2018年06月11日
監査役の権限
日本を代表する老舗百貨店「赤木屋」のワンマン経営者が愛人の会社に利益供与で背任罪といえば、私より上の世代なら、「三越事件をモチーフにしたな」とピンとくる。三越事件が起こったのは1982年だから、この小説(初版が1998年)の16年前だ。
三越事件では、三井銀行から派遣されていた社外取締役が他の取締役を説得し、三越百貨店の岡田社長を取締役会で解任した。不意を突かれた岡田社長が取締役会で最後に発した、「なぜだ
」はその年の流行語になった。一方、こちらの小説では、社長解任に動くのは、外国人株主の意向を受けた常勤監査役。この外資企業は赤木屋を安く買いたい。ワンマン社長が愛人を寵愛して公私混同していることを表面化し、経営危機を誘発→第三者割当増資で過半数を取得→取締役を一掃し経営権を握る→TOBで非上場化→経営再建し再上場、というシナリオを描く。目を付けたのは、アメリカにはない「監査役」という制度。普段、あまり注目されることのない監査役が、日本の会社法上、強大な権限を有することを発見するのだ。
監査役の制度は、ドイツの制度をもとに、明治23年に制定された旧商法で導入された。アメリカにはない制度なので、米軍占領時代にGHQにより、「監査役が業務監査を外された」というのも興味深い。アングロサクソン系では、会社執行役の業務監査を行うのが取締役会の役割だから、「なぜ同じことをする機関が会社に2つもいるのか」ということだったのだろう。ところが、日本では取締役のほとんどは業務執行もしているから、自分で自分の監査をすることはできない。日本の独立が回復されると、監査役制度は元に戻され、さらに、企業不祥事が起こるたびに監査役の権限強化・地位強化がされてきた。
2005年に会社法が制定され、現在では、監査役を置かないことも可能になった。いわば、ドイツ型アメリカ型どちらか選べるようことになった。こういう自由な制度設計というのも珍しいのではないか

16:株主提案権30万株(議決権300個)という株を根拠にしての株主提案権、つまり勝手に株主総会の議題を追加することができる権利97:会社法第388条監査役の予算は監査役自身が決める。監査役が必要と思う限り、青天井。129:会社法第847条 株主代表訴訟監査役が代表訴訟に参加するのは、監査役の独自の判断。

