2021年06月26日

香典返し




これも、ずっと続いた日本の伝統かと思っている「香典返し」だが、今のように香典の半分を返す習慣は、最近のことなのだという。例えば、1989年に出版された『岩波仏教事典』では次のように解説されている。

「葬儀や法事で施主はまとまった出費がかかるため、まわりの者はその一部にと香奠を提供するので、仏事が終わり余りが出れば、香奠返しをする。また仏具などを買って菩提寺に寄進する」

つまり、香典は葬儀や法事費用として全額頂いて良いのが原則で、その趣旨から「余ったら」その分をお返しする。あるいは、菩提寺に寄進するということだ。

この長年の風習が変わったのが昭和から平成にかけて。それは、葬儀の場所が自宅から葬祭会館・セレモニーホールに変わったことと関係している。葬祭会館・セレモニーホールで行われるようになると、「香典返し」が葬儀とパッケージになっていて、デフォルトで組み込まれることとなった。

個人的には、自宅でやる方が故人のそれまでの生活が感じられ、より思いをはせることができるので、好きだ。考えてみると、自宅で行なわれた葬儀に出たのは平成10年ごろ香川で行われた大叔父が最後。地方でも、この頃を境に自宅で行うことは激減した。

さらに、最近では、家族や親せきのみで行う「家族葬」が増えているという。そうなると、香典もなければ、香典返しも存在しない。その背景には、死亡年齢の高年齢化で、社会との接点が少なくなったことがある。

ヤマタくん








































132:公共性を失った家
現代において葬儀が行われる場所は、主に葬祭会館、セレモニーホールになってきた。全日本冠婚葬祭互助協会による1万人アンケートによれば、1990年までは、およそ半数が自宅での葬儀だった。それが減り続け、2011年以降では、自宅での葬儀は全体の4.6%に過ぎなくなった。葬祭会館が85.6%で圧倒的多数を占めている。寺で葬儀をしたというのも5%程度と、かなり少ない。

137:戒名料
日本に戒名の制度が生まれたのは、禅宗、とくに曹洞宗において、仏教式の葬儀が開発されたからである。曹洞宗では、雲水の修行を支えるために経済的な基盤の確立が必要になり、密教を取り入れたり、葬儀の開発を行ったりした。
その際、修行中の雲水が亡くなったときのやり方がモデルになった。雲水は、正式な出家とは言えない。そこで、雲水の葬儀では、死者に剃刀を当てて出家したことにし、その上で、戎を授け、戒名を与えた。ここで言う戒名は、出家して僧侶として名乗る名前のことである。

138:浄土真宗と日蓮宗には戒名は存在しない。代わりに、浄土真宗では「法名」と言い、釈○○、女性なら釈尼○○とする。日蓮宗では、日や妙といった字を入れ「法号」と称してきた。ただ、戒名と法名や法号との違いは、一般にはほとんど意識されていない。

139:バブルの時代に流行した戒名
院号の院は建物を意味。本来は、建物を寄進するなど、菩提寺に対して多額の布施をした者に、死後与えられるもの。
バブル経済になる直前に山梨県の山村で調査したとき、院号のついた戒名を授かっている家は、およそ170軒ある檀家のうち、20数軒。1割強。

142:NHK「無縁社会〜無縁死 3万2千人の衝撃」2010
長年音信不通で、家族としての縁もなくなっているということで、引き取りを拒否。自治体が遺体を火葬に(直葬)。

144:家族葬が当たり前
公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」H29
年間42万6000を超える取扱件数
一般葬(50人以上の参列者) 63%
家族葬(50人未満)     28%
直葬            5.5%
通夜を行わない一日葬    2.8%
社葬            0.3%

150:個人の死は、なくなる年齢が高くなればなるほど、プライベートな出来事となり、社会性を失っていく。家族以外に参列者のいない葬儀には、香典もなければ、香典返しも存在しない。



shikoku88 at 21:38│Comments(0) | イベント

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