2020年10月17日
最強の栄養療法
同じ著者で4冊目になるが、新書も読んでみる。当然ながら内容はほぼ同一。ただ、新書版は、オーソモレキュラー療法が研究された歴史や、それにまつわる医学会のエピソードも含まれ、そちらの方が興味深かった。
オーソモレキュラー療法は、アメリカ人生化学者で医師のホッファー(Abram Hoffer 1917-2009)と、カナダ人化学者のポーリング(Linus Carl Pauling 1901-1994)によって開発された。
2人の研究は臨床試験の裏付けがあったにもかかわらず、学会から無視され、誹謗中傷された。それまでの定説と全く違っていたからだ。1950年代に開発され、現在も使われている統合失調症の薬剤(症状は抑えられるが、強い副作用)を使わずに、食事療法で治るというのでは面目が失われる。
過去にあった似た例として、大航海時代に船員の最大の死因であった壊血病が挙げられている。この時も、イギリス海軍医であったジェームズ・リンドは、レモンやオレンジを食べることで壊血病の患者が元気になることに気づき、実際に遠洋航海にレモンやライムを積み込み、船員に食べさせたところ、壊血病が撃滅した。ところが、その報告は、「一介の海軍医からの提案」ということで、王室に近い海軍本部医師団から無視される。
結局、リンドの案が採用されたのは50年もあとのことで、それは、地位も階級も高かったギルバート・ブレーンがリンド説を採用したからだった。
日本での似た例として、明治時代の「脚気」がある。ビタミンB1不足で末梢神経が侵される病気だが、将兵の贅沢の象徴として白米を採用していた明治時代の日本軍でもっとも多い病気だった。海軍の遠洋航海では半数が発症し、5%が死亡したといわれている。
海軍の高木軍医部長は、イギリスには脚気が存在しないことや、海外寄港中には発症しないことから、航海中の食事に原因があると推測した。試しに、同様日程で遠洋航海に出た2隻の一方をそれまで通りの白米、もう一隻を麦飯に変えたところ、麦飯を食べた船では一人も脚気にならなかった。
それで海軍は麦飯を導入することにしたのだが、これを認めず、明治時代を通して10万人以上の脚気犠牲者を出したのが陸軍。それは、陸軍医務局長の森鴎外(のちに軍医総監)が「細菌説」を取り、白米を出し続けたからだ。これには、森鴎外が帝国大学医学部出身で、同学部も「細菌説」を取っていたことが影響している。
医学こそ科学を徹底してほしいが、誰もが関心を持つ分野で巨額の資金も動くため、権威や権力とも密接。証明が困難で、事実が捻じ曲げられることも多い。
はじめに:病院に行ったり薬に頼ったりする前に、食べ物に注意したり、不足している栄養素を追加するなどして対応できることがたくさんある。46:天才化学者ポーリングによる理論の確立Linus Carl Pauling 1901-19941954ノーベル化学賞(化学結合の本質)1962ノーベル平和賞(核実験への反対)1968"Orthomolecular psychiatry"論文発表@Science48:栄養学・医学の新説は常に迫害を受けるホッファーやポーリングに限らず、常に権威との戦い。1747イギリス海軍医であったジェームズ・リンドは、レモンやオレンジを食べることで壊血病の患者が元気になることに気づく。←王室に近い本部医師団は無視50年後、ギルバート・ブレーンがリンドの説を採用→航海に柑橘類を載せる→英海軍の壊血病激減(ブレーンは地位も階級も高く、本部医師団が無視できなかった)
