2018年12月18日
日本でのM&A
GS本社に入社して投資銀行業務を始めた服部氏は、その後、東京支社に転勤する。1998年から2003年までMDとして日本におけるM&Aアドバイザリー業務を統括。本書の後半は、日本で手掛けた案件の「戦記」だ。
今は流石に見ることはほとんどなくなったが、MSCB(行使価格変動型転換社債)というのがある。社債の株式への転換価格が株価に連動して変動するので、投資家が損をすることがない。「MSCBは引受証券会社が自動的に儲かる仕組みなので、他の資金調達手段がある会社は絶対に手を出してはいけない」という代物だ。
そのMSCBを、リコール隠しで経営危機に陥った三菱自動車が資金調達に使ったことがある。JP Morganの勧めで2004年7月MSCB1260億円を発行し、これ以外に三菱グループを引受先とした通常の優先株や普通株式を合わせて総額4950億円の資本調達した。大半は三菱グループ内で調達できているのだから、MSCB分も頭を下げて(あるいは発行条件を調整して)調達できたはずだ。
服部氏は、おそらくJP Morganから、「すべてグループ企業におんぶに抱っこでいいんですか?自力で一部でも資金調達しないとグループ内で肩身が狭いでしょう?」といった甘いささやきがあったのではないかと推察している。MSCBを引き受けたJP Morganはそのまま自己保有を続けて、修正価格決定の前に三菱自動車株の空売りを繰り返した。下がった株価でMSCBを普通株に転換して、空売りポジションを解消すればいいので、ノーリスクでぼろ儲けができる。
三菱自動車にも当然、財務の専門家はいたはずだが、株式投資、まして、信用取引のことを理解していた社員がいなかったのだろう。当時まだよく知られてなかったMSCBがもたらす当然の結果を、予想できなかった。
あるいは、かつて、ヤクルト本社やオリンパスの財務担当役員が、証券会社の口車に乗せられて、よく理解しないまま投資して大損害を被ったように、「知ったかぶり」をしたのかもしれない。いずれの事件も、他の取締役が「資金運用のことは分からないから」と担当役員に任せきっていたことで、損失の発覚が遅れ重大な事態になった。
157:日産ディーゼルの実質債務超過・全国の販売子会社等25社を意図的に連結から除外(連結外し)・日産と結託して、日産と日産ディーゼルが50%ずつ出資する日産ディーゼル販売という持ち株会社を設立し、持ち株会社の傘下に182:ダイムラー側で三菱自動車のDD「これまで述べた以外に三菱自動車の品質問題に関して重大な影響のある未開示の事実はありますか」→品質担当役員「特にない」・後で問題が発覚した時、DDの回答に瑕疵があったという追求ができた・DDの最後に”Catch all"の質問をしておくことは非常に重要185:自殺転換社債三菱自動車はその後、JP Morganの勧めで2004年7月MSCB(行使価格変動型転換社債)1260億円を発行。これ以外に三菱グループを引受先とした通常の優先株や普通株式を合わせて総額4950億円の資本調達。・JP Morganの空売りにより株価の暴落を招くなど、経営は迷走・MSCBは引受証券会社が自動的に儲かる仕組みなので、他の資金調達手段がある会社は絶対に手を出してはいけない・転換価格が株価に連動して変動。特に三菱自動車が発行したMSCBはラチェット型で、転換価格は下方修正しかされない。

