかというと、大正時代に新設された鉄道会社が、旅客を増やすため、こぞって「初詣」を宣伝したということ。成田鉄道（現：JR成田線）が「成田山初詣」の新聞広告を始めた出したのが1910年で、同じく、京浜電気鉄道は1912年から川崎大師への初詣広告を開始する。
56：除夜の鐘が各宗派に広がったのは、ラジオの力元々は禅寺だけ。1927NHKラジオ『除夜の鐘』（現：『ゆく年くる年』）近所の寺から借りてきた鐘をスタジオに持ち込んで108回叩く。1929一箇所だけ実況中継→1932各地からリレー中継→全国の寺院が取り入れた59：初詣が定着したのは昭和に入ってから古い歳時記には、初詣は季語にさえなっていない（初出：1908）。62：伝統的な「恵方参り」が、鉄道会社の戦略によって初詣へと変貌川崎大師に正月に参拝に出向くことをさして、初詣という言葉がはじめてつかわれたのが1885年。（平山昇『鉄道が変えた社寺参詣』）64：成田山初詣1910成田鉄道新聞広告。1912京浜電気鉄道 川崎大師への参詣広告
2020年04月19日
Le Mans '66: Ford V Ferrari V Reality
昨日、映画「 Ford V Ferrari」で、「シェルビーのピットでのFerrari妨害は本当か？」と書いたが、実話を基にした映画でどこまでが史実で、どこが脚色なのかは気になるところ。昨年先行公開された米国で大ヒットした映画なので、いくつかその点について解説している人がいる。
例えば、上のYouTubeを見ると、多くの点が実際とは違っているという。しかし、大きなのはこれだけかと思う。
・1965年のル・マンにKen Milesは参加している
映画では、「ケンはチームプレーヤーではない」というフォード社の判断で、チームで一番速いドライバーであるにもかかわらず、ケンは1965年のル・マンを走れない。それでも怒らずに、「ギヤボックスの過熱に気を付けて」とアドバイスしてチームを見送るのだが、それが原因でリタイヤするというのが筋書き。
実際はケンは1965年のル・マンに出走し、ギヤボックス故障でリタイヤしている。映画では、ケンの無念を際立たせるためにこうしたのだろう。また、同様に、1966年にも、フォードの反対でケンは出れないはずが、シェルビーがヘンリー・フォード�兇膨消免修靴董◆�Daytonaでケンが優勝したらル・マンに出走させる」との言質を取り付けるように描かれているが、実際は、すでにDaytonaでケンは優勝しており、66年のル・マン出場は既定路線であったようだ。
それより驚いたのが、スタート後GT40のドアが閉まらず、丸々一周片手でドアを押さえながらケンは運転しなければならなかったこと。そんな馬鹿なと思ったが、これは本当に起こったことだそうで、映画の通り、このためにたった一周でピットに入り、序盤で時間をロスすることになる。
2020年02月11日
Yashima Clean Day
NPOアーキペラゴが主催する「瀬戸内クリーンアップ」。世界に誇れる瀬戸内海の環境を守ろうと、ゴミ拾いイベントを年間を通して実施している。今日は、屋島の突端、長崎ノ鼻へ。
昨日までしばらく寒かったが、今日は天気が良く、風もない。長崎ノ鼻から見る瀬戸内海は晴れ渡り、絶景。ところが、一たび海岸に降りるとご覧の通り(写真）。
ビニール紐に、カップ麺容器、ペットボトル（蓋だけ多い）、ストロー、ライター。漁具の巨大発泡スチロールに、カキ養殖用スペーサー、漁網。自動車タイヤや、ゴルフボール、注射器まである。数十個のゴルフボールは、香川に多いため池を利用したゴルフ練習場から海に流れ出たようだ。
約30人が90分間わき目も振らず熱心に拾い集め、その数ゴミ袋80袋分。ある程度の大きさがあれば拾えるが、既に日光にさらされて弱くなり、波で洗われて破砕されたゴミが多い。数cm以下になると、拾うのが難しい。数mm以下のマイクロプラスチックになると、人手で拾うのは不可能である。
アーキペラゴでは、以下を推奨している。何れもちょっとした心がけで出来ること。
・マイボトル、マイカップ
日本のペットボトル回収率は約85%。この数字は世界的に見ると高いが、日本で年間に使用されるペットボトルの本数は230億本もある。一人当たり約200本
ということになる。そして、年間30億本が回収されず、山河に捨てられ、海に漂っていることになる。デポジット制を導入している欧州諸国では回収率はもっと高いので（ドイツ・オランダで99%）、日本も導入すべきだろう。・エコバッグ
海ゴミの大きな発生要因の一つであるレジ袋を削減する。野生動物の誤飲の元にもなっている。よく年間使用量305億枚という数字が出て来るが、あれは10年以上前に業界団体が推測した数字で、しかも、滅多に見ることのないLLサイズ（9.9g）換算での数値ということ。一般的なLサイズ（6.8g）で現在の数値を計算し直すと、636億枚と推定されている。一人当たり年間500枚くらい使っている計算になる。
2020年02月02日
満濃池名勝指定記念シンポジウム
満濃池が昨年10月に国の「名勝」指定を受けた。それを記念するシンポジウムが今日まんのう町で開催された。
名勝とは、日本における文化財の種類のひとつで、芸術上または観賞上価値が高い土地について、日本国および地方公共団体が指定を行ったもの。特に、文化財保護法第109条第1項において規定された、国指定の文化財の種類のひとつ（Wikipedia）
現在、国の名勝に指定されているのは全国で418件。そのうち半分ほどは庭園や公園などの「人文的名勝」。ため池が指定されるのは初めてということ。香川県では、栗林公園（特別名勝）、寒霞渓、琴弾公園、象頭山、玉藻公園飛雲閣庭園の5件に、満濃池が加わり6件になった。
灌漑用の溜池として日本一を誇る満濃池は、「萬農池後碑文」によると大宝年間（701年〜704年）に讃岐の国守道守朝臣（みちもりあそん）の創築と伝えられています。しかし弘仁9年（818年）に決壊、朝廷の築池使路真人浜継（ちくちしみちのまひとはまつぐ）が復旧に着手しましたが、技術的困難と人手不足によって改修がならず、国守清原夏野の発議により、弘仁12年（821年）空海が築池別当として派遣されました。空海が郷土入りをすると人々は続々と集まり人手不足は解消し､唐で学んだ土木学を生かして、わずか3ヵ月足らずで周囲2里25町（約8.25km）面積81町歩（約81ｈａ）の大池を完成させました。朝廷は空海の功を賞して富寿神宝2万を与え、空海はこれによって神野寺を池の畔に創建しました。（まんのう町「満濃池の歴史」）
シンポジウムの基調講演は、高松出身の井原縁（奈良県立大学教授）「名勝満濃池の風景とその魅力」。パネルディスカッションには、満濃池土地改良区理事長も参加。満濃池は、幾度もの補修と、3度のかさ上げを経て日本最大のため池になったのだが、貯水容量1540万トンが満たされることはほとんどないのだという。
元々、雨が少なく旱魃の被害に苦しんだ讃岐平野で、「貯められる時は一滴残らず水を貯めておきたい」と、明治39年に0.91m（3尺）、昭和5年に1.52m（5尺）、昭和33年には6mも嵩上げされた。何年かに一度、大型台風が直撃した時だけ満水になるが、他の年は7割で最大ということ。
2019年09月21日
リソル生命の森
長年家族ぐるみでお付き合いしているN家の次男A君の結婚式で千葉へ。外房線で誉田駅を目指す。外房線や駅から施設への途中、ビニールシートに覆われた民家の屋根が散見された。
「リソル生命の森」と言われてもピンとこなかったが、昔の「日本エアロビクスセンター」であることに思い当たる。行ったことはなかったが、有名アスリートが合宿することで一時期認知度は高かったと思う。カール・ルイス、高橋尚子、野口みずきなどが利用したという。
調べてみると、日本土地改良(株)が1976年にオープンした「真名カントリー」がその発端で、その後のリゾートブームに乗って複合リゾート開発を進めたようだ。当時のメインバンクは北海道拓殖銀行。拓銀は不動産融資に積極的で、それが原因で、バブル崩壊後1997年に倒産してしまった（北洋銀行に営業譲渡後清算）。
その結果、日本土地改良と日本エアロビクスセンターも翌年会社更生法申請。1999年ミサワホームグループのミサワリゾートの支援で再建が始まる。ところが、ミサワホーム自身がその後破綻し、2004年に産業再生機構の支援が決まる。2006年トヨタ自動車グループのトヨタホームが再生スポンサーに決定し、その後トヨタホームの子会社となる。
トヨタホームはリゾート事業は要らなかったので、ミサワリゾートは三井不動産が買収し「リゾートソリューション」に社名変更。数奇な運命をたどったが、現在は三井不動産グループの「リソルホールディングス」として株式公開している。
