2025年01月11日
2004柴田錬三郎賞
2004柴田錬三郎賞受賞作品。少女監禁で思い出すのは、2000年に発覚した柏崎での事件。
解説:斎藤環(精神科医)本作の加害者ケンジは、ひきこもりではないが、孤児として施設で育ち、言語能力が低いという設定になっている。監禁期間も柏崎事件が9年に対して、本作では1年とかなり違う。事件に触発されたが、本作のテーマは加害者と被害者との関係。
私が専門とする「ひきこもり」問題を一挙に全国区にした特筆すべき事件。犯人の佐藤宣行は中学以来37歳で逮捕されるまで、20年以上もひきこもり生活を送っていた。佐藤は誘拐してきた9歳の少女を9年もの間、自室に監禁していたが、たまたま佐藤の家庭内暴力が激しくなって警察沙汰となり、これをきっかけに少女は救出された。
私は読んでないのだが、本作の構造は、谷崎潤一郎の晩年の傑作『鍵』によく似ているという(佐藤環)。桐野夏生自身、「最も好きな小説」として本書を挙げているそうだ(「婚礼を描く谷崎」『文豪ナビ 谷崎潤一郎』)。
95:この事件で得た私の屈辱は年を経るごとに分厚くなって角質化し、今は鱗状になって、変わらず私を守っているのである。
113:現在、私が思い出しているのは、母や父が変わったのでなく、監禁生活を経た私が劇的に変化したのだ、ということである。両親は変貌した娘に戸惑い、どう接していいのかわからなかったのだ。
120:私の加害者にして理解者。私をこのような運命に落としたのに、私を救うことのできる唯一の人間。私とケンジの関係はこうしてねじくれ、事件が終わってもメビウスの帯の如く、終わりのない関係になったのだった。
226:理不尽な目に遭った子供は、必ずは何かで精神の欠落や心の傷を補おうとするところから始める。だから、欠落はむしろ素晴らしいことなのだ。でなければ、生き残って大人になることは不可能です。
