2017年11月24日
「此書を外国に在る人々に呈す」
先月の遠野訪問からひと月経ってしまったが、原文を読んでみた。驚くほどコンパクト。しかも、158pのうち『遠野物語』は87pで、後は山本健吉、吉本隆明、三島由紀夫による「解説」が三本もついている。87pに込められた物語は119本にも及び、平均1pにも満たない小話である。
原文を読んでみると、簡潔にして無駄がなく、まるで漢文を読んでいるよう。これが明治時代の文語体というものらしい。三島由紀夫は本書の解説「小説とは何か」の中で、「全文自由な文語体で書かれ、わけても序文は名文中の名文」といっている。
扉裏には、「此書を外国に在る人々に呈す」とあり、柳田が本書を海外の人に読んでほしいと思っていたことがわかる。おそらく、明治人として、「日本にも長い歴史と文化があるのだ」といいたかったのかと思う。その一環なのか、注意書きで、アイヌ語への言及が至る所にあるのも興味深い。
7:序文国内の山村にして遠野より更に物深き所には又無数の山神山人の伝説あるべし。願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ。14:遠野郷のトーはもとアイヌ語の湖伝へ言ふ、遠野郷の地大昔はすべて一円の湖水なりしに、其水猿ヶ石川と為りて人界に流れ出でしより、自然にかくの如き邑落をなせしなりと。16:遠野郷より海岸の田之浜、吉利吉里などへ越ゆるには、昔より笛吹峠と云ふ山路あり。21:孫四郎は途中にても其鎌を振上げて巡査を追ひ廻しなどせしが、狂人なりとて放免せられて家に帰り、今も生きて里に在り。
