2020年05月31日
その日のまえに
先月来、「図書館が今ほど必要とされているときはないのに、貸し出しもしないとはどういうことだ
」と憤慨していたら、娘から数十冊本が回ってきた。その中の一冊。著者の重松さんは調べてみたら同じ年の生まれ。ただ、彼は早生まれなので学年は一つ上のようだ。岡山生まれの山口育ちらしい。早稲田大学教育学部卒。生まれも大学も近い。大学時代は同じキャンパスに通っていたことになる。
本書は7つの小作品から成っている。「その日のまえに」と「その日」と「その日のあとで」は連続する話で、いわば本編。「その日」とは、主人公の妻がガンで亡くなる日だ。ほかの4篇は主人公が別の物語なのだが、後で本編と話が絡んでくる。テーマは家族や友達など身近な人の「死」。それにどう対処し、どう受け入れ、どう解釈するのか。
以前にも書いたが、日本人が一般に幼くなっている最大の理由は、「死」を意識しない環境だろう。核家族化と長寿化で、子供の頃に身近な人の死を経験することは稀になった。昔なら、平均寿命50歳として、20歳前後で結婚しているとすれば、10歳の頃に祖父母が亡くなる。長子であれば30歳の頃、子だくさんの下のほうなら20歳で親が亡くなる。文字通り、独り立ちしなくてはならない。それ以外にも、子供の死亡率も今よりはるかに高いから、一緒に育つ兄弟の誰かが亡くなる。小中学校の級友が病気で死ぬ。
その度に、「人間には寿命がある」「自分の命もいずれ尽きる」と思い知らされる。自然と、限られた命で何をすべきか考える。これこそ「大人になる」ということだと思う。
本書の最後のほうで、終末医療に携わる山本師長が言う。
「(死んでいく意味について)考えることが答えなんだと、私は思っています。死んでいく人にとっても、あとにのこされるひとにとっても」
そして、残された主人公の子供たちは母の死を乗り越え、大きく成長するのだ。