泊ったホテルは全室スイートとバブリーな仕様であった。敷地内には、ホテルの他、コテッジや分譲マンション、別荘など。スポーツ施設は「健康増進施設」である日本メディカルトレーニングセンター（旧エアロビクスセンター）他、ゴルフ場、サッカー場、テニス場、乗馬クラブなど。
現在、温泉施設を建設中で、これが出来ると集客力も上がりそう。
2019年05月26日
フラメンコ
先週、高校の同級生が主催するフラメンコ教室の10周年記念公演を見学。皆さんマジでした
門下生は高松だけで50人もいるのだという。フラメンコは一般に「スペインの踊り」と認識されているが、正確には、南部のアンダルシア地方独特の踊り。その成立には、インド北部を起源としてヨーロッパを放浪してきたロマ族（＝ジプシー）が大きくかかわっている。故国を持たず、キリスト教徒でもないロマ族は各地で差別の対象となってきた。そうして、流れ着いた果てがイベリア半島の南端アンダルシア地方だ。
ここは長年イスラム国家になり、アラブ民族の影響も受けて成立したのがフラメンコだ。そのせいか、私は、抑圧からの解放といった感じを受ける。また、ヨーロッパ的ではなく、むしろ、中東との共通点を感じる。
それはさてきおき、面白いと思うのは、スペインの一地方の踊りがこれほど日本で受け入れられていること。聞けば、日本のフラメンコ人口はスペインに次いで第2位だとか。日本フラメンコ協会によれば「愛好家5万人」とある。
いや、フラメンコだけでなく、フラ（ダンス）も日本各地に300教室があるという。これも、ハワイに次いで人口が多いはず。ハワイと日本以外で、フラを踊っているのを見たことがない。アメリカは移民の国で多少違うと思うが、ヨーロッパは基本的に民族の伝統文化を守っている。
歴史も、宗教も気にせず、興味本位で挑戦し、そのうちに職人気質で本場に負けないレベルにまでするのが日本人の面白いところ。
2019年03月30日
藝大21 第13回「奏楽堂企画学内公募」最優秀企画
藝大21 第13回「奏楽堂企画学内公募」最優秀企画 「音のいろ、音のかたち 〜現代音楽はスペクタクルの夢をみるか〜」公演へ。藝大フレンズ助成事業で、全員入場無料。
いわゆる「現代音楽」で、上演された全作品に作曲家がいて、構成されているのにオドロキ。楽器を使わない音や、背景で流される効果音まで、どうやって、楽譜に記録されているのだろう。
最初のBad Touchでは、佐野幹仁のパフォーマンスにくぎ付けになった。パーカッショニストの学生らしい。そして、日本初演となるLe Diner 2012など。途中のRecitationシリーズはフランス語でよく分からなかった
G.Aperghis / Recitation No.1,3,4,7, 9-11,13
C.Cangelosi / Bad Touch
D.Schnebel / Modelle No.1 <nostalgie>
O.Adamek / Le Diner
2019年02月23日
日本株が安い⁉
高田馬場で開かれた「MONEXお客様感謝Day2019」へ。都合さえつけば毎年出るようにしているが、東京にいない年もあるので、出席率は2回に一回くらいか。
メインで聞きたかったのは、ストラテジスト広木さんの話。万年強気で知られる広木さん。話を聞くと「これでいいのだ」と思えてくる。投資とは資金をリスクにさらすことなので、不安との戦いだ。平常心を保てなければ負けてしまう。定期的に広木さんの話を聞くのは私にとって精神安定剤とも言える。
今回の広木さんのメッセージは、まず「日本株が安い」であった。上記のグラフの通りで、予想EPSは日経平均24000円を付けていた昨年9月と変わらない水準（1750円）なのに、現在の株価は21000円。PER12である。長期の平均PERは15で、標準偏差-2σのレベルにある。経済危機が起こらないかぎり、これは安い。
日本経済全体としては「失われた平成30年」だったが、個々の企業を見れば、冷戦後の新たな現実に対応できなかった大企業が凋落した一方、新たな企業も出てきているし、日立や最近のソニーのように経営改革に成功したところもある。オリンパス、東芝、日産のように不祥事が起きるところが今後も出るかもしれないが、全体として日本企業の経営力は改善されていると言って良い。
因みに、今年の日経平均レンジ予測は、パネラーそれぞれ以下の通り。
松本社長 19000-27000円
広木隆 18500-28000円
大槻那奈 19000-25000円
佐々木（JPM) 20000-24000円
Koll (Wisdom) 20500-25500円
広木さん、レンジ広すぎ(笑)。
2018年10月15日
TechShop Tokyo
「会員制オープンアクセス型DIY工房」TechShop Tokyoへ。2015年に米国TechShopのFCでスタートしたTechShop Tokyoは富士通の子会社が運営。
アークヒルズにある1200�屬離侫蹈△砲篭眤芦湛�機、木工機械、ミシン、3Dプリンタなどの工作機器が備え付けられていて、会員になって各機械の講習を受ければ使えるようになっている。材料は個人で持ち込み。個人の入会金は3000円で、後は利用ニーズに応じて、1日利用（4,500円）、月間利用（18,500円）、年間利用（198,000円）が選べる。その他、家族、学生、土日限定などの割安料金も。法人会員もあって、企業が試作品製作などで使う例が多いそうだ。
会員数は現在個人1000人、法人100社ほどで、損益分岐点は越えたとのこと。キャパ的には3000人くらいまで受け入れ可能だそうで、ほとんど固定費なので、会員数が増えれば利益が出始める。
それぞれの工作機器は数十万円から数百万円する。これらを個人で揃えることは金額からも設置場所の面からも難しい。また、法人にとっても、常に使うものではないし、これまで試作品製作会社に外注していたものを、自ら試行錯誤できるとすれば、開発スピードを上げられる可能性がある。フロアはオープンアクセスになっていて、会員同士の交流が生まれやすい仕掛けにしている。オープンイノベーションも期待できそうだ。
とてもいい事業モデルに思えるのだが、本家の米国TechShopは2017年11月15日に破産宣告、会社を清算してしまった。2006年10月のオープン以来11年に渡って"maker movement"の象徴であったTechShopだが、その間急成長したのはGAFAを中心としたインターネット企業であり"maker movement"は主流にはならなかった。逆に、"maker movement"の本拠地は深圳に移ってしまったことがTechShop倒産の主因ではないか。
米Techshopは、2006年10月に会員制オープンアクセス型のDIY工房／ファブ施設としてオープン、以来10年以上にわたりmakerムーブメントを牽引、多くの教育機関や大企業ともコラボレーションする企業へと成長し、アメリカ国内のアクティブユーザーは9000人以上、これまでメンバーやトレーニング、STEAM教育プログラムなどを10万人以上に提供している。3Dプリンターを米製造業のものづくり革命の要と一般教書演説で述べたオバマ前大統領が、2014年6月にピッツバーグの店舗を訪れたことでも知られている。
米Techshopは閉鎖の理由を「同社の抱える債務を再編し、新たな資金調達を試みつつ企業戦略の転換を模索してきたが、資金が底をつき倒産に至った」とし、米連邦倒産法第11章に基づく会社再建も検討したが、新たなビジネスプランを提案する余地がなく、米連邦倒産法第7章、すなわち会社倒産以外に道がなかった、としている。
2018年09月15日
世界を変えた書物展
上野の森美術館で開催中の「世界を変えた書物展」へ。金沢工業大学が持つ、世界に大きなインパクトを与えた科学技術本の初版が展示されている。教科書で習ったあの本、この本が130冊もある。無料ということもあり、雨にもかかわらず大変な人気だった。
例えば、天動説を唱えたコペルニクスの『天球の回転について』（Norimbergae 1543）。そして、ニュートンの『自然哲学の数学的原理』（London 1687）。
興味深いのは、これらの本の大半が、ラテン語で書かれていること。ラテン語はローマ帝国の公用語としてヨーロッパ全土に広まり、2000年にわたってヨーロッパで教会や学問の共通言語として用いられてきた。戦前まではイギリスのパブリックスクールでも必修科目であり、小説＆映画「チップス先生さようなら」のチップス先生もラテン語の教師だった。
母国語で書かれるのが一般的になったのは「カント以降」らしい。ドイツ語で書かれた代表作『純粋理性批判』第一版が出たのが1781年。それまではドイツの大学でも、論文はラテン語で書く必要があり、カントの修士論文や博士論文をラテン語で提出している（学部はドイツ語）。1764年に出版された『美と崇高性との感情に関する観察』の自家用本に、カントは「何も知らない下層民を見下していた」が、「ルソーがその私を正してくれた」「私は人間性を敬うことを学ぶ」と書き込みでいるそうだ。
