2017年12月26日
閉じていく帝国
2014年の『資本主義の終焉と歴史の危機』で水野和夫氏は、「フロンティアがなくなったため、資本主義が限界に達した」と論じた。長期金利を振り返れば、よく知られているように、日本が低金利の記録を破るまで4世紀に渡って「16世紀末から17世紀初頭のイタリア」だった。これは、資本主義の誕生した欧州からフロンティアがなくなってしまったからである。有望な投資先がなくなり、金利は低下した。
しかし、その後、大航海時代となり、新大陸やアフリカの開発が本格化して、金利は再び上昇した。現在は、世界中からフロンティアが消えている。世界中の航空写真がGoogle Mapで誰でも無料で見られる時代である。物の値段の比較は容易で、以前なら何年もの間利潤をもたらした商品が、数か月でコピーされて陳腐化する。家はモノで溢れ、消費者の購買意欲は低い。
前著で水野氏は、こうして「資本主義の終焉」を予測したが、では、「次にどうなる」かは予測しなかった。国家としては、どういう事態になっても次の手が打てるよう、「財政健全化」を達成しておくべきだと論じたところで終わっている。
ポスト近代システムにまで踏み込んだのが本書。水野氏は、それは、政治的には「閉じた帝国」、経済的には「定常状態」になるという。グローバリゼーションは格差や貧困をもたらし、英国や米国など資本主義の最先進国で有権者の反乱が相次いだ。だから、政治的には閉じていき、経済的にはフロンティアがない世界で定常状態になるというのだ。
それは本当か
「国民と資本が分断されている」というが、世界最大の運用資金は年金基金で、その額は15兆ドルにも上る。その最大のものは、なんと、日本の年金積立金管理運用(GPIF)で116兆円だ。全国民が参加しているから、投資先の企業業績の向上は、年金運用収益として国民に返ってくる。この意味では、国民と資本は分断されてない。賃金は上がってないかもしれないが、自ら資金運用していれば直接的に、そうでなくても、知らず知らずのうちに資本市場と全国民が関わっているのだ。尤も、GPIFの運用先はほとんど金利のつかない国内債券で2/3が運用されているので、逆に2/3が株式で運用されているアメリカの年金基金のようにはいかないのだが。
・長期金利は資本利潤率の近似値利子率=利潤率が2.0%を下回った状態では、資本を投下しても利潤を得ることはできない。・国民国家の解体が進行している先進国で企業利益は増加しているのに、賃金は下落し続けている。・民主主義が機能しない国家の中で、国民と資本が分断されてしまった。・ポスト近代システムは政治的には「閉じた帝国」、経済的には「定常状態」成長至上主義と決別し、資本蓄積をしない。
