2019年04月21日
ヒトラー暗殺、13分の誤算
ヒトラー暗殺未遂事件というと、ドイツ陸軍将校たちによる「黒いオーケストラ」事件が知られる。その前に、たった一人の民間人による暗殺未遂があったことは知らなかった。それもそのはずで、この事件は、発覚後秘匿され、長年忘れ去られていたようだ。
実行犯はドイツの田舎町に住む36歳の家具職人ゲオルグ・エルザー。共産主義に共感していたが、党員ではない。手先が器用だった彼は、自身で爆弾の時限起動装置を設計。アルバイト先の鉄工所で部品を調達して加工する。ダイナマイトは工事現場から盗み出す。
実行されたのは1939年11月8日で、毎年その日にヒトラーは1923年の同日に起こした「ミュンヘン一揆」を記念して、そのビアホールで演説していた。時限爆弾はヒトラーの演説の後半にセットされていたのだが、悪天候で予定していた飛行機が飛ばなくなったヒトラーは、演説を早く切り上げ列車で移動するため駅に向かった。爆弾が予定通り爆発したのは、その13分後だ。結果、巻き込まれた一般市民8人が死亡している。
エルザーの動機は、当時始まったばかりの第二次世界大戦が拡大して、ドイツが戦場になるのを避けること。既に英仏がドイツに宣戦布告しており、彼は戦争で日常が破壊されるのが嫌だった。
起爆装置は精巧にできており、田舎の家具職人が一人で作れるわけがないと見た親衛隊とゲシュタポは拷問して、執拗に背景を探ろうとする。しかし、エルザーが一人で起爆装置を再現するのを見て、取調官は納得するのだが、ゲシュタポ上層部が納得しない。総統に説明できないというわけっだ。
エルザーは強制収容所に送られ、最後はダッハウで処刑される。大戦終結直前の4月9日だった。戦況の悪化で、解放されたエルザーが占領軍に訴えるとマズいと慌てて処刑したわけだ。