2018年12月04日
第1章 リリス ― 願望の統合失調症
リリスというのは、聖書に出てくる「イブの先駆者」。「アダムの肋骨からではなく、アダムと同じ物質から作られたリリスは、アダムに隷属もせず、アダムに従順でもなく」神から罰を与えられる。それが自分の産んだ子を自分が食べるというもので、これが際限なく続く。
「リリスは神話の世界の、じつに魅力的な人物だ。輝いていながら同時に暗く、生と死の両方を象徴する存在。人間的であり、崇高でもあるのに、卑俗な性質も持ち、原始的でもある。経済的な観点から解釈すると、リリスは永遠の飢餓と永遠の消費を ― さらにいえば、己自身の生産物の永遠の消費を象徴している」
映画「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシを思い出す。誰にも相手にされず寂しくしていたカオナシは、千にやさしくされたことで千に付きまとうようになる。砂金を出して人々の歓心を得、暴飲暴食、ついには従業員まで食べてしまうのだが、これは精神の不安定さからくる摂食障害の一種だろう。
宮崎監督も、現代社会の欲望の自己増殖を描きたかったのか
映画「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシを思い出す。誰にも相手にされず寂しくしていたカオナシは、千にやさしくされたことで千に付きまとうようになる。砂金を出して人々の歓心を得、暴飲暴食、ついには従業員まで食べてしまうのだが、これは精神の不安定さからくる摂食障害の一種だろう。
宮崎監督も、現代社会の欲望の自己増殖を描きたかったのか

32:ヘブライ流の聖書解釈リリスは、神の手によるまったくの失敗作。イブの先駆者でもあるリリスは、イブとは異なる特質をもちあわせていた。アダムの肋骨からではなく、アダムと同じ物質から作られたリリスは、アダムに隷属もせず、アダムに従順でもなく、後で説明するようにアダムに服従もしなかった。いっぽうのアダムは蛇のいいなりにすらなるほど、従順な性格だった。40:マルクスが資本主義について強く批判した、労働者と労働生産物との乖離マルクスによればそれは、資本の不平等な分配が原因で起こる。だが、生産物との乖離という感覚はじつは、個人の財産という概念が生まれるずっと前から存在していた。神ですら自分が作ったものとの乖離を感じていた。43:おまえが作り出しものを、すべて食べろ私たちの時代の原則は、飢えた人にではなく満腹の人に食べ物をやるというものだ。飢えた人に食べ物を与えて幸福にするのは簡単だが、満腹の人にさらに食べさせるという問題はどんどん巨大化しつつあり、その克服のために新しい心理学の分野が必要なまでになった。広告宣伝、販売、マーケティングなどがそれだ。広告宣伝が行っているのは、存在もしない空腹をリビドーを刺激することで呼び覚ましているのと同じだ。53:ここは天国か、それとも地獄かリリスはアダムから抑圧を感じ、それに従って行動した。そしてその結果、自身の「エス」の封印を失った。それによって彼女は再生と死の、そして性と暴力の象徴に変容した。リリスは自身の原初の飢えを、自分の子を食べることによって満たす。リリスと同じく私たち人間は、こうした(抑圧の)シンボリズムがどのように自身の頭の中に捕らえられたかは知らず、しかしそれによって行動を左右されている。