母国語で書くことで、ラテン語を習っていない一般大衆にも（当時の知識階級は限られているから民衆の大半）読んでもらおうということだったのか。
例えば、天動説を唱えたコペルニクスの『天球の回転について』（Norimbergae 1543）。そして、ニュートンの『自然哲学の数学的原理』（London 1687）。
興味深いのは、これらの本の大半が、ラテン語で書かれていること。ラテン語はローマ帝国の公用語としてヨーロッパ全土に広まり、2000年にわたってヨーロッパで教会や学問の共通言語として用いられてきた。戦前まではイギリスのパブリックスクールでも必修科目であり、小説＆映画「チップス先生さようなら」のチップス先生もラテン語の教師だった。
母国語で書かれるのが一般的になったのは「カント以降」らしい。ドイツ語で書かれた代表作『純粋理性批判』第一版が出たのが1781年。それまではドイツの大学でも、論文はラテン語で書く必要があり、カントの修士論文や博士論文をラテン語で提出している（学部はドイツ語）。1764年に出版された『美と崇高性との感情に関する観察』の自家用本に、カントは「何も知らない下層民を見下していた」が、「ルソーがその私を正してくれた」「私は人間性を敬うことを学ぶ」と書き込みでいるそうだ。
母国語で書くことで、ラテン語を習っていない一般大衆にも（当時の知識階級は限られているから民衆の大半）読んでもらおうということだったのか。
2018年09月09日
白鳥はどこへ舞い降りたのか？
香川大学サテライトセミナーで香川県の東の端にある白鳥町（しろとり）へ。西側にあるウチの実家からは県内で最も遠い場所で、60km。車で1.5時間かかる。講師は昨年のNHKブラタモリ香川編で案内人を務めた長谷川修一先生である。今年4月からは創造工学部長に就任。
今回の「お題」は、「白鳥はどこへ舞い降りたのか？」。白鳥の地名は、「全国的に見て、白鳥神社や白鳥を称する地名は、非常に多数みられるところより推測すると、白鳥陵の陵守、または、日本武尊の御名代部（みなしろべ）である「武部（たけるべ）に、深い由縁があるようであって、その部民等が、全国各地にその祖神として、白鳥神社を奉斎したのを、地名の起源とするのが、穏当のように思われる」ということ（合併前の『白鳥町史』）。「東国を平定した帰途に伊勢の能褒野で死去した日本武尊の霊が白鶴となって白鳥の松原に飛来した」ここに神祠を建立したのが白鳥神社の始まりとされている。
奇しくも、昨晩のブラタモリは鳥取砂丘で、「砂丘間低地」が出てきた。海岸にできる二重の砂丘とそれに挟まれた低地。そこに湧き出る水。これが小規模ながら、白鳥にもあるのだ。
ここで疑問なのが、白鳥（しろとり）とは、水鳥のハクチョウなのか、白い鶴なのか、それともコウノトリなのか、という点。西日本では昔、コウノトリのことをツルと呼んでおり、渡り鳥の鶴もハクチョウも西日本にはあまり来ないので、コウノトリの可能性が高い。鶴の食物は主に植物性で穀物を好む。一方のコウノトリは動物性の食料を好み、フナなどの小魚やドジョウ、カエル、ザリガニ、ミミズなどを食べる。
そして、砂丘間低地は湧水のある湿地帯。ここにはコウノトリの餌となる小魚やドジョウなどが豊富。ツルが飛来してきたとすれば、この湿地帯だったと思われる（写真）。
この一帯は、江戸時代になって高松藩が塩田として開発する。塩田となったあとは、餌が獲れなくなり、ツルも飛来してこなくなったと思われる。尤も当時のことなので、白鳥の松原がだめでも、周囲に水田はたくさんあるので、そちらで餌をついばんでいたことだろう。
戦後高度経済成長時代になり、農薬の影響でツルの餌が激減。昭和46年を最後に野性のコウノトリは途絶え、現在は国の天然記念物として保護されている。
2018年02月04日
史上5人目の東大出身プロ野球選手
昨日、香川大学大学院地域マネジメント研究科同窓会の主催で、「スポーツを通じての社会貢献と地域活性化」が開催された。「社会貢献」とか「地域活性化」は誰もが表立って反対できない分、結果的に害をもたらす言葉なので大嫌いなのだが（大体が、定義があいまいなので、悪用されるのである）、教え子たちに誘われ仕方なく出かける。
基調講演は退屈だったが、パネルディスカッションで思いがけない収穫があった。当初自転車で向かう予定で、夕方では寒くなるので、講演だけ聞いて帰ろうと思っていたが、午前中の雨が上がらず、車で出かけてよかった。
それが、史上5人目の東大出身プロ野球選手であった松家卓弘先生。高松高校→東大(現役)→プロ野球選手で、現在は、地元で県立高校の教員（地歴公民）をしている。プロ野球引退後、通信課程で教員免許を取ったそうだ。主に、在籍中リーグ最下位を低迷していた横浜ベイスターズと、その後移籍した日本ハムファイターズの組織としての違いの話であった。
・ファイターズは合同練習の時間が短く、後は選手の自主性に任されていた
投手に至っては、1000-1130しか練習しなかったそうだ。ベイスターズでは、最下位を脱出しようと無理な練習を長くやり、故障者が続出していた。
・毎シーズン球団経営陣が収支状況も含めて、経営状況を選手に説明していた
選手は試合のことだけでなく、球団全体のことを考えるようになった。
・毎月外部講師を呼んでの講演があった
外の世界でプロとして仕事している人の話で、入団後3年間は必須、その後は出席は自由だったが、多くのベテラン選手も聞きに来ていた。球団からは常に、「プロ野球選手という肩書がなくなった時、人間として何が残るか」を言われた。
・プロ野球選手としてではなく、社会人としてどうなのか
就職しても、「『野球しか知らないので、一から学んでいきます』とは挨拶するな
・小さな組織
球団の規模は小さく、選手数もギリギリで回している。沢山いる中から「這い上がってこい」ではなく、一人一人をよく見て、大切に内部で育てる。
・経営者が熱心
ベイスターズの球団社長はサラリーマンなので、2-3年で交代する。ファイターズの社長はオーナーなのでずっと変わらない。そして、熱心に試合だけでなく練習を見に来てくれて、全員に一人一人声をかけてくれる。
一言で言えば、うまく球団「経営」がされている。それは、親会社である日本ハム自体が、最近までオーナー企業であったことも影響しているだろう。その熱心な球団オーナー(当時)とは、大社啓二さん。大社家は香川県の出身。その縁で、私も「香川県産業活性化アドバイザー会議」で同席させていただいている。
2018年01月21日
博物館で初もうで
東京国立博物館で、毎年1月に「博物館で初もうで」が開催されるようになって15年。すっかり、新春恒例となった。
当然、今年は戌年に因んだ展示が迎えてくれる。応挙の子犬がかわいい
（写真）干支の戌にちなんだ特集や国宝「古今和歌集（元永本） 下帖」や重要文化財「鳥獣戯画断簡」をはじめとする名品の新春特別公開、また吉祥をテーマにした作品など、お正月らしい作品の数々で皆さまをお迎えします。また、和太鼓や獅子舞などの伝統芸能もお楽しみいただけます。
朝顔狗子図杉戸（部分） （写真上）
円山応挙筆 江戸時代・天明4年(1784)
円山応挙筆 江戸時代・天明4年(1784)
名所江戸百景・高輪うしまち （写真左下）
歌川広重筆 江戸時代・安政4年(1857)
歌川広重筆 江戸時代・安政4年(1857)
犬形置物 （写真右下）
ドイツ・ドレスデン 19世紀 ライプツィヒ民族学博物館寄贈
ドイツ・ドレスデン 19世紀 ライプツィヒ民族学博物館寄贈
2017年12月10日
「子供は誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。」パブロ・ピカソ
一週間前に終わってしまったのだけど、東京藝術大学130周年記念事業「子供は誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ。パブロ・ピカソ」を見に行った。展示の大半は、全国の幼稚園・小学校・中学校・高校・大学から集められた（勝手に応募した？）作品。いったい、どういう基準で集められ、どう選択されたのかは謎。
会場の入口正面に展示されたのは、段ボール作品で有名になり、その後母校の教授になった日比野克彦教授による2作品（写真）。左が昨年ブラジルで描かれたという作品で教授は58歳。右は日比野少年（10歳）が岐阜大学付属小学校に通っていた時の作品「バラ」。さすがに上手い。確か、解説によれば、美術塾に通っていた時に描いた作品だとか。
