2022年11月05日

坂バカ志賀直哉

大東京ぐるぐる自転車 (ちくま文庫)
礼, 伊藤
筑摩書房
2014-10-08



サイクリストの間で、坂を上るのが好きな人を「坂バカ」と呼ぶ。人力なので当然苦しいのだが、その分、上り切った時の達成感、征服感も高い。

本書には、戦前の自転車がまだ一般的でなかった頃のパイオニア達が所々で紹介されている。伊藤先生が文学者なので、作家や詩人が多い。ここで紹介されている志賀直哉には驚いた。

197:志賀直哉『自転車』(昭和26年11月)
「私は13のときから56年の間、殆ど自転車気違いといってもいい程によく自転車を乗り回していた。学校への往復は素より、友達を訪ねるにも、買い物に行くにも、いつも自転車に乗って行かない事はなかった」
「横浜往復の遠乗りは数えきれない程にした。遠乗りとも思っていなかつた」
戦後、69歳の時に書いているのだが、13歳の時に最初に買ってもらった自転車が米国製Dayton。160円したというが、これは現在価値なら160万〜320万円になる。自転車の国産化はまだ進んでおらず、主流は輸入品。当時の自転車は高値の花だったのだ。実家は裕福であったに違いない。

これで都内の劇坂を次々と制覇した志賀直哉は、曲乗りに挑戦していく。今で言えば、BMXフリースタイルと言ったところ。『暗夜行路』『城崎にて』の志賀直哉のイメージとどうも合わない。ロードバイクに乗る大学教授がnoteにさらに詳しく書いているので、興味ある方はこちらをどうぞ。

128:投げ込み寺
「投げ込みというのは、大きな穴を掘って、乞食の死んだのや行き倒れなど、哀れな無縁の仏の足に札を附けて投げ込んだのである。土を掛けて埋めてしまったのではなく、深い穴の中へ上から次々と放り込んで、ただ仮の屋根のような物で蔽ってあったのだという」(素白)




shikoku88 at 18:16│Comments(0) | 自転車

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