2024年06月08日

元祖・梁山泊

イラク水滸伝 (文春e-book)
高野 秀行
文藝春秋
2023-07-26



ティグリス・ユーフラテス川と言えば世界最古のメソポタミア文明。そこには「元祖・梁山泊」とも言える湿地帯があったのだという(はじめに)。

ティグリス川とユーフラテス川の合流地点付近にはかつて最大で日本の四国を上まわったこともある面積の「湿地帯」が存在し、30〜40万人もの水の民が暮らしている。アラビア語を話すアラブ人でありつつ、生活スタイルや文化がまるで異なる。

「梁山泊」といえば、中国の伝奇小説『水滸伝』に登場する黄河の氾濫で形成された内陸低地。腐敗と悪政がはびこる宋代に、「官憲が近づけない湿地帯の中に次々に集まり、山賊的な行為をはたらいたり政府軍と戦ったりする」。

世界史上には、このようなレジスタンス的な、あるいはアナーキー的な湿地帯がいくつも存在する。水滸伝自体、山東省の湿地帯に実在した盗賊集団をモデルにしているというし、他にも、ベトナム戦争時のメコンデルタ、イタリアのベニス、ルーマニアのドナウデルタなどがある。日本では、濃尾平野を流れる木曽川、長良川、揖斐川のデルタ地帯に、かつては権力から独立した人々が住んでいた。

近代になってそんな地帯は少なくなったが、イラクでは1970年代までこうした状況が続いたのだという。反フセイン勢力が湿地帯に逃げ込んで抵抗したため、フセインは堰を築いて湿地帯に流れ込む水を止めた。フセイン政権が崩壊した後、住民が堰を壊して水が再び流れ込むようになり、湿地帯は半分くらい復元したという。

それが、アフワールで、「イラク南部の三つの考古学遺跡と四つの湿地帯からなる地域」だ。都市遺跡には、ウルク、ウル、エリドゥある。ここで、BC4000~3000にシュメール文明が栄えた。そこが今どのような状態にあるのか。そこに住む人々はどのような暮らしをしているのかを見に行くという話。

現在のイラクは、「断層国家」であるという。英米軍が侵攻するまでは「独裁者サダム・フセインが巧妙にまとめていたが、2003年フセイン政権が崩壊後、中央政府の力が衰えたいっぽうで武器が拡散し、武力した勢力が割拠」している状態にある。当然、治安が悪いので、一般旅行者は行かないし、政府関係者や国際機関職員は、首都バグダッドの厳重に警備された一角に住んでおり、原則そこから出ないから、地方のことはまるで分らない。
アメリカ侵攻
深刻な人権侵害。フセイン政権の軍隊を安易に解体し元軍人と武器が大量に民間へ流出。警察と官僚の多くを解雇し、行政や治安維持が機能不全。職を失った人たち(主にスンニー派)は反米武力闘争に入り、新たに政権を奪取したシーア派と激しく抗争。

山田隊長(山田高司)「世界の川を全て旅する」
東京農大探検部OB。ナチュラリスト・林業専門家・環境活動家。
日本の川のほとんどを源流近くから河口までカヌーかゴムボートで下る。
南米オリノコ、アマゾン、ラプラタの三大河川をつなげて縦断。
長江源流をゴムボートで下り、アフリカでは5年以上かけて、ニジェール川、コンゴ川、セネガル川を旅する。





shikoku88 at 21:32コメント(0) |  | 旅行 

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