2022年01月25日

ノーベル賞受賞者の蹉跌

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき
ポール・A・オフィット
日経ナショナルジオグラフィック社
2020-11-19



ノーベル賞受賞者が、人間として信頼できるかどうかはまた別という話。ノーベル賞は研究を評価するのであって、その人の人間性を評価しているわけじゃないから当たり前だが、ノーベル賞学者が言うことを何でもありがたがるのは考え物。

特に、専門外の分野での発言は全く当てにならない。ところが、ノーベル賞の名声を利用して、商売しようという取り巻きも現れて、担ぎ上げられることもしばしば。科学的に否定されたにも拘わらず、一旦広まった俗説は、関係者皆が恩恵を受けているので一向に衰えない。未だにビタミン剤が世界中でありがたく飲まれている。

ノーベル賞を後ろ盾にした米国の化学者が、宣伝文句の定番に「抗酸化」を仲間入りさせた。彼のアドバイスに従った人々は、がんと心臓病のリスクを高めた。さらに、ハワイで突然肝臓移植が必要になったり、米国北東部で女性が男性化するという奇妙な症状が現れたりと、現在にも悪影響を残している。

220:ライナス・ポーリング1901-94
現代のビタミン製造業者が年間数十億ドルを売り上げる商売ができるのは、一人の男のおかげだ。その人物は、ノーベル賞を受賞した科学者で、自分の専門分野とはまったく畑違いの領域で、サプリメントでビタミンをたくさんとれば、健康に長生きできると世間に信じさせた。しかし実際のところは、がんと心臓病のリスクを高めるだけだった。

異なる分野で2つのノーベル賞を受賞した唯一の人物
1954ノーベル化学賞「化学結合とたんぱく質の構造」
1962ノーベル平和賞「核実験禁止条約」への貢献

222:転落の始まり
厳密さに欠ける性格。
1966メガビタミン療法にのめり込む。間違いを指摘する研究結果がどんどん出てきたにもかかわわらず、無視。

227:長い間、優秀で正しい人間として生きてきたため、自分が間違いを犯すなどとは想像もできなかった。本当に間違いを犯してからも、それを認めることができなかった。

230:1994米国国立がん研究所+フィンランド国立公衆衛生研究所
ビタミンを大量に投与されたグループは、肺がんによる死亡率が下がるどころか、高くなる。

232:抗酸化物質を多く含む果物や野菜をたくさん食べる人は、がんや心臓病にかかりにくい
→人工の抗酸化物質を大量に摂取しても同じ結果になる(ポーリング)
酸化は、新しいがん細胞を殺し、血管の詰まりを解消するためにも必要。
大量のビタミンやサプリメントを摂取すると、酸化と抗酸化のバランスが崩れ、がんや心臓病のリスクを高める。

233:キャサリン・プライス『ビタマニア』
リンゴ半分のビタミンCは5.7mgだが、1500mgのビタミンCに匹敵する抗酸化作用。
フィトケミカルがビタミンの効果を高める。

243:カーテンの後ろにいる小男に注意しろ
世間の評価に目をくらまされてはならない。
ポーリングは「オズの魔法使い」効果を頼りに、ビタミンとサプリメントを奇跡の薬として宣伝した。彼はカーテンの後ろにいる男(データ不足という弱点)に世間が気づかず、2つのノーベル賞を獲った自分がとどろかせる声だけを聞いてもらいたいと願っていた。


shikoku88 at 18:54│Comments(0) | 食べ物

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