2018年02月20日

超長期GDP推計730-1874

一人当たりGDP推移


































2007年に発表されたアンガス・マディソンによる世界経済2000年間にわたる各国GDPの推計は、世界中で多くの人の好奇心を刺激した。

10:彼の推計の特徴は、統計データが不足している前近代の経済社会においても、数量データが記載された資料のみならず、数多くの非数量的情報を読み込んで設定した仮説にもとづいて長期の生産量の推計をおこない、それを1990年ゲアリー=ケイミス購買力平価による共通のドルに換算して国際比較を可能にしている点にある。

マディソンの推計によって、インドや中国が長年にわたって世界GDPの過半を占めていたことが明らかになった。西洋の一人当たりGDPが追いつくのは中世に入ってからで、西欧が豊かになるのは大航海時代になって新大陸の資源を取り入れてからである。そして、産業革命によってその差は決定的になった。

マディソンの非数量情報をもとにした仮説は大胆なもので、「統計的に大きな誤差を含む当て推量」といえるかもしれない。本書は、古代から近代初頭までの日本の長期の経済成長に絞って、より厳密に推量したもので、それは一種の謎解きのようで、知的興奮を覚えるものになっている。

興味深いのは、著者の経歴で、素直に大学院に進んで研究者になったわけではない。立命館大学で近現代史を学んだものの、一旦、近鉄百貨店に就職して外商部で営業をしている。「やはり歴史を研究したい」と退職して、1年間の浪人生活を経て、大阪市立大学の修士課程に進学。大阪大学の博士課程に在籍しながら、日本銀行金融研究所でアーキビストとしてアーカイブ業務に携わる。

ここまでは歴史学で、経済史の研究を志したのは、一橋大学経済研究所の研究員になってからだという。研究所に来た当初は、前職同様資料整理に携わっていたのが、経済学の知識がないので、データ分析に携われない。そこで、再度大学院に入り直し、経済学を勉強したという。

本書は2016年10月に一橋大学に提出された博士論文を大幅に加筆・修正したもの。この時、筆者は既に42歳。通常より約10年遅れての博士号取得となった(歴史学では博士課程中退)。しかし、その結果、ユニークな経済史の本が出ることになった。


 

shikoku88 at 23:12コメント(0) | 経済 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
Archives
Recent Comments
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Thank you for visiting!

  • ライブドアブログ