2025年04月20日

「生命の讃歌」川端康成

谷崎潤一郎・川端康成 (中公文庫 み 9-16)
三島 由紀夫
中央公論新社
2020-05-21



作家だから当たり前かもしれないが、三島由紀夫の語彙がすごい。
114:生命の讃歌
全集にまとめて俄かに輝きを失う作家と、いよいよ輝きを増す作家とがあるが、川端康成は云うまでもなく後者の代表格の作家である。全集の第一巻から最終巻まで、清冽な一筋の流れ、あの「イタリアの歌」のような、明るくて哀切な一つの歌声が貫いている。個々の作品には暗さがひそんでいても、全集を通読する読者は、川端文学の貴重音が畢竟ひたむきな生命の讃歌であることを知るであろう。
「清冽」はなんとなくわかっても、「畢竟」は分からなかった。いや、これを普通に読みこなしていた当時の読者がすごいのか。
161:川端さんにとっての生命とは、生命イコール官能
「この間、川端さんの少女小説を沢山、まとめて一どきに読んだが、すごいね。すごくエロチックなんだ。川端さんの純文学の小説より、もっと生なエロティシズムなんだ。ああいうものを子供に読ませていいのかね」(中村真一郎)
正直、川端作品を教科書以外で読んだことがなかったので、『眠れる美女』をこの後読んでみた。
229:川端康成「眠れる美女」解説
この作品を文句なしに傑作と呼んでいる人は、私の他には、私の知る限り一人いる。それはエドワード・サイデンスティッカー氏である。およそ氏と私の文学観は夏と冬ほど違っているのに、会うたびにいつもこの作品の話が出て、この作品の話になると、それまで喧嘩をしていたわれわれが握手をすることになる。

267:長寿の芸術の花を〜川端氏の受賞によせて
川端氏は日本文学のもっともあえかな、もっとも幽玄な伝統を受け継ぎつつ、一方つねにこの危うい近代化をいそいできた国の精神の突端を歩いて来られた。その白刃渡りのような緊迫した精神史は、いつもなよやかな繊細な文体に包まれ、氏の近代の絶望は、かならず古典的な美の静謐に溶かし込まれていた。ノーベル文学賞が、氏の完璧な作品の制作と、その内面の葛藤との、文学者としてのもっとも真摯な戦いに与えられたことの意義はまことに大きい。それはいひとり川端氏のみでなく、千数百年にわたる日本の文学伝統と、同時に、日本の近代文学者の苦闘に対して与えられたものと感じられるからである。

274:北欧の町と海と〜「永遠の旅人」川端さん
さきごろ川端氏のノーベル文学賞演説を読んで深く心を打たれた。外国人に分からせようなどという配慮が一切なく、じかに本物を、日本人のこころのもっとも純粋微妙なものを、ぶつけようとされた気魄に感動した。これでなくてはいけない。あとは文化交流屋の仕事である。文学者は、素裸の、純粋なものをぶつければよいのである。以前、外国旅行中世話になった人への礼状を、川端氏が、すべて巻紙に墨で和文でしたため、もらった人は、みんなドナルド・キーン氏のところへ判読と翻訳をたのみに殺到し、キーン氏が困り切ったという噂を、いかにも川端氏らしい逸話だと聞いたことがあるが、すべてこの精神である。




shikoku88 at 18:10│Comments(0) | その他

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