2017年06月29日
タカタの分水嶺

製造業で戦後最大の負債額を抱えて倒産することになったタカタ。アレッ
と思ったのは、「株式の6割を握る創業家」という点。過半数以上を創業家が持っていて1部上場出来るのか?勿論、出来ていたのだから、大丈夫だったのに決まっているのだが、改めて東証一部上場基準を確認してみる。以下、「一部指定のための形式要件」の株主に関する項目。
・株主数:2200人以上
・流通株式:
a. 2万単位以上
b. 時価総額20億円以上
c. 比率35%以上
問題は(c)の流通株式比率。「上場株券等の35%以上」とある。タカタでは創業家が6割を保有していた。会社四季報では「特定株65%」(10位までの大株主と役員持ち株)となっている。つまり、東証一部上場要件ギリギリで上場していたことになる。
問題は、マザーズやJASDAQならともかく、東証最上位の市場で「創業家が過半数以上を持つ」を許していいのかどうかだ。上場企業は、資本市場から資金調達できるという特典の見返りに、オープンな経営を求められる。「創業家が過半数を持ちながらオープンな経営」というのは理論的には成り立つが、それは創業家が最善の注意を払った場合のみで、仕組みとして担保されているわけではない。何しろ、会社としての最高意思決定機関である株主総会を支配しているのは創業家なのだから、取締役であっても創業家出身以外は軽い存在とならざるを得ない。
29日付日経新聞によれば、会社は以下のような状況だったという。
・北米工場の外部監査を担当した元米運輸長官「組織文化を変える必要がある」
・安全に関する重要なデータを繰り返し偽って自動車メーカーに報告(米司法省捜査)
・「株式の約6割を握る創業家の存在が組織の風通しを悪くした」(元社員)
・「役員でも反論は許されない雰囲気」(同)
・「米国子会社がやっていることを、日本のタカタ本社はなんら関知していないという印象」(取引先)
絶対権力を持つ創業家の下で、社員の仕事ぶりが他人事になっていた様子がうかがえる。
一般的にオーナー経営者の方が経営成績はよい。しかし、ワンマン経営でなる日本電産でも特定株比率は39%。ユニクロのファーストリテイリングで36%(上位株主から推定)。ソフトバンクで47%(孫社長自身は21%)。創業者の孫が経営するトヨタ自動車に至っては、豊田章男社長の持ち株は0.1%で、豊田家全体でも1%程しかない。
それで、オーナー経営者のようにいわれるのもどうかと思うが、豊田社長は2010年に品質問題で米国議会の公聴会で矢面に立った(全くの濡れ衣だったが)。タカタの高田社長は、それよりはるかに深刻な事態であったにも関わらず、このつらい役を品質担当役員に任せた。ここが、タカタの分水嶺だったのではないか。
これを機に、東証一部指定要件に、「特定株比率過半数以下」を提案したい。