美術教育といえば、高松市の保育所に作家である「芸術士」を派遣するNPOアーキペラゴがある。芸術家がそれだけで生活をしていくのは大変だ。安定した収入がない。普通の仕事では才能も生かせない。一方、保育所の園児はピカソに言わせれば「誰でも芸術家」。管理的な保育ではなく、芸術士が入って美術や踊りなど自己表現のワークショップをやると本当に園児が楽しんでいる。驚くような作品を創ってくる。この二つのニーズをマッチングさせたのが芸術士派遣事業。
これは、高松発で全国に広がるといいと思う。
2017年11月25日
藝大で初のフラメンコ公演
東京藝術大学音楽学部にはたくさんの楽器専攻があるが、ギターはない。現代音楽でおそらく一番使われている楽器であるギターがないというのは意外。やはり、明治の欧化主義からスタートした音楽学部としてクラッシック音楽重視ということなのだろう。
従って、東京藝術大学のコンサートホール「奏楽堂」でギターコンサートが催されたことはないのだそうだ。まして、欧州で長年厄介者扱いされてきたロマ族のフラメンコをや
その伝統が破られ、今日、クラッシックギター、フラメンコギターのコンサートが奏楽堂で開催された。今年春から開催されている「ビバ！エスパーニャ〜グラナドスのスペイン」の第4回目。私は、初回に続いて今回出席が叶った。
クラッシックギターの鈴木大介、益田正洋の超絶技巧。エンリケ坂井のフラメンコギターに大迫力のManuel de la MALENAによる歌。最後に登場した三枝雄輔の踊りに、おばさんたちが興奮
。あれで、かなり若返ったのではないか（笑）。14：00 第1 部 レクチャー「スペインのギター音楽」
講 師：濱田 吾愛 （フラメンコ歌手・本学非常勤講師）
川崎市生まれ。音楽評論家の父の影響で幼いころから各種の音楽に親しむ。立教大学文学部卒業後、音楽出版社勤務を経てフリーランスのライターとなる。2004年より東京藝術大学で非常勤講師としてスペイン音楽を講義。エンリケ坂井氏にカンテ・フラメンコを師事。スペインでもシンポジウムや公演に参加。2010年8月『物語で読むフラメンコ入門〜 用語辞典A to Z 』を出版。ライブ活動のほか、2011年カンテクラスを開設。
15：20 第2 部 コンサート「クラシック、そして灼熱のフラメンコ」
曲 目：タレガ 《アルハンブラの思い出》
ソル 《モーツァルトの〈魔笛〉の主題による変奏曲》
グラナドス（リョベート編曲）《スペイン舞曲集》より第5番
ロドリーゴ 《3 つのスペイン風小品集》
ファリャ《はかなき人生》より〈スペイン舞曲〉※デュオ
フラメンコ（曲目未定）
出 演：鈴木大介、益田正洋（ギター）
エンリケ坂井（フラメンコギター）
マヌエル・デ・ラ・マレーナ（歌）
三枝雄輔（踊り）
2017年10月14日
マサイとその第二婦人
私の地元の友達に、ケニアで10年間暮らしていたさくらさんがいる。そのさくらさんが、「元上司がマサイを連れて来る
」というので、南アフリカから帰ってまだ一週間にならないというのに、地元の蘭's Gardenへ。元上司というのは、ケニア在住28年になる早川千晶さんで、ナイロビのキベラスラムで孤児・ストリートチルドレン・貧困児童のためのマゴソスクールという「駆け込み寺」を運営している。その費用は経営する旅行会社の利益と主に日本から支援金を当てている。
その早川さんとともに現れたのは、ケニアに暮らして15年、マサイ族の第二婦人になって12年という永松真紀さん。夫のジャクソンさんと現れた。ケニアも一夫多妻制で、上限も決まってないそうだ。伝統的に牧畜民なので、牛やヤギの飼育頭数を増やすためには妻や子供などの労働者は多い方がいいという考え方ということ。
面白かったのは、マサイ族の「人生四つの時代」という話。
�‐�年時代
義務教育は小学校8年なのだそうだが、最近まで田舎では誰も学校に行っていなかったという。小さい頃からまずはヤギなどの庭で飼っている家畜の世話をする。10歳くらいになると草をたくさん食べるため遠くまで出かける必要のある牛の世話をする。朝7時くらいに家を出て、夜7時くらいまで牧草を求めて牛を連れて歩く。
�∪椎�期（戦士時代）
14歳くらいになると「割礼」の儀式があり、その日に少年時代は終わる。指導役の長老に付いて村を離れて青年同士の共同生活を送る。約10年間の間、森で牛を解体して食べる「肉宴会」、「牛泥棒」、「ライオン狩り」などの修行生活を送る。「牛泥棒」というのは、他民族の牛を盗みに行く肝試しのようなものだという。ライオンは人間を襲わないそうで、ちょっかいを出して怒らせてから仲間で一斉に狩るのだそうだ。青年期の男性だけ髪を長く伸ばし、「戦士のダンス」として高くジャンプする。
�Ｂ膺祐�
10年続いた「戦士時代」は角笛とともに突然終わる。卒業の儀式エウノトで、それまで伸ばしていた髪を剃る。ジャンプもその日からしないのだそうだ。まず第一婦人をめとり、家族を形成していく。
�つ肱郡�
年を取ると全員が「長老」と呼ばれ、尊敬される。青年や大人がその知恵を授かりに相談に来る。
これは世界中で永らく続いた伝統的人生観とおなじだと思う。日本でも武士の元服は14歳前後でしていたようだし、その後の青年期の集団生活は江戸時代から高度経済成長期まで盛んだった「青年団活動」に似ている。地域や時代によっても違うが、多くは元服すると働きはじめ、夜は宿に集まって合宿生活をしていたという。
そんな伝統的生活を送るマサイ族にも変化が訪れている。今では、全マサイ族が携帯電話を持っているそうだ。ジャクソンさんと永松さんが暮らす村にも、最近小学校ができて子供たちは勉強を始めた。気候の変化で牧畜も難しくなってきている。
教育を受けて広い世界をしれば、「私はそちらのほうがいい」という子供は必ず出てくる。マサイの戦士としての修行を拒否して都会に出る子供も出てくるだろう。そのうち何人かが成功して、故郷にデカい家を建てて大画面TVで衛星放送を見始めれば、マサイ族の生活も決定的に変わってしまう。
伝統的マサイ族の生活が見たいなら、早く行った方がよさそうだ。
2017年10月01日
世界初の「クローン文化財」による展覧会
韓国から飛んで、敦煌莫高窟に来ています。
・・・というのはウソで、釜山から帰国しての週末、近所の東京藝術大学美術館へ。シルクロード特別企画展「素心伝心」が開かれている。
今回の展示の特長は、「クローン文化財」であるということ。文化財で常に問題になるのは、「保存」と「公開」の両立。文化財の保存のためには非公開が最良だが、公開されないと文化財としての価値が共有できない。そこで、東京藝大では芸術と科学技術の融合による高精度な文化財複製技術（特許）を開発したという。クローンなので、気がねせず間近で見られる。「触ってもいい」ものもある。手触りまで本物そっくりなのだそうだ。
今回の展示物は、シルクロードの仏教遺跡。中には、2001年にタリバンが爆破したバーミヤン東大仏天上壁画、ドイツ探検隊がはがして持ち帰ったあと第二次世界大戦中に戦火で失われたキジル石窟航海者窟壁画など既に失われてしまったものも、存在中の調査結果をもとに復元されている。失われてしまって、もう永遠に実物では見ることができないと思っていたものが、そこにあるのだからスゴイ。
他にも、保存のため一般公開されていない敦煌莫高窟第57窟（写真）など。仏像だけでなく、石窟の壁画まで再現されている。
この「クローン文化財」、芸術と科学の狭間であり、細かいところに拘るのが好きな日本人には最適と思われる。昔なら根付、今からフィギュア。東京藝大にはこれでしっかり儲けてもらいたい。
2017年09月27日
ITU Telecom World 2017 in Busan
今回の展示会というのは、ITU Telecom World 2017 in Busan。ITU=International Telecommunication Union。日本語では、「国際電気通信連合」ということになるらしい。国連の特別機関で、周波数の割り当てを決めたり、通信の国際規格を話し合ったりしているらしい。
今回、ITU本部が開催する本展示会への出展者を見ると、主催国の韓国企業は別として、後は国別の出展になっている。韓国だけで、展示会場の半分近く。次いで中国。日本のブースは広さはその他の国々と同じくらいだが、アフリカやアジアの国々よりお金をかけてないことは一目瞭然。財政の厳しさを反映していると言えそうだ。
総務省の助成を受けて日本ブースに出展したのは、周産期遠隔医療の我々と、多言語SNSのWelltool、そして国立研究開発法人の情報通信研究機構。我々とWelltoolは中小企業枠。日本ブースから英語でインタビューを受けるところがなかったので、結局、私が出ることになった。
