2025年06月21日
petit diable(魅力的な小悪魔)
「半世紀ぶりに新訳が出た」というので読んでみる。と言いつつ、旧訳も読んだことがないので、要するに、初めて読む。言わずと知れた名著で「20世紀少女小説の聖典」と言われている。
いかにも、フランスっぽい。17歳の高校生は5歳で母親を亡くし、その後10年間カトリック教会の寄宿舎学校に入れられていた。2年前にそこを卒業しパリで父親と暮らし始める。父親は愛人をとっかえひっかえ家に連れ込んでいるが、「自分が父親の一番のお気に入り」という実感があり、そんな生活に満足している。
そんな生活が、南仏でのバカンスできしみ始める。
悲しみよ さようなら悲しみよ こんにちは・・・・・ポール・エリュアール「今ここにある生」
こんにちは9:あの夏、わたしは17歳で、文句なく幸せだった。ほかには父と、その愛人のエルザがいた。
17:愛における貞操や厳粛さや誓いといった概念を、父は一貫して否定していた。
135:車のなかほど、一緒にいる人に友情を感じる場所はない。ちょっぴり窮屈にすわって、スピードの快感、風の快感にともに身をゆだねる。もしかすると死にも、ともに。
174:わたしはもうじきここを去り、この別荘に、この男の子に、この夏に、別れを告げるのだ。