2016年08月26日
不祥事

昨晩は、地元商工会で研修講師。与えられたテーマが「危機管理」で、前回好評だったケーススタディでやろうと適当なケースがないか調べてみたが、見つからない。仕方がないので、地元の上場企業で起こった「JIS認証取消事件」を題材に、自分でケースを作ってみた。
事件の概要はこう。大倉工業は東証一部に上場する香川県では数少ない上場企業である。連結売上高は860億円(2016/3)。経常利益23億円。社員数1930名。売上の59%が合成樹脂、29%が新規材料、9%が建材。
「JIS承認取消事件」は建材部門で起こった。パーティクルボードを生産する詫間工場における2012年2月のJQA臨時検査で「出荷後の製品で事後検査している」ことが発覚。同29日にはJIS認証を取り消される事態となった。一部顧客から使用拒否となり、返品と在庫処分で2012年度決算は建材部門売り上げが前期の約100億円から40億円減った。JIS取消の発表で、株価は250円から200円に下落し、時価総額で約30億円縮小した。
さらに、大倉工業が独自調査したところ、「一部の検査表で曲げ強度の値を書き換えていた」ことが判明した。これをうけて、3-4月には全取締役が報酬の一部を返上し、さらに5月には追加の役員報酬カットが発表されるとともに、詫間工場長が役職を離れ、降格された。
こんな事件概要を説明の上、
・なぜ事件は起こったか
・再発防止策
をグループに分けて議論&発表してもらった。
いつも思うのだが、中小企業の二代目(一部三代目)とはいえ、経営者は流石なのである。ビジネススクールで教えていた大企業派遣の社員より、ケーススタディをやってもらうとはるかに優秀。日頃から、規模は小さくても会社全体の経営を考えているからだろう。ほとんどの人が事件の背景も含めて的確にとらえていた。
直接原因は、もちろん、現場の慢心だろうが(もともとJIS基準より厳しい社内基準にしていた)、背景には会社の創業事業でありながら、現在では売上が9%を占めるに過ぎない弱小事業部になっていたことがあるだろう。さらに、2008年には年間売上に匹敵する80億円の設備投資を行ったばかり。品質向上と増産を狙ったにも関わらず、景気の低迷もあって売上は増えてなかった。減価償却費が年間10億円も増えたことで、事業部門の赤字は拡大していた。当然、焦りがあっただろう。
創業事業であることのプライドと相反する業績。縮小均衡ではなく、積極策で起死回生を狙った大規模設備投資は不発に終わる。経営陣の関心は、それよりも事業規模がはるかに大きく、好調時には利益額も大きい光学フィルムなどの新規材料部門と、安定した収益力の合成樹脂部門に割かれていたと思われる。現社長も、前社長も新規材料部門の出身だ。
私が直接経験した不祥事も、会社のマイナーな部門で起こった。花形部門が会社全体の注目と経営陣の関心を集める中、役員会でも最後に少しだけ話が出るその部門でひっそりと犯罪は起こっていたのだ。
人間、居場所と出番がないと、腐ってしまう。「愛の反対は憎しみではなく無関心」と言われるが(ところで、これはマザー・テレサの言葉ではないらしい)、経営者は会社のあらゆる部門に関心を持ってないと思わぬところで足をすくわれる。関心を持ちきれないなら、その部門は売却するなり、他社との合併など考えた方がいいと思う。