本展示会の特徴としては、通常企業が主体の展示会とちがい、発展途上国が国として多く参加していることだろう。これら各国の通信系の大臣も多く来ている。ちなみに、ITU本部(スイス)事務総長は中国人のZhao氏だ。
逆に言うと、米国のIT企業は一社も参加してないし、地元韓国でもSamsungやLGなどは出ていない。この辺が、ちょっと寂しく感じる原因か。
2017年07月17日
パンドラの箱が開いた！
先週から始まった、藝大所蔵コレクションを展示する「パンドラの箱が開いた！」展へ。藝大はその前身の東京美術学校から130年になるらしい。その間に蓄積した所蔵作品は膨大だ。場所を取る彫刻やインスタレーション作品も多いから、どうやって保存しているのか心配になる。
会場入って正面、まず目を引いたのが、高橋由一の『鮭』。明治初期に西洋画を学び始めた日本人の代表作として必ず教科書に載っている。
会場奥には、卒業作品の「自画像」が展示されている。著名現代作家のものが選ばれていて、村上隆や山口晃など。村上隆のは真面目に？しっかり描いている。中には、ゴムシートが丸めて提出されたものも。それで卒業できるの
危うく見逃しそうになったのは、藤田嗣治の遺品。終戦時から1949年に渡仏するまでの日記やパスポートなど。戦争中に陸軍の依頼で戦争画を描いたことで批判され、渡仏のためにいろいろと運動していたことが分かる。
2017年06月13日
ひふみ投信運用報告会
先週末、レオスキャピタルワークスの「ひふみ投信運用報告会」へ。報告会に出席するのは1.5年ぶり3回目。最初は、レオスの会議室でやっていたのに、回を追うごとに大きくなっている。今回は日本教育会館の一ツ橋ホールがいっぱいになっていてビックリ。今年の2月にTV東京「カンブリア宮殿」で藤野社長が取り上げられ、口座開設の申し込みが殺到したという。インターネットの時代でも、（コンテンツとして完成度の高い）テレビの効果は大きいと実感。
今回の藤野社長の話で面白かったのは、森金融庁長官が金融機関を「顧客不在」と公然と批判したこと。金融行政のトップが金融機関をこれほどストレートに批判するのは初めてだという。それは、「今まで監督官庁は何をしていたのだ」という藪蛇にもなりかねないからだ。
＊NISAなど長期投資に向くまともな投資信託は1%
（販売手数料が無くて、信託報酬が低く、複利効果を得るために分配しないもの）
かつて投資信託は「ゴミ箱」と言われた時代があり、証券会社が自己売買で損失が出た株を、傘下の投資信託に移し替えるようなことも行われていた。流石に今ではそんな犯罪行為はないが、現状でも日本の投資信託運用資産額の実に82%が販売会社系列の運用会社で運用されている。販売している銀行や証券会社の方が親会社なので、親会社が儲かるように、販売手数料が設定され、その時々で売りやすいテーマの投資信託が安易に設定される。そして、ほとんどの投資信託が設定された時が資産残高がピークで、後は減っていく一方。次から次へと設定される新しい投資信託を売り、また新たに販売手数料を稼ぐことが優先されるからだ。個人投資家の投資信託の平均保有年数はたったの2.3年である。
こうなると、どんなに優秀なファンドマネージャーでもよい成績を上げることは不可能だ。投資家の解約に応じるため、どんなタイミングであれ持ち株は売るしかない。資金流入がないので、良い投資機会があっても新規購入できない。
つまり、投資信託がよいパフォーマンスを出すためには、ファンドマネージャーの腕もさることながら、継続して資金が流入する販売の仕組みを作ることが必要不可欠である。理想的には、毎月一定額の積立てがあることだろう。投資家にとってはリスクの時間分散が図られるし、運用者にとっては相場が割高な時に買いを控え現金残高を増やしておいて、下落した時に買うことができる。結果として運用成績が良くなる。運用成績が良いのでさらに資金が集まるという好循環が得られる。逆に資金流出が続く投資信託は運用成績が悪くなるので、さらに解約が出るという悪循環に入る。そして、日本で売られる投資信託のほとんどがこのパターンだ。
表は、私が保有している「ひふみ」（赤線）と「SPARX新・国際優良日本株」（青線）と「さわかみ」（黄線）に比較のために入れたニッセイTOPIX（緑線）。ひふみとSPARXはこの5年間ほぼ同じ成績。
さわかみ投信は1999年に設立された日本では初めての独立系投資信託会社。当初の10年くらいは良い成績だったが、運用資産が3000億円になってから成績が落ち、結果、解約も増えて、運用が難しくなっていると思われる。カリスマであった澤上会長が高齢で運用から引退したのも痛い。それでも、代表みずからファンドの顔となり、大手金融機関の販売網に頼ることなく、直接販売で長期投資向けの日本株アクティブファンドを最初に作ったのはさわかみ投信。当初はファンド管理を引き受けてくれる信託銀行すらなく、大変苦労したと聞いている。業界変革の先陣を切ったパイオニア精神に敬意を表してまだ保有している。
2017年03月20日
タリーズ買収物語
レヴューを読むと、「前半は『すべては一杯のコーヒーから』と同じ」と書いてあったので、まだ本の方は読んでない。しかし、先週、講演を聴く機会があって、ちょうどタリーズ買収劇の話がご本人からあった。
交渉：当初Starbucksに「日本の独占権をくれ」と交渉するが、門前払い。2位のSeatles's Best CoffeeはVPが会ってくれたが、「飲食業の経験がない」というと断られる。そこで、シアトルで4店舗しか無くて、海外展開する気も全くなかったTully'sに会う。本社自身がマニュアル化も出来ておらず、「何の支援も出来ない」のでもよければと、1年間だけの日本の独占権を貰う。どの店でもよかったのだ
創業時：1号店は個人事業としてオープン。2号店を出すにあたり法人化（1998）。資金がなかったため、5人から出資してもらい自身の持ち株比率は25%であった。この創業者としては異常に低い持ち株比率が後々会社をコントロールできない原因になる。
拡大：資金力のあるStarbucksと真っ向勝負はできないので、オフィス内（第一号は三井物産本社内）や、病院内（第一号は東大病院）、また自動車ショールームや証券会社店舗内などに出店していった。これは面白い発想。
IPO：2001年にスタバより早く上場。公募価格＠16万円。資金力がないので、上場による資金調達が必要だった。
MBO：2004年非上場化。買取価格＠52万円。理由として二つ挙げていた。
・株式市場からの成長圧力（人を育てるには時間が掛かる）
・Tully's本社の経営悪化
日本のタリーズが順調に成長したことでライセンス料が入り、それを使って安直な出店をした結果、100億円もの累積赤字が溜まっていたという。経営破たんが現実味を帯びており、その影響を受けないために本社を買い取る交渉をしていた。買取価格が100億円にもなり、上場したままでは難しいと判断した。本社の価値のほとんどは日本から上がってくるライセンス料だったから皮肉なものである。
M&A：2006年伊藤園が買収。買収当時は売上120億円、営業利益は3.6億円の赤字であった。その後、順調に出店し現在は658店舗になっている。2015/4期で売上260億円、営業利益36億円と稀に見るよい買収結果となっている。この期の伊藤園全体の売上が4305億円、営業利益113億円なので高収益の孝行息子だ。
2017年03月16日
タラ号 太平洋プロジェクト 2016-2018
昨年5月から世界航海中のタラ号が横浜に寄港したのを見に横浜へ。
2016年5月28日、科学探査スクーナー船タラ号は母港のロリアンからアジア・太平洋方面へと新しい探査に出航します。2年以上の年月をかけ太平洋上を10万キロ近く航行する予定です。フランス国立科学研究センター(CNRS)がモナコ科学センター(CSM)と共に派遣した科学者チームもタラ号に乗船し、新たな方法で気候変動や人為的被害に直面するサンゴ礁の生物多様性や進化を調査する予定です。当プロジェクトは、フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ人文科学研究大学(PSL)、原子力・代替エネルギー庁(CEA)、モナコ科学センター(CSM)や他の多くの公私のパートナーによってサポートされています。
2003年にaguis b.が船を買い取って「タラ号」になってから13年間に渡り、10の探査プロジェクトを実施。世界40カ国、35万kmを航海している。
元はと言えば、1989年にフランスの医師で探検家のJean-Louis Etienneによって建造された帆船。今回は仕事の合間で乗船できなかったが、日本各地で乗船できる一般公開および記念イベントがある。
2017年03月13日
丸亀市民球場
土曜日、プロ野球オープン戦「日本ハムｘ楽天」を見に、丸亀市民球場へ。結果は、3-2で日本ハムの勝利であった。楽天フェルナンドと日本ハム森山の本塁打も見れたし、天気も良くて満足。
