2025年11月03日
新・代表的日本人
内村鑑三『代表的日本人』は実は英語の著作(日本語訳が出たのは戦後)。そこで紹介されているのは、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の生涯。
283:西郷が成し遂げようとしていた維新革命は、彼の理想に反して文明開化一色に突き進んでしまった。サムライ精神は無視され、優柔不断となり儒教の道を喪失し、日本人の堕落を招いた。打ちひしがれた西郷を救ったのは、「天」の声。
著者は戦後の「新・代表的日本人」を提案する。
285:柳田國男、伊藤静雄、小林秀雄、江藤淳
彼ら人文学の空気を吸う者たちが取り組んだ課題は、西郷隆盛的なものであった。
4人に共通するのは、死への嗅覚。
柳田國男がテーマとしたのは「近代の死」。柳田民俗学を特徴づけたのが、氏神信仰と常民にまつわる研究で、柳田が死について考え始めた明治末期の現実は、日清日露戦争を経て、日本が急速に工業化し、都市部へ人口が移動した時代。それは家と村から個人を解き放ち、自由を与えた。
286:家の自殺
自分の意思を超えた先祖の願い、家繁栄の願いを受け止めること、宿命を引き受ける常民の生き方の消滅。未来にいたはずの子孫の声なき声を、絞め殺した。
287:魂として「宙づり」
何ものにも束縛されないことは、自由とは逆の不安しか与えてくれない。個人とは、悲しく抒情する存在にすぎない。
伊藤静雄「水中花」
291:柳田國男が描いた氏神信仰の世界
先祖代々の家を継承し、未来の子孫のために引き継ぐ役割を果たすことが、自己の存在証明であり、良い人生の判断基準。それが自己が歴史という時間に充たされているという意味。
