2018年02月09日

医療費の自己負担割合と人々の健康状態の関係



日本の医療費はGDP比でも世界第3位と高い。医療費は高齢になるほど増えるので、世界一の長寿国であることがその最大理由であることに間違いはない。しかし、このまま上昇を続ければ、少子高齢化の中で、医療保険制度自体が存続できないのも間違いない。

医療費を抑制するには、特に70-74歳で2割負担、75歳以上で1割負担となっている自己負担比率を上げるのが確実だが、「それでは、自己負担を嫌がる高齢者が受診をためらってしまい、早期発見が遅れ、かえって医療費を上げることにつながらないか」という議論もある。

実はこの件について、かつてアメリカで壮大な社会実験が行われたという。

「ランド医療保険実験」

 ハーバード大学の医療経済学者ジョセフ・ニューハウスらが、アメリカを代表するシンクタンクの1つであるランド研究所に勤務していたときに行った研究である。

 アメリカの6市に住む2750世帯を対象に1971〜1986年に実施された。現在の価値で3億ドル(約300億円)もの研究費を使った壮大な実験である。

 この研究のためだけに民間医療保険会社が設立され、研究の対象者は無料で医療保険に加入することができた。ただし、彼らはランダムに自己負担割合の異なる次の4つのグループに割り付けられた(ランダム化比較試験)。

    • グループ1 自己負担割合ゼロプラン
    • グループ2 自己負担割合25%プラン
    • グループ3 自己負担割合50%プラン
    • グループ4 自己負担割合95%プラン

 自己負担割合がゼロのグループ1(「介入群」と呼ぶ)と、自己負担割合があるグループ2〜4(「対照群」と呼ぶ)にランダムに割り付けることによって、対象者は自己負担割合の有無を自分の意思で選択できなくなる。

その結果、「医療費の自己負担割合が高くなれば、国全体で支払う医療費は減少すると考えられる。この研究の結果、医療費の自己負担額が10%上昇すると、住民が使用する医療費は約3%低くなる」ことが明らかになった。同様に、外来受診も同じ割合で減ったという。ここまでは当然予測された。

次に、この実験では15年間に渡って対象者の健康状態を30項目の指標で追跡した。その結果、「医療費の自己負担割合と人々の健康状態のあいだには因果関係がない」ことが明らかになった。要するに、ほとんどの人は自己負担割合に関わらず、本当に必要だと思えば病院に行く。自己負担95%で受診率は自己負担ゼロに比べ30%減少したが、それによる健康への影響は見られなかった。つまり、減少した分はもともと受診の必要がなかったと思われる。自己負担が少ないから、「念のため行っておくか」というレベルだったのだ。

この実験結果が日本にも当てはまるとすれば、高齢者も含めて医療負担の自己負担割合を上げるのがよい。それによって不要な「コンビニ受診」が減り、保険制度がより健全化できる。もともと、日本の医療保険には自己負担額の上限という素晴らしい制度があるので、自己負担の適正化で制度自体の温存を図るほうが国民にとって利益となる。



shikoku88 at 22:06コメント(0) | 経済 

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