2017年08月18日

内部告発が暴いた闇



これまでも企業不正事件のドキュメンタリーは沢山出ている。しかし、内部告発を中心に調査が進み、本になったのは初めてではないか。東芝の粉飾事件で、日経ビジネスは2015年8月以降、誌面やそのサイトで積極的に内部告発を募った。そういった意味で、事件は古典的だが、取材方法はネット時代の新手法だ。

本書にもある通り、WH買収時の西田元社長は異色の経歴。イランの東芝現地販社から始めた傍流も傍流の人で、「公家」とも言われた東芝からすると異色そのもの。2005年に社長就任時の記事を読んで、期待したことを覚えている。

当時の世界的流れからして、WH買収で原子力事業を強化しようとしたのは経営判断として間違いとは言えない。但し、明らかに間違いなのは、2000億円が妥当とされたWHをその3倍の6000億円もの金額で買収したこと。日本企業による大型の海外企業買収はほとんど失敗している。

その理由の第一は、買収金額が高すぎること。ライバル企業とオークションで競り合ううちに自分で金額を正当化してしまう。第二に、買収後に買収した側に遠慮して経営統合を進められないこと。WHのケースでも買収された側とはいえ、名門のWHは東芝の介入を拒否し、ブラックボックス化してしまった。

第三は、買収の失敗を認めず、負け戦にさらにつぎ込んで致命傷にしてしまうこと。東芝は「3.11」後に原子力事業を取り巻く環境が大きく変わってしまったにも拘らず、強気の姿勢を崩そうとしなかった。WHが行っている米国での原子力発電所建設が遅れているのを解消しようと、追加で工事会社を買収したことが、さらに傷口を広げてしまった。

39:イラン現地法人から上り詰めた西田厚聡
1968早稲田→東大大学院(ヨーロッパ政治思想史)
学生結婚をした妻の出身地であるイランへ渡り、東芝の現地法人に就職
1975東芝本社入社(31歳)→海外のPC販社を渡り歩く→Dynabookヒット
2005社長就任

45:入社以来原子力事業でキャリアを積んだ佐々木
1972早稲田理工学部
2003原子力事業部長 WH買収で交渉役

48:「声が大きいから威圧感はあるものの、怒鳴るときでも佐々木さんの目は笑っていた。何がなんでも意見を押し通すつもりで怒鳴っているのではなく、反論し合う中で議論が盛り上がるのを楽しんでいたのでは」(東芝の研究所で原発分野を担当していた奈良林直)

132:性能データも粉飾
「小林(清志副社長)は頭が非常に切れる一方で、人当たりがきつい。そのうち、面と向かって忠告する人が去っていき、周囲にはイエスマンしかいなくなった」(四日市工場に在籍していた元技術者)

155:原子力ルネサンスに踊った西田
WHの2005年12月期売上高は2400億円で、税引き前利益は約38億円。三菱重工はWHの「企業価値」を2000億円程度と試算し、途中までは約3000億円を提示していたとされる。東芝で当時、原子力事業を率いていた佐々木則夫も「当初は多くて4000億円程度と見ていた」(2006年、東芝の最終買収額は6000億円)


shikoku88 at 21:56│Comments(0) | 仕事

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