2016年12月30日
すべての見えない光
冬休みに入ったので、大著を読む。アメリカ人小説家Anthony Doerr原著である"All the Light We Cannot See"は2014年に出版され、NY Timesのベストセラーリストに100週以上にわたってランクインされているという。2015年にピュリッツァー賞受賞(フィクションも対象なんだ
)。物語の大部分は第二次世界大戦前のフランスとドイツが舞台となる。父が炭鉱事故で死んだドイツ人少年ヴェルナーは妹と孤児院で過ごしている。彼は貧しいためまともに小学校に行けないのだが、とても頭がよく、独学で電気工学も知識を身につける。街のお金持ちの家のラジオを修理したことがきっかけで、無料で教育を受けられる陸軍幼年学校に入学できる。
それで、運命は好転するかと思われるのだが・・・その天才的な頭脳で無線探査装置を開発したにも関わらず、何の後ろ盾もない孤児の彼は戦況悪化とともに14歳で前線に送られる。そして、アメリカ軍のフランス上陸作戦中に、ヴェルナーはサン・マロというイギリス海峡に面した古い城塞都市で盲目のフランス少女とたった1日の運命の出会いをするのだ。
小説は時間と空間が交差して綴られるが、分かりにくさはない。総数187にものぼるエピソード群をどうやって物語全体に配置するのか、ドーアは試行錯誤を繰り返したという(訳者あとがき)。
サン・マロの街は上陸作戦前の空爆でほぼ完全に破壊される。今の街の映像を見ると、戦争の傷跡はどこにも見られないようだ。これだけのベストセラーになったから、今は、アメリカ人の観光客が増えているかもしれない。
25:小さいころのヴェルナーは、とてもひもじい。男たちはツォルフェアアインの門の外で仕事をめぐってけんかし、ニワトリの卵は一個あたり二百万マルクで売られ、リューマチの熱はオオカミのように<子どもたちの館>のまわりをうろつく。バターも、肉もない。果物は記憶でしかない。とくに厳しい数カ月間には、院長が十人ほどの孤児に出せるものといえば、マスタードの粉と水を混ぜて焼いたものしかない、という夜もある。85:「道具の扱いに長けている」とジードラー氏は言っている。「年齢に見合わないほど頭がいい。きみのような少年が行くべき場所がある。ハイスマイヤー大将の学校だ。精鋭中の精鋭だよ。機械科学も教えている。暗号解読、ロケット推進、最新の技術すべてを」223:「オーデュボンはアメリカ人だった」とフレデリックは言う。「あの国全体がただの沼地と森だったときに、そこを何年も歩きまわったんだ。一羽だけをまる一日かけて観察した。それからその鳥を撃って、針金と棒で支えて絵を描いた。彼よりも知識のある鳥類学者はおそらくいない。絵を描いたあとは、その鳥を食べてしまった。想像できるかい?」
245:ウベール・バサンは、サン・マロの城壁や魔術師や海賊について嬉々として話す。何世紀にもわたり、この町の塁壁は血に飢えた略奪者たち、ローマ人もケルト人もバイキングたちも退けてきたのだ、と彼はマリー=ロールに言う。海の怪物たちを退けたという話もある。千三百年にわたり、沖合に停泊して市街に火の玉を投げ込み、すべてを燃やして住民たちを飢えさせ、なにがなんでも皆殺しにしようとする残忍なイギリス人の船乗りたちを、この壁は寄せつけなかったのだ。
