2018年06月26日

親密なる人類史

遺伝子‐親密なる人類史‐ 上
シッダールタ ムカジー
早川書房

2018-02-06


「世界を根本から揺るがすような3つの科学的概念が20世紀を3等分した。原子と、バイトと、遺伝子だ」(p24)

筆者はインド出身で、がん研究の医師。Stanford(生物学)→Oxford(Rose奨学生で免疫学専攻)→Harvard Medical Schoolというから、超優秀なのだろう。おまけに、デビュー作『がん・4000年の歴史』ではピュリッツァー賞を受賞した。しかし、叔父二人と従兄一人は精神疾患で、「遺伝や家族について考えなかった日は1日もない」という。

著者の一族は東ベンガル(今のバングラデシュ)の出身。1946年イギリスからの独立の際に、旧植民地一国としての独立を目指したガンジーの願いは叶わず、ヒンドゥー教徒が主体のインドとイスラム教徒が主体のパキスタンに分かれて独立することになった。インドの東と西では、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が長年混在して暮らしてきたが、分離のために、互いに先祖代々暮らしてきた土地を捨てて、ヒンドゥー教徒はインドに、イスラム教徒はパキスタンに大移動を強いられた。この混乱が、「カルカッタ虐殺」をはじめとする宗教対立につながる。筆者の父と祖母は、叔父たちの精神疾患がこの混乱によって悪化したと信じており、原因ですらないかと思っていたという。

上下巻それぞれ400ページを超える大作。3回に分けて紹介したい。

プロローグ
14:少なくとも2世代にわたって、狂気はムカジーの家系の中に存在しており、モニの診断を受け入れたくない父の気持ちの一部には、同じ病の種子が、まるで有毒な廃棄物のように彼自身の中にも埋められているのではないかという恐ろしい認識があった。

18:カルカッタ虐殺
その年(1946)の8月にはヒンドゥー教徒とイスラム教徒とのあいだで激しい衝突が起きて5000人が殺害され、10万人が家を追われた。ラジェッシュはその夏、暴徒の波が押し寄せるのを目の当たりにした。ヒンドゥー教徒がイスラム教徒をラルバザールの店やオフィスから引きずり出し、道路の真ん中で生きたまま内臓を抜いた。イスラム教徒はラジュバザール近くの魚市場やハリソン通りで同じくらい残忍な方法でヒンドゥー教徒に反撃した。ラジェッシュの精神がおかしくなったのはこうした暴動のすぐあとのことだった。

22:複数の世代にわたって精神疾患が存在する家系を分析した結果、双極性障害と統合失調症には強い遺伝的な関連がある。(2009スウェーデン研究者)


shikoku88 at 19:30│Comments(0) | 政治

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