2018年12月14日

アジア・太平洋戦争の現実




外交史や、戦略面。あるいは兵器を語った戦史はたくさん出ているが、「兵士の目線」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追った労作。「異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と『処置』、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏」等々、本書に描かれるのは、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた日本兵たちの現実だ。

310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。「推算」となっているのは、実は厚生労働省が集計していないからだ。いつ戦死したかも把握していなかった日本に対し(いくらでも召集すればいいという発想か?)、アメリカでは月別年別の戦死者数が公表されている。陸海軍省の医務・統計関係部局がデータを作成・公開している。

25:1944年以降の犠牲者が9割
310万人の戦没者の大部分がサイパン島陥落後の絶望的抗戦期の死没者と推定(厚生労働省が集計していない)。唯一年次別の戦死者数を公表している岩手県では、1944年以降の戦死者が87.6%。民間人の戦没者数約80万人の大部分は絶望的抗戦期のもの。

*日本政府、軍部、そして昭和天皇を中心にした宮中グループの戦争終結決意が遅れたため、このような悲劇がもたらされた。

32:餓死者
巨視的に見ると、その約35-40%が直接戦闘によるもので、残りやう65-60%は病没であるように思われる。しかも、病没者のうち純然たる悪疫によるものはその半数以下で、その他の主体は悪疫を伴う餓死であったと思わざるを得ない。(『大東亜戦争陸軍衛生史(比島作戦)』)

制海・制空権の喪失によって、各地で日本軍の補給路が完全に寸断され深刻な食糧不足が発生

前線部隊に無事に到着した軍需品の割合(安着率)
1942 96%
1943 83%
1944 67%
1945 51%

141:日露戦争後に確立した極端な精神主義
銃剣を装着した小銃による突撃を重視する白兵主義。
→近接戦闘用の短機関銃の開発を怠る結果
欧米の軍隊ではWW2における歩兵の標準的装備。

142:米英軍の過小評価
軍事思想の教条化→連合軍の戦力を過小評価
陸軍は対ソ戦を想定して作られている歩兵操典、歩兵射撃教範、作戦要務令などの典範令を対米英戦向きに抜本的に改正する意思を持っていなかった。

170:私的制裁
人間的な感性をそぎ落とされ、その一方で軍隊生活に強い不満を持つ古参兵が、弱者に向けた非合理的な感情の爆発。

202:栄養失調
「栄養失調独特の土色の膚が人並みになったのは早いもので2年、遅い者は5年くらいかかった」(ニューギニア戦線で戦った経理将校 森鉄樹『十誠』第7号)

211:ペリリュー等守備戦
米軍損害:戦死1950 戦傷8516
日本軍:戦死10022


shikoku88 at 22:13コメント(0) |  | 政治 

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