2018年02月19日

金融システムをどう直すか



これまで金融問題が起こる度、規制が強化されてきた。それで問題が起こらなくなったかというと、しばらく鳴りを潜めたのち、以前よりももっと大きな規模で襲い掛かってきた。

それは、「事細かなルールに基づく規制によって、法令順守に価値判断の代役を務めさせたからだ」とケイは言う。「金融化という病は、お粗末な公共政策がもたらした部分が大きい」のだ。では、どう金融システムを直せばいいか?「国家の介入を制限する一方、必要な介入については成果に結びつくような設計」が必要だという。「監督と統制を強化するのではなく、構造およびインセンティブの問題に手を打つ」のだ。

イギリス海軍には、「自分の見張り番」原則というのがあるそうだ。これは、「自らの監督下で起こったことは、管理者個々人が責任を負う」というもの。ある出来事が起こったことを立証するだけで十分で、責任者にその原因があることは必ずしも立証しなくてよい。

経済事件で実刑になることはほとんどない(その例外が、日本では村上ファンド事件と、ライブドア事件)。経営上の高度な判断を、それも複雑になる一方の金融市場を舞台に、個人であれ企業であれ、有罪判決にこぎつけるのは困難だ。

そのため、多くは、被告側企業が法的責任を認めないまま「和解」となる。米国の場合、その和解金は巨額だが(2012-2013のJPモルガン支払実績で約3兆円)、日本では少額だ。そして、和解金も金融機関幹部が個人で出すのではなく、会社から支払われるため、所詮「他人の金」なのだ。

「自分の見張り番」原則は、金融機関だけでなく、会社法に取り入れていいと思う。さらには、公務員法にも取り入れ、「不作為の違法」に対処すべきだろう。日本中で、必要のない公共建築や巨大インフラ整備が行なわれ、ほとんど役に立たないまま廃止されたり、巨額の維持費用に苦しんでいる。

大抵は、杜撰な計画で作られており、それは税金で作りたくて仕方のない政治家や建築業に役所が屈したためだと思われる。公務員がそうした圧力に屈しないため、「自分の見張り番」を導入してもらいたい。そうして、転勤になった後も、退職した後も、責任を問えるようにするのだ。

298:事細かなルールに基づく規制によって、道徳規範は高まるどころか損なわれてしまった。それは法令順守に価値判断の代役を務めさせたからだ。

330:他人の金で巨額の罰金を支払わせてはいけない
JPモルガンは2012年、13年に250億ドルを超える和解金を支払い、大概は法的責任を認めないまま和解に達している。JPモルガンの上席幹部連中が、過去の罪を償うためにこれほど巨額の支払をすることも厭わないのは、他人の金で支払っているからだ。
→刑事犯罪に定める(海軍と同じく「自分の見張り番」原則で、自らの監督下で起こったことは個々人が責任を負う)

339:金融が存在するのは、家計と企業に奉仕するため
われわれが求める金融機関とは、業務範囲が絞られ、はっきりとした建設的な目的を持ち、それを達成するのに適した経営システム、ガバナンス体制、資本構造を備えたものである。

shikoku88 at 18:50│Comments(0) | 経済

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