2017年10月31日
第8章 オリンパス会長の依頼
オリンパスとLGT銀行(リヒテンシュタイン公国)がすでに損失隠しで動いていたことを知らずに、横尾氏はそのスキームに巻き込まれていく。オリンパスは日商岩井のVC部門であるITXを日商岩井から買収し、CVCの魁となっていくのだが、実はそれは莫大な運用損を隠すための隠れ蓑だった。
横尾氏が野村を退職した最大の理由が、「データベース・マーケティングをやりたかったから」というのは面白い。野村でこれをやろうとしたが、バブル崩壊後の証券不況で野村にそんな余力はない。実は、横尾氏は事法時代にオリンパスに野村総研を紹介し、オリンパスはデータベース・マーケティングの子会社UVASを設立していた。退職後の、氏の仕事はUVASの営業支援から始まるのである。
次いで、オープンイノベーションのため、300億円のVCファンド運用を任される。そこで投資したのが、オリンパス巨額決算粉飾事件の中心となるベンチャー企業3社。間に何社もオフショア会社を入れて、一見オリンパスと関係なく見えるファンドで投資した企業を法外に高い価格でオリンパス本体で買い、それを翌年減損処理することで運用損の解消を図ったのだ。
ちなみに、この時オリンパス社内で「新事業3社」とされた3社はいずれも2012-13年にかけて特別清算され、3社合計の負債額は163億円に上った。
280:野村の支店の最大の弱点は、客の特性を掌握する営業マンの能力が著しく低下したこと一人ひとりの営業マンに能力があった頃は、収益も上がりクレームも少なかった。実績を上げる営業マンは、人を見る眼を持っている。281:データベース・マーケティングはイトーヨーカ堂グループが野村総研と手を組んで、すでに導入していた。私自身も第2事業法人部に在籍していた頃オリンパスの下山敏郎社長(当時)から「コンピューター事業に参入したい」との相談を受け、イトーヨーカ堂グループのデータベース・マーケティングを担当した野村総研のチームを、オリンパスのコンサルティングに入れた経緯がある。この結果としてオリンパスが92年10月に設立したのが、アパレル業界向けにデータベース・マーケティングのシステムを構築する子会社「UVAS」(現・オリンパスシステムズ)。311:われわれは有望なベンチャー企業の発掘に努めた。投資先は二十数社に上ったが、ユニークで歴史の新しい会社ばかりに照準を合わせて投資したので、純粋なベンチャー投資は50億円程度にしかならなかった。その中で私と羽田が有望視したのが、オリンパス社内で「新事業3社」と称された「NEWS CHEF」「ヒューマンラボ」「アルティス」。特にNEWS社は私がとりわけ肩入れした会社だった。

