2019年05月31日

フランスの労働市場

良き社会のための経済学
ジャン・ティロール
日本経済新聞出版社
2018-08-25


第4部「マクロ経済の課題」には、フランスの労働市場の話が出て来る。

フランスの労働市場は日本に似ている点がある。
・正社員(CDI)はまず解雇されない
・流動性が低い
・労使関係満足度が低い

制度的には似ているように思うのだが、現象として違う点もある
・フランスの失業率は高いが、日本は低い
・フランスではいったん正社員を辞めると同じ条件で転職できることは稀なため、嫌でも仕事にしがみつく。日本では、雇用環境が良いので、転職は増えている。

要するに、雇用制度としては、日仏とも「労働者保護」の名目上、硬直的で流動性が低くなっている。正社員の地位は安泰で、本人の成績不振だけでは解雇されない。結果、不満を抱えながらも転職に踏み切れない。しかし、日本では少子化で企業は労働力不足に不安を抱いており、新卒採用に積極的。フランスでは低成長の下、未経験の若年労働者を正社員で雇用することに企業が不安で、若年層の失業率は24%にものぼる。フランスの出生率が先進国では最高水準の2.0(日本は1.4)で若年層の人数が比較的多いのも一因かもしれない。

フランスでは「栄光の30年」と呼ばれる高度成長期(1945-75)以来の労働制度を低成長になっても変えなかった。経済学者をはじめ、専門家は何度か改革案を示していたが、国民がそれを支持しなかったのだ。その後の雇用環境の悪化で、逆に、労働規制は強化され、ますます新規雇用が減る結果になった。

フランスの経済状況は、「その後の40年間にゆっくりだが確実に悪化した」。日本も、「失われた20年」が40年にならないよう、今手を打たないとダメだ。

237:京都議定書の失敗
議定書が採択された時点では、締結国の排出量合計は世界の65%以上
2012年 議定書がカバーするのは15%以下
・アメリカが批准を拒否
・カナダ、ロシア、日本が離脱
・フリーライダー問題(中国)

264:フランスの失業率
2015 10.6%(ドイツの2倍以上)
15-24歳 24%

265:経済活動が活発で雇用機会が存在する地域では、住宅の需給が逼迫
・政府の政策で土地利用が厳格に制限されているため、住宅は慢性的に不足。
・借家人の権利が手厚く保護されているため、借家の供給はいっこうに増えない。
・貸し手市場のため、貸し手が借り手を選別し、高い補償金を要求する。
→雇用不安定な若年層は家を借りられない

266:有期雇用契約(CDD)に補助金
・CDDが無期雇用契約(CDI)に移行するケースは稀。
・新たに創出される雇用の大半がCDD(2013年85%)

269:CDIが特権化
・転職したら同等の契約を結ぶのはむずかしく、しがみつく→労働市場は硬直
・労使関係が敵対的(労使関係の満足度評価で129/139ヵ国)
労働市場の流動性が高ければ、不満を抱く労働者は転職するのが普通だが、フランスでは転職先が容易に見つからないため、どんなに不満でも現在の仕事にとどまる。

270:労働市場改革の必要性
・失業は構造的問題~制度がフランスと似ている南ヨーロッパでも失業率は高い

275:解雇を促すシステム
フランスでは、企業は労働者に解雇手当を払うが、その解雇に伴い現実に発生する失業保険のコストは払わない。反対に、労働者の雇用を維持する企業は、社会保障費を負担し続ける。つまり雇用を維持する企業は、解雇した企業のために失業保険料を払っている。

286:社会的に受け入れられるか
フランスの制度は、いまだにフランス人の大半に支持されている!

293:「栄光の30年」
高度成長期(1945-75)には、新規雇用、それも無期契約による雇用が次々に創出され、財政も健全だったため、さして問題が起きなかった。だがその後の40年間に状況はゆっくりだが確実に悪化した。

333:証券化に潜む危険
住宅債券担保証券(RMBS)の発行体は、その証券がどうなろうと損害を被るわけではないので、ローンの質に注意を払うインセンティブがない。
証券化が容易な住宅ローンの場合、ほぼ同条件の他のローンに比べ、債務不履行率が20%も高い。

shikoku88 at 19:36│Comments(0) | 経済

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