2019年12月28日
楊令伝読本
『水滸伝』『楊令伝』『岳飛伝』のシリーズに加えて、こうした「解説書」まで出るのが、一大巨編である北方水滸伝の凄いところ。本書は『楊令伝』全15巻完結記念で出た公式読本。先日読了したので、読んでみる。
「北方水滸伝は、旧体制に縛られた社会と精神の解放がテーマ」になっている(池上冬樹「青春と読書」2008年5月号)。作者が対談で語っているように、「キューバ革命がもっていた変革へのロマンチシズム」を移し替えた。
中国の歴史を振り返れば、小国に分裂した「群雄割拠」の時代と、統一された「帝国」の時代が繰り返されている。共産党が政権をとり中華人民共和国が建国されてから70年。この政治体制はいつまで続くのか。おりしも、中国のチベット族への弾圧は続いている。
アジアを見渡すスケール 岡崎由美(早稲田大学中国文学教授)13:明代に成立した中国長編小説『水滸伝』が日本にやって来たのは、江戸の初めごろである。中国語のままでは読めないから、原文に返り点、送り仮名をつけたものや、いわゆる「書き下し分」にしたもの、さらには時代設定や登場人物を日本に置き換えた「翻訳」が出版され、『水滸伝』は江戸時代に大変なブームになった。明治時代になると初めての口語訳が出版され、様々な日本語訳のラッシュとなり、また「翻訳」を離れ、新たに語りなおしたリライトも続々と出版されている。15:たまたま「義」によって集まった英雄好漢が、天界の九天玄女から「替天行道」の天書を授かった宋江のもとで反乱集団にまとまるという原作の世界観に対して、「俺たちの手で腐った世の中を変えたい」という自発的な志を持った男たちの、周到にして果断な世直しの闘いが新たなテーマなのである。「世直し」というより「革命」に近い世界観なのだ。16:中国古典小説の常として、登場人物は物語の中での役割や機能に基づく相互関係によって位置付けられていることがあり、例えば『三国志演義』の劉備、『西遊記』の三蔵法師、『水滸伝』の宋江など、人徳はあるが頼りなさそうな「無能のリーダー」とか、『三国志演義』の張飛、『楊家将』の孟良と焦賛、『説岳』の牛皐、『説唐』の程コウ金、そして『水滸伝』の李逵など「道化的な暴れ者」といったキャラクターの系譜が、個別の作品を超えて見受けられる。
