2021年05月02日

美しい女たちと、粋な男たち

ぼくは勉強ができない (文春文庫)
山田詠美
文藝春秋
2015-06-05



初出は「新潮」1991年5月号というから、今からちょうど30年前。そのためか、「近頃の高校生は、ファミコンのソフトを買うために避妊具の節約をする程、経済概念を発達させている」とかいう話も出てくる(p115)。

主人公の時田秀美は男子高校生。社会人の彼女がいて、「ぼくは日曜日に、祖父と釣りに行くべきか、母の買い物につき合うか、恋人の桃子さんとセックスをすべきかの楽しい選択に心を悩ませながら放課後を待ちわびた」(p24)といううらやましい身分だ(笑)。

家は母子家庭で・・・というと「可哀そう」という固定概念があるが、本人も母親も、まったくそういう感じではない。「うちは貧乏」だというが、母親は大手出版社の編集者で、5万8千円のハイヒールを履き、毎週のようにデートをするのを優先しているだけで、必要にして十分な稼ぎはある。

そんな母親と、これまた、老いてますます盛んな祖父に育てられた秀美は、「女にもてないという事実のまえには、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。変な顔をしたりっぱな人物に、でも、きみは女にもてないじゃないか、と呟くのは痛快なことに違いない」(p27)という価値観を持っている。

今なら、いや30年前でもだろうが、そんなこと言ったら「容姿で差別するなんて」と非難されそうだ。しかし、小賢しいことを言っても、そうした美意識は否定できないじゃないか、Politically Correct(政治的に正しい)は建前だろう、という本が30年経っても人気というのもうなずける。

しかし、本書が「学校の課題図書になることもあった」(著者まえがき)というのにはちょっとびっくり。秀美君、普通にバーで酒飲んで、彼女と寝てますからね。それこそ、30年前のほうが、許す雰囲気が社会にあったと思うけど・・・。今でも学校の課題図書になっているのか聞いてみたい。



shikoku88 at 17:57│Comments(0) | 教育

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