2017年11月04日
サラバ!
2015年の直木賞受賞作品。
主人公の歩(あゆむ)は、テヘラン生まれで一度帰国して小学校低学年を日本で過ごした後、再び、カイロに赴任した父親についてエジプトで小学校高学年を過ごす。そこで、仲良くなったのが、近所に住む少年ヤコブ。ヤコブはコプト教徒で、イスラム教徒の多いエジプトでは少数派だ。
「テヘランで生まれて、カイロで小学校」というのは作者の西加奈子そのもの。当然、小説同様、彼女の家族も崩壊していたのかとか、現地人の親友がいたのかと思ってしまう。直木賞受賞当時のインタビューによれば、「100%虚構です」ということ。ただ、「作家が私小説を書いていても、やっぱりフィクション」ということから、部分部分が事実であっても全体としては作品として再構成され、脚色されているということなのだろう。
ちなみに、調べてみると、エジプトは90%がイスラム教徒で9%が土着のキリスト教であるコプト教徒ということだ。
上176:幼かった僕らは、どこかでそれを分かっていた。だからこそ、その時間を大切にした。一瞬一瞬は、僕らの中でスパークし、それが二度と戻らないものであるからこそ、その輝きは強烈だった。上217:家族はヤコブを愛していた。それは僕にも分かった。そしてヤコブは、その家族を誇りに思っていた。自分の母親を心から美人だと思っていたし、この場にいないお父さんのことを、何度も何度も褒めた。上250:それは石造りの教会だった。僕たちがカイロでよく見る、イスラム教のモスクではなかった。丸い屋根の上に、少しいびつな十字架があり、集まっている人たちは、誰もガラベーヤを着ていなかったし、へジャブもかぶっていなかった。僕はそのとき、初めてヤコブの宗教を知った。「僕は、コプト教徒なんだ。」
