2017年02月15日

「赤い国」を生きた人びと

セカンドハンドの時代――「赤い国」を生きた人びと
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
岩波書店
2016-09-30


「ユートピアの声」シリーズ五部作の完結編。多数の詳細なインタビューによる圧倒的リアリティ。本書出版後、2015年にノーベル文学賞を受賞している。

「多声からなる著作はわたしたちの時代の苦悩と勇気の記念碑である」

プーチン氏が2000年に最初に大統領に就任してから、(3選出来ないため)首相の期間を経て、早17年。プーチン大統領が目指しているのは明らかに「帝国」復活で、国民の圧倒的多数がそれを支持している。

「ロシアは昔も、いまも、これからも、いつも帝国」
わたしたちは、ただの大国ではなくて、独自のロシア文明だ。わが国には自分の道がある。

との言葉が一番ピッタリ来た。



共犯者の覚え書き
1:共産主義は、「古き」人間、古くさいアダムを作りかえようという、無謀な計画をもっていた。そして、それはうまくいった・・・・もしかしたら、うまくいった唯一のことなのかもしれない。70数年のあいだにマルクス=レーニン主義実験室において一種独特の人間のタイプ、「ホモ・ソヴィエチクス」が作りだされたのだ。

2:「撃つ」「銃殺する」「撲滅する」「射殺する」、あるいは、人が消えることのソヴィエト的ヴァリエーションである「逮捕」「文通権なしの10年」(スターリン時代に用いられた銃殺刑の婉曲的表現)「移住」といったことば。数百万人がつい最近まで命を落としていたことをわたしたちが覚えているとしたら、人の命の価値はどれほどなのだろうか。

4:「熱狂的な富農と金持ちを少なくとも1000人絞首刑に処すこと(民衆が見るように、かならず絞首刑)・・・・彼らから穀物をすべて没収すること、人質を指名すること・・・・。周囲数百露里の民衆が目にして戦慄するようなやり方でやること」(レーニン1918)

11:19歳から30歳までの青年の半数がスターリンを「もっとも偉大な政治家」だと考えているのだ。スターリンがヒトラーより少なくない数の人間を一掃したこの国で、あらたなスターリン崇拝だなんて?!ソ連時代のものすべてがまたはやっている。

105:きのうは牛乳の行列に三時間も並んだの、でも、あたしのぶんはなかった。ドイツの贈物が入った小包を家に持ってきてくれた。穀物・・・チョコレート・・・せっけん。勝った者に負けたやつらからだよ。あたしはドイツの小包なんかいらないよ。やなこった・・・受け取らなかった。

132:すべてを破壊していたのは僕ら自身なんだよ。自分たちの手で。アツアツのハンバーガーを売るマクドナルドが開店するのを夢見ていたし、ひとりひとりがメルセデスやビデオデッキを買うのを夢見ていた。キオスクでポルノ映画が売られるのを夢見ていたんだ。

372:ロシアは昔も、いまも、これからも、いつも帝国なんです。わたしたちは、ただの大国ではなくて、独自のロシア文明だ。わが国には自分の道がある。

511:タジク人出稼ぎ労働者
モスクワ郊外の金持ちの家でひと夏働いたが、最後に金を払ってくれなかった。「とっとと失せろ。食わせてやっただろ」(中略)
ぼくの友人も働いた分の賃金を雇い主に要求したんだ。その後、警察が長いあいだ彼をさがしていた。森で掘りおこされた。母親はロシアから棺を受けとったんだ。

561:「ロシア人は、ロシアの大地のように広大だ」ドストエフスキー
社会主義はロシア人を変えられなかったし、資本主義もロシア人を変えることができない。富も貧しさもロシア人を変えることができない。 


shikoku88 at 18:07│Comments(0)TrackBack(0) | 政治

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