2018年02月02日
反知性主義へのささやかな抵抗
新進気鋭の社会学者(財政社会学、政治思想史、社会的選択理論、日本社会史)による共著。学問の「タコツボ化」が進んでいて、「同じ社会を見ているはずなのに、経済学、財政学、政治学、法学、歴史学・・・・それぞれの専門性、個別性がとても高くなり、研究者同士でさえ、お互いを理解しあえない」という問題意識から、共同で現代問題を扱うというアプローチを取っている。それで、『大人のための社会科』。
山岸俊男の「『安心社会』から脱却できない日本」という説が面白い。一般的に、日本は世界一安全な社会と言われる。確かに、殺人発生率では10万人当たり日本は0.31(つまり、年間平均31人)と非常に低い。日本より低いのは、シンガポールやマカオなど管理の行き届いた都市国家だけなので、国として実質的に世界一安全と言ってよい。
ちなみに、ドイツ0.85、イギリス0.92、フランス1.58、インド3.21、タイ3.51、アメリカ4.88、フィリピン9.84、ロシア11.31、ブラジル26.74、去年訪問した南アフリカは34.27だ。大雑把に言って、欧州は日本の3-5倍、米国やアジアで10-20倍、ブラジルや南アは100倍危ないと言える。
しかし、「安心社会=信頼社会」ではない。日本の15倍殺人発生率の高いアメリカでは、道ですれ違う他人に気軽に声をかけるし、エレベーターに乗り合わせれば挨拶をする。「渡る世間に鬼はなし」と信じている社会だからこそ、AirB&Bのようなサービスが生まれた。
日本の「安心社会」では、個人が特定の集団に長期間にわたって関与し、そのことによって集団のメンバーとして認知される。集団内部で相互監視することにより初めて信頼され、集団内部で信用を失えば、そこに残ることはできないという集団圧力によって「安心」が担保されている。従って、外部の者に対しては、なかなか心を開かない。
こうした社会は、社会的知性の発展を阻害する傾向があるという。「世間の人は信じることができない」と疑ってかかるより、「世の中のたいていの人は信頼できる」と思っているほうが、社会的知性の発展につながる可能性が高い。人を疑ってばかりいると、行動は消極的になり、社会的知性の発展のために経験を積むこともできないわけだ。
こうした社会は、社会的知性の発展を阻害する傾向があるという。「世間の人は信じることができない」と疑ってかかるより、「世の中のたいていの人は信頼できる」と思っているほうが、社会的知性の発展につながる可能性が高い。人を疑ってばかりいると、行動は消極的になり、社会的知性の発展のために経験を積むこともできないわけだ。
17:GDPに代わるもの国連開発計画(UNDP)では、1990年から、寿命、教育、所得を総合的に評価する指標であるHDI(Human Development Index)というものを作成。HDIとGDPの相関は高いが、常にそうではない。105:民主主義の危機「自分には政府のすることを左右する力はない」(「若い有権者の意識調査」第三回2011/1)「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」=69.4%・民主主義とは、自分たちの問題を、自分たちの力で解決していく営み110:「個人主義」の思想史「利己主義」(egoism)という言葉の歴史がきわめて古いのに対し、「個人主義」(individualism)という言葉ははるかに新しく登場したものであり、いわば<私>意識の台頭と密接に結びついている。112:19世紀半ば以降、「個人主義」は肯定的な意味で用いられるようになる・主体的な個人の選択や個性の尊重、自律的な個人の活動・いち早く産業革命の進んだイギリスでは、「小さな政府」という概念と「セットで・哲学や文学の盛んだったドイツでは、個人の多様な個性を強調するなかで・西部開拓中のアメリカでは、他人の力を借りることなく、すべてを独力で成し遂げられる"self-made man"の理念と結びついて113:エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』1941・なぜドイツ人はナチズムを支持したのか?・「人々が自らの自由の負担に耐えられなかった」という独自視点・個人が自由であるためには、そのための責任や孤独を引き受けなければならない・自分一人で物事を判断し、その結果を引き受ける覚悟137:信頼の低い日本社会(山岸俊男)日本人が「人を見たら泥棒と思え」と思っている社会だとすれば、しばしば訴訟社会と言われるアメリカのほうがむしろ、「渡る世間に鬼はなし」と信じている社会。142:日本は長らく「信頼社会」ではなく、「安心社会」であったから・「安心社会」個人が特定の集団に長期間にわたって関与し、そのことによって集団のメンバーとして認知される・集団内部では相互監視の状態が持続的に続く・集団内部で信用を失えば、そこに残ることはできない144:社会的知性の発展「世間の人は信じることができない」と疑ってかかるより、「世の中のたいていの人は信頼できる」と思っているほうが、社会的知性の発展につながる。人を疑ってばかりいると、行動は消極的になり、社会的知性の発展のために経験を積むこともできない。150:いまや高度な知識や技術をもつ人間にとって気になるのは、世界に広がる同業者のあいだでの自分の評価・シェアサービスはピア・ネットワークによる21cの「信頼」の形178:アーカイブズ制度の遅れ・1971国立公文書館設置・大日本帝国憲法では、官僚は国民に対して責任を負っておらず、天皇に対してのみ責任を負う・説明責任という概念はきわめて薄い→必要なくなったと判断された書類は無秩序に廃棄179:佐藤栄作首相の旧宅から発見された「沖縄核密約」合意文書・公文書を私物のように扱い、自宅に持ち帰った・2011「公文書管理法」制定→政府機関は公文書を勝手に廃棄したり、倉庫にいつまでも死蔵しておくことはできない

