2022年08月05日
アステカ王国
第165回直木賞、第34回山本周五郎賞のW受賞作品。古代アステカ文明とつながる現代。メキシコ、ジャカルタ(インドネシア)、そして川崎(日本)。
話はメキシコの麻薬カルテルから始まる。国境の北側に世界一豊かで、かつ世界最大の麻薬消費市場を抱えたメキシコは、長年、麻薬の供給元だった。自国だけでなく、南米中の麻薬がメキシコを通過して米国に持ち込まれる。
貧しい国の巨大ビジネスだから、業界内での競合も激しい。元々非合法のビジネスだから、競合はイコール戦争となる。カルテル同士の抗争だけでなく、浄化に乗り出した政治家も警察も一家もろとも殺され、死体が晒される。
日本と比べれば、67倍。確か、欧州平均が日本の倍くらいで、米国はさらにその倍。中南米の危険さが際立っている。人口10万人当たりの殺人発生件数は18.91件で、世界第22位だ。1位は中米ホンジュラスの84.29件、2位はベネズエラの53.61件。それらに比べれば、まだ少ない。以下、米領ヴァージン諸島、中米のベリーズ、ジャマイカ、エルサルバドルと続き、すべてが中南米カリブ圏だ。(中略)ちなみに日本は0・28人で211位。大国では最も殺人が少ない。(Wedge)
98:アステカ王国
神官たちは心臓をえぐり取った死体を、下へと突き落とした。神に食べられ、胸に穴の空いた死体は、長い石段を転がり落ち、待ち受ける係が首を切り落とした。首も供え物だった。首なしの死体を囲む人々が、腕と足を切り落とした。神は心臓を食べるが、人間に食べることが許された部位は腕と足のみだった。アステカの厳格な戒律にしたがって、人々はいけにえの腕と足を火であぶって食べた。
130:風の笛(エエカチチトリ)
16世紀の征服者を震え上がらせたアステカの笛、これほどまでにぞっとする音を出す楽器は、おそらくこの世に二つとなかった。征服に同行するスペイン人修道士にも<死の笛>として忌み嫌われた。
137:粉(エル・ボルボ)
拉致した人間を生かしたまま、液体窒素で手足を凍らせて、鋼鉄のハンマーで打ち砕く。犠牲者は粉々にされる自分の手足を、自分の目で見ているように強要される。

