2019年11月30日
市場主義の限界
7年前の本(文庫版は5年前)。市場主義に限界があるのは明白。サンデル教授は、アメリカの状況をベースに、「市場主義が行き過ぎて、市場経済を持つ状態から、市場社会である状態へ陥った」という。
例として挙げるのが、
・刑務所の独房への格上げ(一晩$82)
・インドの代理母による妊娠代行($6250)
・米国へ移住する権利($500,000)
など。さらには、営利を目的とする学校、病院、刑務所の急増。民間軍事会社への戦争のアウトソーシングなど。
サンデル教授はこれらに原則反対のようだが、中には線引きが難しいものもある。例えば、空港や遊園地などで「お金を払えば、待たなくて済む制度」。最近の空港では、ファーストクラスやビジネスクラスの搭乗者は手荷物検査の専用レーンがあったり、検査待ちの行列の先頭に並ぶことが出来る。これは、「不平等」なのか?
国際線ビジネスクラスではエコノミーの数倍、ファーストクラスなら10倍くらいのお金を払っているのに、手荷物検査待ちで長い列に並ばなければならないとしたら
ビジネス・ファーストを買う人は減るだろう。航空会社にとってビジネス・ファーストは利益率が高いので、ビジネス・ファーストの利用者が減れば、エコノミーを値上げする必要も出て来る。エコノミーの低価格は、ビジネス・ファーストの客が「補助」して成り立っているともいえる。あるいは、テーマパークの優待パス。追加料金を払えば、人気の乗り物やアトラクションに並ばなくても先頭に行ける。運営者にとっては設備投資も追加費用もなしに売上を増やせる。待ち時間がもったいない人は買えばいいし、友達や家族と待ち時間も含めて楽しめばいいという人は買わなければいい。遠くから来ていて、延泊するよりも追加料金を払って効率的に回るほうが安上がりだという人もいるだろう。
個人的には、選ぶか選ばないかの選択肢がある限り、倫理的問題はないと思う。そのそも、サンデル教授の懸念は、「市場社会」となったアメリカ社会への懸念で、それに二回り位遅れて未だに社会主義的「平等」色が色濃い日本には、まだ効率的な市場原理が不足しているのではないか。
*お金で買うべきではないもの●この30年間に社会に起こった決定的な変化は、市場と市場価値が「それらがなじまない生活領域へと拡大した」こと。かつては健康や教育、環境保護など、社会的善の分配には市場を利用しなかったが、今は、当然のように利用されている。●すべてが売り物となる社会での心配・お金の重要性が増し、「不平等」の痛みが一層ひどくなる・生きていくうえで大切なものに値段を付けると、それが「腐敗」してしまうおそれがある。●大切にすべき価値は、人によって異なる従って、お金で買うことを許されるもの、許されないものを決めるには、社会・市民生活の様々な領域を律すべき価値が何かを決める必要がある。●市場の道徳性を巡る問題市場経済(生産活動を統制するための道具)を持つ状態から、市場社会(人の営みのあらゆる側面に市場価値が浸透した生活様式)である状態へ。●遊園地でお金を多く払えば行列の先頭へ行ける「行列の倫理」→「市場の倫理」市場と行列は、物事を分配する異なる方法であり、それぞれ異なる活動に適している。●お金で友人は買えない謝罪や結婚式の挨拶は代行会社で買うことができ、人間関係も壊れない。ただし、お金で買われたそれらは汚され、傷つけられており、質は劣る。
