2018年03月09日

ブロークン・ブリテンの無料託児所から



「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった」

本の背表紙にはこうある。著者は、在英20年になるという「保育士ライター」だ。

 英国の地べたを肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼を持つ書き手として注目を集めた著者が、保育の現場から格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。
 2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国で「平均収入、失業率、疫病率が全国最悪の水準」と言われる地区にある無料の託児所。「底辺託児所」とあだ名されたそこは、貧しいけれど混とんとしたエネルギーに溢れ、社会のアナキーな底辺層を体現していた。

日本に入ってくる英国情報は、シティの金融マンの話であったり、米国以外で唯一世界トップテンにランキングされるOxbridgeの大学教育、そしてRRやMiniなどのブランド(両方とも今やドイツ資本だが)など、優等生そのもの。しかし、実態は、現地で"Broken Britain"と呼ばれる格差や分断の問題は日本からは想像できないほどだという。

戦後長く労働党政権が続いた英国は破綻寸前になっていた。それを自己責任、効率化で立て直したのが保守党のサッチャー元首相。そのおかげで1990年代に英国は未曽有の好景気に沸く。結果、政権交代した労働党のトニー・ブレアは、生活保護を手厚くできた。しかし、そのどちらも「格差と分断」問題を解決はできなかった。

つまり、これは政治問題ではあるのだが、国家が解決できるような問題ではないのかもしれない。彼らを救えるのは、自分たちのことを気にかけてくれる仲間で、仕事のあるコミュニティなのだ。行政は予算を付けて支援はできるが、主役はNPOだ。

27:Broken Britain
90年代には別の政党でありながら彼女の新自由主義を引き継いだ労働党のトニー・ブレアが、これらの「仕事がないワーキングクラスの人々」への生活保護を手厚くして「上から下までみんながハッピーな社会」を演出した。そのおかげで、社会の最底辺の「アンダークラス」ではモラルが崩壊し、さまざまな社会問題を引き起こしているとして、保守党はこの様を「ブロークン・ブリテン」と呼んで選挙戦を戦い、2010年に労働から政権を奪取した。

29:虐待や養育放棄などの不幸は閉ざされた空間で起きる。だから乳児や幼児のいる家庭を孤立させてはいけない。(中略)ましてや食うにも困っている人々が子連れで閉じこもっている状況はとても不健康だ。

40:英国で生まれる子どものうち、少なくとも両親の一人が外国人である子供の割合は全体の31%で、2001年より10%増加していたという。両親ともに外国人である子供は18%だった(2011年国勢調査)

65:一昔前までは、さまざまな肌色をした底辺外国人の「対イングリッシュ」みたいな団結力が強固で、それはそれで敵対感に溢れすぎていて鬱陶しくなることもあったが、ちょっと階級を登ったりすると、外国人こそが最も積極的に他の外国人を排他する人々になる。


shikoku88 at 20:26│Comments(0) | 政治

コメントする

名前
 
  絵文字