観客数は6030人と発表された。メインスタンド（3000人）と内野席（2000人）はほぼ満席。外野の芝生に両球団の応援団が陣取る。
丸亀市民球場がオープンしたのは丁度2年前。丸亀高校野球部も使っていた丸亀城内グランドが老朽化して、プロ野球開催も可能な球場として整備された。設計に当たっては、四国アイランドリーグの鍵山CEOもアドバイスし、その結果、観客の快適さに配慮されている。座席のカップホルダー、バックスクリーンの大型LED、BBQスペースがある。
プロ野球を見たのは10年ぶりくらいか。映像や音楽など試合進行に合わせてより工夫されていて飽きさせない。
2016年12月26日
講談士「神田松之丞」
日本講談協会の定期公演を聴きに「お江戸日本橋亭」へ。実は、講談は初めて。張り扇で釈台を叩きながら、ババン、バン、バン、バンとやるあれである。「落語」が会話によって成り立つ芸であるのに対し、講談は「読む芸」ということ。しかし、その境目は曖昧であるようだ。
遅れて行って、6人の最初の講談には間に合わず。二人目の途中から入ったので、ちゃんと聞けたのは4人。その中でダントツに上手かったのが神田松之丞。落語家でもあるらしい。
演目は、「淀五郎」。古典落語である。しかし、張り扇の合いの手が入る。検索したら、WOWOW動画で無料で見られるようだ。導入部は違っていた。
始めて行った講談の寄席は、くつろいだ雰囲気。多分なじみが多いのだろう、観客が互いに挨拶していたりする。カップ酒につまみ持参というオヤジも。売店もないので、持ち込み可なのか
2016年11月26日
舞踊団 花童
先日の「地域づくり団体全国研修」熊本大会の熊本分科会で、参加者に一番評判が良かったのが少女舞踏団「花童」。平成12年から活動しているというから、16年になるようだ。平成23年には子供舞踏団「こわらべ」も出来て、こちらは小学生が参加している。
熊本を中心に活動する少女のみで構成された子供舞踏団。熊本をはじめ、日本の文化を受け継いだ、子供たちの舞踏は多方面で高く評価されています。郷土の歴史・文化・芸能などをベースに、未来の熊本のために伝統文化の花を咲かせます。（案内パンフレットより）宝塚歌劇団に憧れる少女は沢山いる。バレーやダンスを習っている子も沢山いる。一方、日本舞踊やお茶を習っている娘は数少ない。そのまま育てば、着物を着る機会もなく大きくなってしまう。そして、海外に行って初めて気づくのだ、日本人ならば日本文化が最大の武器であると。
お姉さんたちが美しく舞い拍手喝さいを受けるのを見て、それに憧れる。小学生の少女が放課後に懸命にけいこをしている。こうした循環ができると面白い。
2016年11月23日
くまもと映画プロジェクト「うつくしいひと」
くまもと映画プロジェクトとして製作され、震災復興チャリティ上映に使われている映画「うつくしいひと」。私は、先日の「地域づくり団体全国研修会」で鑑賞。
主役はなんと姜尚中教授であった。学長辞めた後俳優に転身
かと思ったら、今年1月から熊本県立劇場の館長に就任しているらしい。昨年「この年にして初めて、悪人というものは実際に存在するのだ」と思い知ったらしいから、気になる。姜教授ほか、行定監督も出演者も全員熊本出身。
橋本愛
高良健吾
米村亮太郎
石田えり
くまモン
2016年11月15日
私のセトゲイ番外編 よるしるべ2016
観音寺で2011年から続く「よるしるべ」、今年はセトゲイの公式プログラムの一つとして実施された。
陶芸作品の灯りを頼りに夜の街を歩くと、昼の顔とはまるで違う風景がプロジェクションマッピングで姿を現す。それぞれの映像は地元の逸話や伝承に基づいて製作されている。
ガイドツアーやライブなどのイベントもあったのだけど、知ったのが遅くて一晩だけしか見れなかったのが残念。
2016年11月14日
セトゲイ2016 私のWorst 3その��
この絵を見ると、何か期待できそうだ。そこで、張り切って見に行くと、ホームビデオで撮ったような映像が流れているだけ。まさかそれだけと思わなかったので、会場となった伊吹民俗資料館をくまなく探し回った。最後は係員に聞いて、「それだけです
」と言われて終わり。同じ事を聞いた人は多いようで、「ガイドブックの絵はコンセプトなのです。皆さんガッカリして帰られます」とも。
それなら、そうと言ってほしい（言えないか）。私はパスポートだったので良かったが、他の3人はその日だけの見学だったので、全員「300円払ってもったいなかった」と脱力。尤も、本当の作品は、島内各所に置かれた指示書きと立体作品（でも、どれもチャチイ）。これら屋外の作品は課金が難しいので、屋内の映像作品のところで課金しているのだ。
セトゲイでは来場者アンケートを5000人規模で実施している。それは誰がどこから来て、全体としての満足度を測るものなのだが、各展示での満足度調査も必要ではないか。芸術だからそれだけに頼る必要もないが、多くの来場者の怒りを買うレベルだと公金を使った大規模イベントとして問題だろう。
小林耕平
ト・ラ・ン・ス・フォー・マー −島に成るー
島を理解するために「島に成る」ことを促す試みを展開。道沿いや空き地、家屋、屋根など随所に、インストラクション（指示書き）と立体作品を設置。伊吹島民俗資料館には映像作品を展示する。2016年11月13日
セトゲイ2016 私のBest 3その��
私のセトゲイ2016Best 3その�△蓮�アレクサンドル・ポノマリョフ「水の下の空」。ロシア人作家によるこの作品は本島の笠島地区の外れの浜にあった。
見た通りなのだが、写真で分からないのは、船が風に吹かれて揺れること。まるで、波に浮かぶ船の様なのだ。船体は網で形作られ、この船が瀬戸内海の漁船であることを物語る。背景には瀬戸大橋。島を舞台にしたセトゲイらしい作品だと思う。
海辺に和船を思わせる立体作品を設置。船の表面には砂が塗られ、あたかも砂でできた船のように見えるが、軽い素材でできていて風が吹くとゆったりと揺れる。また、船底には古い網やロープがもつれあっていて、幻想的な町のようなレリーフを形づくっている。網やロープにはおもりやかぎ針などの漁具が垂れ下がっている。
2016年11月12日
セトゲイ2016 私のWorst 3その��
場所は男木島の古家。おそらくその古家に残っていたものなのだろう、様々な家財道具類が回転する軸に接着されて部屋の中で回る。
それで？
見ていて、何の驚きも、感慨も、感想もない。モーターを動力源にスポットライトの中で一日中回転する家財道具を見て、「電気が勿体ないから止めてくれ
」と思った。セトゲイ Worst 3 林天苗「自転ー公転」（男木島）
空家でインスタレーションを展開。古い日用品や道具など機能を失ったものを骨組でつなぎ合わせ、抽象的なフォルムを造形。新たな色を重ね、それらのオブジェをモーターで動かし、ものに動きを与える。そうすることで、空家に新しい物語を付け加える試みだ。
2016年11月07日
セトゲイ2016 私のWorst 3
現代アートは難しい、と言われる。しかし、見て、聞いて、感じとれないものを無理に認めなくてもいいではないか。「分からない」というと、しばしばこえび隊（ボランティア）に、「これを読んでください」と説明文を渡された。感じたうえで読むのならいいが、読まないと感じられないというのはおかしいだろう。その点、「反コンテクスト」のチームラボ猪子さんに共感する。
そこで、今回、「ナニコレ？」と思った作品Worst 3を発表したい。
セトゲイ2016 Worst 3 大竹伸朗「女根」（女木島）
島に生息していた大きな椰子が人工衛星のようにブイの上にそびえ立ち、その周りにはキッチュなタイルのモザイクやワニのオブジェ、船材などを配置。休校中の小学校と植物と作品とが一体となって響き合う。前回の芸術祭で登場し、会期を追うたびに作品要素が増殖していった。今回はさらに、校舎入口周辺に大竹テイストを拡張する。
私には意味不明であった。それでいて今回最高の入場料510円。私はパスポートを持っていたので良かったが、一緒に行ったイタリア人芸術家は怒っていた。
2016年10月30日
さぬき歌舞伎まつり
琴平町の金丸座は天保6年（1835）に建てられた、現存する日本最古の芝居小屋。国の重要文化財である上、現在でも春の風物詩となった「四国こんぴら歌舞伎大芝居」はじめ、各種公演で使われている。
今週末見学したのは、県内外の農村歌舞伎保存会が「旧金毘羅大芝居（金丸座）」を舞台に公演する「さぬき歌舞伎まつり」。こんぴら歌舞伎大芝居は県外観光客が殺到するプラチナチケットとなっているが、こちらはアマチュアの農村歌舞伎保存会の公演ということで無料
