2018年08月31日

新貿易立国論

新貿易立国論 (文春新書)
大泉 啓一郎
文藝春秋
2018-05-18


3ヵ月前に出たばかりの新書なのだが、執筆には構想から5年かかったという。著者は日本総合研究所の上席主任研究員ということで、ビジネス書によくある思いだけで裏付けのない話や、逆に、実務を知らない学者による理論だけでもない。私も、20年前から、「開国以来の殖産興業時代、戦後の高度成長時代に続いて、第三の輸出振興が必要」と言ってきたので、納得。

輸出というと、「貿易戦争」とまで言われた1980年代前半のイメージが強いが、実は、第二次世界大戦直前には、わが国の輸出は国内総生産の4割近くを占めていて、国の輸出依存度では戦前の方が圧倒的に高かった。それだけ、国内が貧しく、消費が弱かったことの証左でもあるので、これ自体が悪いわけではない。

しかし、日本が輸出に占める世界シェアは90年代半ば以降急速に低下しており(2000年7.4% 2010年4.0%)、シェアだけでなく金額も減少傾向にあるとなると心配になる。その主な理由は、円高で、日本最大の輸出産業である自動車や電器メーカーが海外生産にシフトしたからである。それは仕方のないことなのだが、これに代わる輸出産業が日本には出てきていない。海外を見れば、アメリカではIT産業などより高付加価値な産業に構造転換が起こっている。ドイツでは、日本同様自動車の海外生産が増えたものの、未だに輸出比率は高い。特に高級車について「ドイツ製」を顧客が望み、相応の対価を払うからであろう。そのどちらでもない日本は、もはや貿易大国ではなくなっている。

著者が勧めるのは、「世界を見渡せる場所」に行ってみること。日本企業の多くは、ASEANを含めて新興国・途上国の実力を過小評価しているという。そうならないためには、シンガポールやバンコクに行って仕事をしたほうがいい。

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shikoku88 at 19:32│Comments(0) | 経済

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