2020年10月10日

背高泡立草




一番最近である第162回芥川賞受賞作品(2019年下期)。

福岡に住む母娘が、やはり福岡に住む娘の従姉と、母親の故郷の長崎の島へ実家の納屋の草刈りに出かける。島には90歳近くになるという老母が今でも食料品店を経営している。モデルになった著者の祖母が「晴れ姿ば見せてもろた」と喜んでいるのが微笑ましい。

その話が軸になって物語は展開するが、そこに、そこに昔住んでいた一家の話や、そこになぜか保管されているカヌーにまつわる話など、同じ場所にまつわるサイドストーリーが絡んでくる。

それられの話が相互に絡んで最後に一つの大きなうねりになるのかと思ったが、そこは、日本の純文学。それぞれ、それだけで静かに消えていくのだ。

タイトルの背高泡立草(セイタカアワダチソウ)は、最後に一度出てくるだけ。どうしてこのタイトル?と思いたくもなる。

セイタカアワダチソウは北アメリカ原産の外来植物で、100年以上前に鑑賞用、養蜂の蜜源植物として導入されたらしい。それが広がり、野生で繁殖しだしたのは戦後の話。繁殖力が強く、現在では広く全国に分布し、「侵略的外来種ワースト100」にも入っている。アレロパシーと呼ばれる化学物質を根から分泌し、ススキやヨシなど在来種の発育を妨げる。

ここからは想像だが、外から入ってきて、たくましく日本に定着したセイタカアワダチソウを、昔から交通の要衝で、長崎の島を行きかう人々の物語に重ね合わせたのか。

shikoku88 at 20:50│Comments(0) | その他

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