そのためだろう、PRは控えめで、予約は往復はがきのみというハードルの高さ。一度、金丸座で歌舞伎を観てみたかったので、申し込んだ。実際は、当日券も用意されていて（これも無料）、並べば当日でも入場可能であった。
各保存会による公演は1時間程度。20分程度の休憩をはさんで続いていく。アマチュアということでそれほど期待していなかったのだが、なかなかの出来。初日に見た中では、兵庫県多可町から参加した「播州歌舞伎クラブ」の出来が突出していた。調べてみると、多可町では町の名物として、町を挙げて農村歌舞伎保存に取り組んでいるようだ。
香川県の地元からは、祇園座・川東校区放課後子ども歌舞伎教室（高松）、中山農村歌舞伎保存会（小豆島）、肥土山農村歌舞伎保存会（小豆島）、東かがわだんじり子供歌舞伎保存会の4団体が参加。中では、肥土山が上手かったように思う。肥土山には立派な歌舞伎小屋も残っていて、それだけ練習熱心なのだろう。
2016年10月27日
「メーヴェ」を作っちゃいました
チームラボ猪子さんの対談相手であったメディア・アーチストの八谷和彦さん（東京藝術大学准教授）が昔PostPetを作ったことは昨日書いた。その八谷さんの最新作がこれ。『風の谷のナウシカ』に出てくる飛行機メーヴェを作ったのだ。
それが「オープンスカイプロジェクト」 開発費がかさむことと、飛行に人命の危険が伴うので、PostPetを作った八谷さんの会社ペットワークスで実施している。機体重量が1tを切る世界最軽量のジェット機である。初号機は離陸にゴム索曳航を要したが、2号機では自力での離陸が可能になっている。
八谷さん曰く、「最初に乗るのはきれいな少女でなくてはいけない」とオーディションまで実施したそうだが、試験飛行はあまりに危険なため、断念したそうだ。
2016年10月26日
数寄屋＝非対称の家
「TOKYO数寄フェス」の続き。
数寄屋の意味は、もともと「非対称」ということなのだそうだ。「極東の美術がシンメトリーを避け、西洋の美術がシンメトリー（対称）を基本とする」というのは面白い。例えば、欧州大陸の庭にはシンメトリーが多い。フランスの宮廷庭園など、庭木まで三角錐や円形に刈ってある。キリスト教的には、あれこそ、「完成された姿」なのだろう。
猪子社長が的確な例を挙げた。西洋画には枠があり中心があるから、皆見るとき中心を争うと。ルーヴル美術館でモナリザを見るのに、観光客はセンターを取ろうと争う。対して、絵巻物など、どこが中心ということがなく、横に広がっていくと。
対談相手の八谷准教授（東京藝術大学）は、ポストペットの作者。皆がGmailなどブラウザメールを使いだす前、2000年代前半はOutlookなどメールソフトを使ってメールのやり取りをしていた。当時日本で大ヒットしたのがPostPet。ピンクのクマ「モモ」がメールを届けてくれるのだが、このモモも非対称なのだという。
コンピュータを使っての作画上、簡単に対称に出来るのだが、そうすると人工的になってしまうのだそうだ。確かに、人の顔は完全対称ということはあり得ない。鼻が少し曲がっていたり、目の大きさが違っていたり、などなど。そのため、モモも少し目の位置が違ったり、不自然にならないよう、敢えて非対称にしている。
道教や禅の哲学の動的な性質は完全そのものよりも、完全を求めるプロセスに重きをおいた。真の美はただ「不完全」を心の中で完成させる人によってのみ見いだされる。人生と芸術の力はその成長の可能性に存した。（中略）禅の考え方が世間一般の思考形式となって以来、極東の美術はシンメトリーということは完成を表すのみならず重複を表すものとしてことさらに避けていた。意匠の均等は想像の精神を全く破壊するものと考えられていた。（岡倉天心『茶の本』）
2016年10月25日
反コンテクスト
チームラボの猪子さんは、「反コンテクスト」なのだそうだ。つまり、アート作品はコンテクスト（文脈・背景）に依存するものであってはならないという。だから作品は世界中で楽しまれ、賞賛される。国や民族の文化や歴史に左右されず、人間なら誰しも見て触れて楽しめることを前提としているからだ。
文化人類学上、日本はハイコンテクスト文化とされている。コンテクストの共有性が高いので、伝える努力やスキルがなくても、互いに相手の意図を察しあい、意向が通じる。これは、同胞間では効率的だが、違う文化圏からは理解されない。いわゆる「ガラパゴス状態」に陥りやすいのだ。
米国は対照的なローコンテクスト文化だ。社会の仕組みが明文化されており、移民にもその日から理解される。その代わり、何をするにも契約書は膨大となり、弁護士費用はかさむ。
写真は、本邦初公開という「四国の山奥の滝」。チームラボ「大歩危小歩危 渓谷に咲く花」を実施した後、夜機材を移動して設営、「自分たちのためだけ」にやったのだそうだ。まず、イベントとして実施すれば�ゝ�可を取るのが大変、�∋咳�で駐車場がないので客が呼べない、そして、��やってみたかった、のだそうだ。
これを知ったら、「10万円払ってでも見たい」という富裕層は多いと思う。1日10組限定で100万円あれば、協力してくれる自治体はありそう。
チームラボの作品は公的イベントで展示されることが多いので無料となり、結果、混雑して作品が本来意図した体験をすることが難しいことが多い。そのため、DMM.planets（お台場）では入場制限をした。そうすれば、今度は何時間も待つことになる。
ここでも、「1万円払ってでも待たずに体験したい」という人は多いと思う。払いたくない人は列に並んで待てばいいわけだ。売上は公的助成の削減につかえる。TDL1日券は7400円で皆喜んで払っている。こうしたフレキシビリティがもっと必要だ。
2016年10月23日
TOKYO数寄フェス
「上野の杜にARTが集い、日本文化を世界に発信」ということで行われたTOKYO数寄フェス。今週多忙で疲れてしまい、全部は見れなかったが、昨晩チームラボの「浮遊する、呼応する球体」と大巻伸嗣さんの「Memorial Rebirth」だけ見てきた。
なぜ「数寄」なのか？数寄はもともと「好き」の同意語で風流・風雅に心を寄せることらしい。「数寄者」とは、室町時代には和歌や連歌を好む人をさし、安土桃山時代に侘茶が流行し、茶人を指す言葉になる。その後、茶室を「数寄屋」と呼ぶようになったというわけだ。
岡倉天心は『茶の本』のなかで「茶室」を、人それぞれ好みの詩趣を宿す「好き家」、美的感情を満たすために置くものの他は一切の装飾を施さない「空き家」、そして不完全を尊び故意に仕上げず、見る者の想像の働きでこれを完成させる「数寄屋」と解説しているとか。
会場の上野公園は1876年5月に開園した日本初の公園。博物館、美術館、芸術大学、動物園、音楽ホールなど数多くの重要文化施設が一つの公園地帯に集まるのは、世界でも類がないという。確かに、NYセントラルパーク付近には博物館、美術館、音楽ホールはあるが、動物園はないと思う。ロンドンでも市内各地にいろいろあるが、一か所に集積しているわけではない。
「日本文化を世界に発信」と謳っていたが、その割には外国人旅行客は目立たなかった。近所に住んでいる私でもイベントが始まって、アート展示が準備されて初めて知ったので、告知面で工夫の余地がありそう。
2016年09月18日
仁尾八朔人形まつり
隣町の仁尾町。ここでは、ひな祭りをこの時期に一緒に行う。何故かというと、戦国時代、ここにあった仁尾城（領主：細川頼弘）が長曾我部の軍勢に攻め落とされたのが天正7年(1579)3月3日だったから。天正7年といえば、安土城が完成した年だ。落城の日に祝い事をするのはよくない。それ以来437年、八朔の日（旧暦の8月1日）に男の子の馬節句と女の子の節句を一緒に祝うのだ。
明治・大正・昭和と塩田で大変栄えた仁尾では、この日、商家が代々伝わる雛人形や鎧兜を店先や玄関に展示する。人形を飾るだけでなく、舞台をつくってジオラマふうに場面を作るという凝りよう。高度成長期以降一時廃れていたが、「八朔人形まつり」として復活して今年は第19回。
街中の商店や家が参加して、あちこちで作品を見ながら回遊できるようになっている。国道沿いのショッピングセンターやコンビニに客を取られてしまって、普段は閑散としている仁尾の町もこの日は旧道を歩き回る見物客で賑わう。
2016年09月09日
彼の僧の娘―高代覚書
高校同級生が主役を演じる芝居を観に明大前へ。先ほど終了して帰ってきたところ。
丸亀高校に入って演劇を始めた明樹由佳さん、大学に進学して一旦は演劇から離れたものの、思いが募り大学3年時に劇団四季に入団する。当時、Catsのロングランが始まったばかり。若い時から劇団四季で俳優を目指す人は多く、既に20歳となっていた彼女は猛特訓で追いつこうとする。そのかいあって、Cats他多数の演劇に出場の機会を得る。
