2020年05月15日
幹線道路の抗しがたい魅力(公差=0.0000000001”)
第5章はロールス・ロイスの話し。イギリスの誇りである同社は数奇な運命をたどっている。
技術者のロイスが自動車製造を始めたのは1904年。当時最も自動車産業が盛んだったフランス車を参考にして、独自の改良を加えた。ロイスは根っからの技術者で、自動車の信頼性と耐久性、快適性を高めることに専念した。チェーン駆動ではなくドライブシャフトを導入したのもロイスだという。
初めてフランスの車と張り合える国産車にほれ込んだのが貴族のロールスだった。ロールスはロイス車の独占販売を申し入れ、ロイスはこれを承認する。1906年に合弁会社を作ることになり、開発者はロイスなので、社名はRoyce-Rollsとなるべきであったが、技術者の彼は社名に全くこだわらなかったそうだ。
1906年に発売されたシルバーゴーストがRRの名前を伝説にする。当時としてはどこをとっても世界最高水準の車で、そのほとんどがいまだに走行可能だという。その後も発展を続けたが、第二次世界大戦が始まると航空機用エンジンなど軍需品生産に特化する。有名なのはマーリンエンジンで、スピットファイアはじめ多くの英軍機に搭載され、Battle of Britainの主役となった。第二次世界大戦の最優秀戦闘機と言われるP-51マスタングもアメリカでライセンス生産されたマーリンエンジンを搭載していた。
RRの経営が傾いたのは、戦後のジェットエンジンの開発がきっかけ。1971年に経営破綻し国営化される。73年に自動車部門と航空機エンジン部門が分離され、自動車は民営化されヴィッカーズ傘下となる。98年にはVWに売却されたが、92年からBMWと提携していたため、BMWエンジンを搭載した従来モデル製造を2002年まで続けた。
2003年にVWとBMWの間で合意が成立し、BMWがRRブランド車を、VWがRRの別ブランドであったBentleyを製造することになった。現在RR車を製造するのは、2003年BMWがGoodwoodに新設したRoyce-Rolls Motor Carsで、元祖RRの資産は全てVWに売却されたため、実体はBMWによるRRブランドを冠した新会社となっている。
174:世界にもう少し正義があれば、会社の名前はロイス・ロールスになっていただろう。なんといっても自動車を作ったのはヘンリー・ロイスであって、チャールズ・ロールズはそれを単に(華々しく)販売しただけだったからだ。だが、古今を通じて最も有名なブランドの一つとして知れ渡るにつれ、社名にごくわずかな変更を加えることすら長らく冒瀆行為とされてきた。189:RRシルバーゴースト(1906-1925)この間8000台近くが製造され、そのほとんどがいまだに走行可能である。7L6気筒サイドバルブエンジン(1910〜7.5L)190:ロイス「完璧さは細部に宿る」この車種を他から抜きん出た存在にしているのはその過剰さではなく、耐久性と信頼性、そして清音性とスピードだった。シルバーゴーストではラジエーターからタイヤまで、キャブレターからブレーキに至るまで、完璧さに溢れていた。214:実際は、世界中のフォード工場から次々に吐き出されてくる車のほうが、つまり低コストでたいした複雑さもなく、記憶にもさして残らないフォード車のほうが、精密さがより重要な生命線となっていた。(中略)生産ラインを問題なく稼働させるには、完璧な互換性を持つ部品が無尽蔵に供給される必要があるからだ。

