2020年10月13日
知的生産の「シンプルな本質」
「知的生産」というと、梅棹忠夫の名著『知的生産の技術』から、本blogでも以前紹介した野口悠紀雄の『超整理法』シリーズなど、時代ごとにベストセラーの出る永遠のテーマと言えるだろう。そんな中でも、本書は過去10年に出版された中ではベストと言える。
元々は東大大学院で生物化学を学んでいた研究者。博士課程に行くのを止めてマッキンゼーで経営コンサルタントとして順調に成果を上げるも、退職してYale大学へ留学、4年でPhD(脳神経科学)。ポスドクを経てマッキンゼーに復職。2008年ヤフージャパン入社、2012年CSO。2016年からは慶應SFCで教え、現在は環境情報学部教授(ヤフーと兼務)という、絵に描いたように優秀な方。
さて、本書のテーマ、イシューとは何か?それは、「根本に関わる未決着の問題」ということになる。別の言い方をすれば、「これを解けばスゴイ」と皆が言ってくれる問題。逆に言えば、素晴らしい解を出しても、それがそもそもイシューでなければ、それは「バリューのある仕事」にはならない。
会社で、上司に言われるがままに、あるいは職場のルーティンとして仕事に取り組んでいるが、果たしてそれはバリューにつながる「イシュー」なのかという話である。これを間違えると、仕事は徒労に終わり、会社としては業績に結び付かない。
イシューを見極め、解の質を高めるための具体策が書かれている。

はじめに:悩まない、悩んでいるヒマがあれば考える悩む=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること考える=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること25:バリューのある仕事イシュー度x解の質issue・二つ以上の集団の間で決着のついていない問題・根本にかかわる、もしくは白黒がはっきりしていない問題47:相談する相手を持つ仕事や研究の経験が浅い段階では、イシューの見極めを一人でやることは難しい。・実際にインパクトがあるか・説得力ある形で検証できるか・想定する受け手にそれを伝えられるか「知恵袋的な人」をもてるかどうかが、顕著な差を生む。51:何はともあれ「言葉」にする人間は言葉にしない限り概念をまとめることができない。「絵」や「図」はイメージをつかむためには有用だが、概念をきっちりと定義するのは言葉にしかできない。77:一次情報に触れる数日間は集中的に一次情報に触れる。これが実際に起こっていること、本当のことに対する肌感覚を与え、明確な仮説を立てるための強い指針を与えてくれる。84:集め過ぎない・知り過ぎないある量を超すと急に生み出される知恵が減り、もっとも大切な「自分ならではの視点」がゼロに近づいていく。「知識」の増大は、必ずしも「知恵」の増大にはつながらない。196:いくつもの手法をもつ米国大学院のPh.Dプログラムでは、3か所程度の異なるラボを回ることを必須条件にしていることが多い。最初から一つの研究室に所属させる日本の大学院とは対照的だが、これも「自分の技を複数持つための方法」だといえる。直接的な経験がある分野を複数持ち、直接話せる人がいると、いざという時に大きな助けになる。204:デルブリュックの教え(分子生物学で、講演・発表するにあたっての心構え)・聞き手は完全に無知だと思え・聞き手は高度の知性を持つと想定せよ