その話は同期が幹事年であった4年前の東京同窓会で、「おどって うたって ころんで おきて 〜自分らしく生きる〜」でしてもらった。例年、研究者となった同窓生の講演が多い中、踊りの実演に同窓生もそれに参加するという異例の展開。大いにウケタ。
さて、今晩の芝居「彼の僧の娘―高代覚書」は、明治末期に起こった幸徳秋水の「大逆事件」に関与したとして逮捕され、死刑判決を受けた僧侶・高木顕明の養女・加代子の数奇な運命を描く。顕明は新宮にある自分の寺で幸徳秋水の談話会を開いたが、事件への直接関与は無かったとされる。しかし、明治政府始まって以来の大逆事件に浮足立った政府は秋水と交友があった関係者を全員逮捕し、死刑にしてしまうのだ（約半数は後に恩赦で無期懲役に減刑）。顕明も減刑された一人だったが、真宗大谷派から僧籍を剥奪され、それを苦にして獄中自殺してしまう。
残された家族は寺を追われ、生活苦から、加代子は9歳で大須の芸者置屋に売られる。長じた彼女は売れっ子の芸者となり、浜松で成功したという。その資金で小料理屋を始め、不幸な身の上の女性をどんどん雇い入れた。その間も、加代子は「大逆事件の罪人の娘」として、定期的に警察署への出頭が命じられ、常時特高警察の監視下に置かれていたという。
作・演出の嶽本あゆ美さんがお孫さんに聞いたところでは、戦後の加代子は、「それは明るく過去も語らない、粋なおばあちゃんだった」とのことだ。浜松祭では元浜町の山車に乗り、三味線を引いていたらしい。
真宗大谷派が僧籍はく奪の過ちを認め、顕明が名誉回復を果たしたのは死後85年もたった1996年の事であった。
2016年08月29日
アボリジニが感じた小豆島のスピリチュアルパワー
土曜日のまちづくり推進隊高瀬「三豊つながる会議~高瀬のミライ」終了後、そそくさと小豆島へ向かう。向かった先は、世界考古学会議京都大会の小豆島プレシンポジウム。今週京都で開催される世界考古学会議のプレイベントとして行われた小豆島プレシンポジウムには70人の考古学者が参加した。
私も学生時代は考古学を勉強して・・・
というのはウソだが、小豆島町が５年前から開催している「石の文化シンポジウム」に、「讃岐ジオパーク構想」推進の立場から毎年参加していることから呼んでいただいた。基調講演がUCLのDr. Tim Williams先生であったこともある。カレッジは違うが、同じロンドン大学だ。
フリーディスカッションで最も印象的だったのは、オーストラリアから参加したアボリジニだという男性。小豆島に降りたとたん、「気」の違いを感じたという。それは、皇子神社の訪問で最高潮に達し、その場のスピリチュアルパワーに圧倒されたという。そして、目に涙を浮かべて、「この特別な島を開発の手から守ってほしい」と訴えたのだ。
興味を持ったので、ディナーの時、隣に座って話してみた。アボリジニの人と話すのは初めてだ。彼は、白豪主義と呼ばれたオーストラリアで「盗まれた世代」（stolen generation）と呼ばれるアボリジニだった。
・両親ともアボリジニ
・当時のオーストラリアのアボリジニ隔離政策で幼いころ両親から引き離され孤児院で育てられた
・両親に再会できたのは大人になってから
・なので、アボリジニの言葉はしゃべれないが、土地の「気」には敏感
神社では「気」を感じるが、キリスト教教会に行っても何も感じないという。神道では場所を選んで神社を設置していると考えられるので、やはり神社はパワースポット？
2016年08月28日
三豊つながる会議~高瀬のミライ
昨日、まちづくり推進隊高瀬で第三回まちづくり若者＆地域交流研修「三豊つながる会議~高瀬のミライ」を、香川大学三豊地域活性化プロジェクト（責任者：経済学部 古川尚幸先生）と実施した。幸い、今回も四国新聞に「高瀬ブランド創出探る」として載せていただいた。
前回に、古川先生が長年取り組んでいる「瀬戸内活性化プロジェクト」を実際に参加している大学生から推進隊高瀬会員に紹介してもらったのがきっかけ。同じく参加した地元高校生にも、「大学生になったらこんなすごいことができるんだ」と大いに刺激になった。
このシリーズ、3年目を迎えるまちづくり推進隊高瀬の会員層が広がらないことに危機感を持ったことがきっかけ。「まちづくり」であるなら、理想的には地域の住民各層から幅広く参加して、それぞれが思うまちづくりを仲間と実現してほしい。
ところが、現実は、参加できるのは高齢者層が多く、「高齢者の、高齢者による、高齢者のためのまちづくり」になってしまっている。現役世代が仕事と子育てで忙しく、「たまの休みは遊びたい」となるので、参加者が少ない。
それなら、地元の高校生に参加してもらおう、と思ったのがきっかけ。幸い、高瀬には公立と私立二つの高校がある。そちらに呼び掛けて、まずは話し合ったのが1年前。これが、「孫の世代と話せて面白かった」と好評で、前回は香川大学の学生の活動を知ってもらおうと発表してもらい、さらに今回は中学生にも参加してもらった。
地元高校生の半分は、進学や就職で卒業後県外に出る。そのうちさらに半分は永遠に地元に戻らず、多くが都会で暮らす。つまり、毎年、同学年の約1/4を失っていくことになる。合計特殊出生率は1.51で丁度全国平均並みなのだが、社会減の影響で、実質は1.13なのだ。従って、中高生のうちから地域活動に興味を持ってもらって、将来のUターンを増やそうという狙いもある。
記事にもある通り、でたアイデアをさらに練って、中高大学生にも入ってもらってプロジェクト化したいと思っている。
2016年08月24日
メダル競争
Rio Olympic終了。The Economist誌に面白い記事があったので、紹介したい。ひょっとすると日経新聞にも近日中に翻訳記事が出るかもしれない。
タイトルは"Medalling Prosperity" サブタイトルには「もしオリンピックが繁栄について何か教えてくれるとすれば、それは、近道はない、ということだろう」とある。
面白いのは上記の図で、横軸が購買力平価（PPP）換算の一人当たりGDP。これは、所得水準と考えてもよく、ほぼ経済的豊かさの順にメダル獲得数が多いことが分かる。同じ国の推移でみても、中国が経済発展に従ってメダル数を増やしていることが分かる。中国の一人当たりGDPが$4000であった2000年シドニー・オリンピックでは58のメダルを獲得したが、2012年のロンドン・オリンピックまでに一人当たりGDPは4倍に増え、メダル数は88個であった。今回のリオは70個であったが、これは経済の停滞を表しているのかもしれない。
これまで所得水準以上にメダル獲得数が継続的に多かったのはロシア。ソ連時代から国家の威信をかけた養成プログラムがあり、またドーピングに国家ぐるみで手を染めていたことが内部告発で今回明らかになった。
注目はイギリス。エコノミスト誌の地元であるから、詳細な分析がされている。元々、所得水準に応じたレベルのメダル数だったが、この三大会で急増。ロシアが締め出された今大会では米国、中国に次ぐ世界第三位の67個となった。金メダル数では27個で、中国の26個を上回って世界第二位
米国の人口が3億人、中国の人口が14億人に対して、6500万人であることを考えると驚異的だ。イギリスは何を変えたのか？一言でいうと、「お金と戦略」。それまでオリンピックに中立的立場を取っていたイギリスがロンドン開催を狙ったと同時に積極策に変わった。1996年のアトランタで金メダルが1個という屈辱を味わったことで世論が変わったことも大きかった。National Lottery（宝くじ）を原資に予算が付き、その金額は2000年の£50Mから、2012年の£250Mまで5倍に増えた。£250Mということは、現在の為替レートで330億円。今年の日本のスポーツ関連予算が324億円だったというから、ほぼ同じだ。
もう一つは、戦略。伝統的に強くて、他国があまり力を入れてないもの。かつ種目数が多くて、メダル獲得可能性が多い競技に予算を集中した。その効果が如実に表れたのが自転車競技で、67個の獲得メダルのうち12個が自転車競技。なんと自転車競技18種目のうち、6個が金。そのイギリスもBrexitで今後しばらく景気が悪くなりそうだから、東京オリンピックでは期待できないかもしれない。
さて、日本はGDP規模で世界第三位であるが、一人当たりGDP（PPP）で見るとシンガポール、香港、台湾のはるか下（下図）。しかし、奇しくも、物価の高いイギリスとは同水準。既に予算規模がイギリスと同水準だから、あとはメダル獲得可能性で重点競技を絞り込めば、今回のイギリス並みは行けるのかもしれない。日本オリンピック委員会でも、4年後の東京オリンピックでの目標を「金メダルで世界第三位」の20-30個としており、ちょうど、今大会のイギリスの水準だ（金27個）。
最大の問題は、悪平等の日本で、予算の「選択と集中」が許されるかどうかだろう。
