2020年04月14日
なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか?
第4章は、The Economist経済コラムニストのライアン・アベントによる。著書に『人間の豊かさ:21世紀の雇用とその欠如』がある。
よく言われるパラドックスに、「我々は何十年にもわたってコンピュータに投資してきているのに、なぜ生産性が上がらないのか」というのがある。「第二の波」PCから数えても、デジタル革命が始まって既に50年経つのに、労働生産性の改善はアメリカでも微々たるものだ。日本はさらに悪い。
では、デジタル革命に意味はないのかというと、そうではない。著者は過去の「まったく新しい大きな可能性をもったテクノロジーが出てきた時、われわれがその活用方法を見いだすまでには時間がかかる」という。そして、それは数十年単位になる。シカゴ大学のチャド・シバーソンは、電化時代の労働生産性の伸びと、これまでのIT時代のそれを比較したところ、両者のパターンは驚くほど似通っていた(p85)。
政府のデジタル革命が、エストニアやシンガポール、スウェーデンなどで早いのは偶然ではない。どこも小国で(人口1000万人以下)、国家としての意思決定が速いのと、それが徹底できるから。例外的に大国でありながら早いのは中国で、これは政治体制として国民のコンセンサスを必要としないからであるのは言うまでもない。

83:電気も自動車も成長率を押し上げるには長い時間がかかったまったく新しい大きな可能性をもったテクノロジーが出てきた時、われわれがその活用方法を見いだすまでには時間がかかる。91:働く場所や労働時間を自由に選べるような仕組みを構築する社会的適応には、先例がある。産業革命が始まったばかりの頃、工場の雇用の伸びは社会の適応能力を超えてしまった。労働者は都市部のスラムに押し寄せたが、そこにはきれいな水、まっとうな住居やごみ処理などの生活インフラが整っていなかった。悲惨な生活環境によって数百万の労働者が命を落とした。労働者の組合化、社会不安、政治改革、そしてときには革命によって長い年月をかけて成長の恩恵を幅広く分配するための社会制度が整っていった。92:新たなデジタル・テクノロジーが19世紀と20世紀の社会制度という壁にぶつかっていた。新たな改革や投資が行われなければ、各国は大量の不完全雇用者やスキルの低い労働者を抱えたままになる。そうした労働者は賃金を押し下げ、優れたロボットや思考能力を持つコンピュータの普及の妨げとなる。

