2021年10月18日
「リクルート汚染」
「未公開株の譲渡は法的に賄賂に当たるか」というもっとも本質的な部分に触れないまま、新聞は「濡れ手で粟」という流行語になった表現で世間の怒りを煽り立てた。
これは重い。カルロス・ゴーンのケースは世論に後押しされてではなく、内部告発がきっかけだったが、リクルート事件では、先に朝日新聞による疑惑報道ありきで、それで世論が盛り上がり、それを背景に立件された。当初は、検察自体が、「これは犯罪に当たらない」と見送り判断していたにも拘わらずだ。
もし、リクルート事件が立件されていなかったら、その後の日本はどう歩んだだろう。日経の森田、蔵相の宮澤、NTTの真藤という政財界の改革派が事件に巻き込まれて全員が辞任した。これによって、バブル経済の頂点で、次の成長産業に移行しようとしていた動きは一気に終息した。
「失われた30年」の始まりだ。
375:特捜部は総務部長の竹原が裏ガネ工作に絡んでいると睨み、執拗に取り調べた。霞が関の中央合同庁舎にある特捜部での聴取は週2回から3回のペース。
379:未公開株の譲渡が犯罪だとは思っていないリクルートは、検察に言われるまま譲渡先リストを作って渡していた。検察はそれをエビデンスとして小出しに新聞にリークし、「疑獄」ストーリーを演出していった。
「未公開株の譲渡は法的に賄賂に当たるか」というもっとも本質的な部分に触れないまま、新聞は「濡れ手で粟」という流行語になった表現で世間の怒りを煽り立てた。
381:リクルート汚染
日経の森田、蔵相の宮澤、NTTの真藤。辞任ドミノが続き、新聞、週刊誌には連日、「リクルート汚染」追及の見出しが躍る。いつしかリクルートそのものが不浄で、かかわりをもつこと自体が反社会的な”穢れ”であるかのような空気が生まれる。違法とか合法とかいう論理ではなく、世間を支配する空気である。
387:江副の拘留は113日間に及んだ。2019年に逮捕された日産自動車元会長、カルロス・ゴーンの拘留期間、108日より長い。ゴーンのときは、有罪と決まったわけでもない人間の自由を長期間奪う捜査手法に対して「人質司法」との批判が噴出した。江副の拘留期間はゴーンより長かったが、当時、疑獄の張本人と決めつけられた江副の「人権」に目を向ける者はいなかった。
395:もし真藤が失脚していなかったら
真藤がリクルート事件で失脚していなかったら、NTTはもっと早い段階で分割され、日本の通信市場に競争の土壌が生まれたかもしれない。そうなれば日本にGAFAが生まれていた可能性もある。
NTTの電話事業は儲からなくなるが、真藤は子飼いの長谷川寿彦、式場英を使ってNTTデータ通信を核とした「データ通信のNTT」を作ろうとしていた。しかし、真藤、長谷川、式場の逮捕でその構想は瓦解した。真藤の側近は振り返る。
「親父(真藤)が逮捕されてからの、電電公社プロパーの手のひら返しは凄まじいものがあった」
399:iモード
真藤が去って蘇ったNTTの官僚組織はiモードの成果を自分たちの手柄にし、外人部隊を追い出しにかかった。松永ら外人部隊の大半は3年でドコモを去り、大星の次の社長になった立川敬二は、ベンチャー気風が漂うドコモに「営業利益率2割」を必達目標とする「計画経済」を持ち込んだ。
公社体質に戻ったドコモの殿様商売が海外で通用するはずもなく、「iモード」は世界に根付かなかった。結局ドコモの海外展開は、1兆5000億円の損失を出して「打ち止め」となる。

