2022年06月02日

魚醬と穀醬

魚醤とナレズシの研究 石毛直道、ケネス・ラドル1990

魚醤研究の名著だが、絶版になっていて、Amazonでの中古出品も無し。

醬は「肉の酒」という意味で、肉や魚から作った「醤」のほうが、穀物から作る「穀醬」より歴史は古い。東アジアでは、製造コストが安く、香りのよい醤油が開発されて、肉醬や魚醬は駆逐されていくが、東南アジアでは漁業資源が豊富で、今でも魚醤のほうがよく使われる。

352:醬は肉の酒
古代中国における「醬」とは、もともとは肉や魚を原料とした発酵製品のこと。醬の文字の構成要素に肉・酒。コウジを入れて発酵させるという製造原理は、酒造法に起源。
前漢になるまで穀醬は出現せず、醬といえば、肉醬か魚醤のこと。穀醬には、豉の系列と穀物コウジを使用する系列の二系統。いまのところ中国で穀醬の存在が最初にわかっているのは、豉の系列に属する製品。

まえがき:1980~84年のあいだ、国立民族学博物館で石毛を研究代表者とする共同研究「東アジアの食事文化」がおこなわれ、ラドルはその研究班の一員として参加していた。漁業生態学を専攻するラドルと、食事文化に興味をもつ石毛に共通する研究テーマとして、魚醤をとりあげてみようということになった。

11:魚醤
生の魚介類を主な原料として、塩を加えることによって腐敗を防止しながら保存し、主として原料に含まれる酵素の作用によって筋肉の一部が溶けて構成要素のアミノ酸類に分解することを意図して製造した食品。

動物の死骸を放置しておくと、肉がくさりはてて最後には骨だけになってしまう。そのさいには外界のバクテリアが作用して細胞や組織を分解するばかりではなく、生物の内部からも分解がおこる。たとえ無菌状態で保存しても生物体の分解は進行する。それは、生物が死ぬと体の中にある各種の酵素、とくにタンパク質分解酵素が細胞・組織に作用して無機物に分解してしまうからである。これを自己消化という。

114:庵治町のイカナゴ醤油(香川大学農学部・真部正敏教授)
4〜6月に漁獲されるイカナゴを水洗いし、2〜3石入りの桶に仕込む。桶のなかにイカナゴと塩を交互にいれ、桶の上面を松葉でおおう。落し蓋・重石はしない。イカナゴと塩の量の割合は容量比で1:1、塩分濃度で35〜36度ボーメに調整する。3〜4ヶ月でイカナゴの魚肉・内臓は溶けてしまい、液体化する。これをくみあげて使用する。

181:ナンプラー(タイ)
タイには中国系の住民がおおいが、他の家内工業や商業的活動と同じように、魚醤油・塩辛・小エビ塩辛ペーストを工場生産するさいの業者や魚醤の仲買人のおおくは、中国系住民によって占められている。醤油は中国人の調味料としてタイで製造されるようになったものであるが、現在ではタイ料理にも使われるいっぽう、中国系住民も家庭での日常料理には魚醬油を使うことがおおく、醤油にこだわるのは年寄りの世代だけであるという。

351:魚と大豆の互換性
「畑の肉」とよばれるダイズには、良質の植物性の蛋白質と脂肪が大量にふくまれている。ダイズの蛋白質を構成するアミノ酸のなかで、いちばんおおいのはグルタミン酸である。現在、商品作物としてのダイズの栽培は、アメリカやカナダなどでもおこなわれ、日本にも輸入されているが、伝統的にダイズを栽培してきた地域は、東アジア、ヒマラヤ南麓地帯、東南アジアである。


うま味文化圏


shikoku88 at 19:05コメント(0) |  | 食べ物 

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