2016年08月24日
メダル競争

Rio Olympic終了。The Economist誌に面白い記事があったので、紹介したい。ひょっとすると日経新聞にも近日中に翻訳記事が出るかもしれない。
タイトルは"Medalling Prosperity" サブタイトルには「もしオリンピックが繁栄について何か教えてくれるとすれば、それは、近道はない、ということだろう」とある。
面白いのは上記の図で、横軸が購買力平価(PPP)換算の一人当たりGDP。これは、所得水準と考えてもよく、ほぼ経済的豊かさの順にメダル獲得数が多いことが分かる。同じ国の推移でみても、中国が経済発展に従ってメダル数を増やしていることが分かる。中国の一人当たりGDPが$4000であった2000年シドニー・オリンピックでは58のメダルを獲得したが、2012年のロンドン・オリンピックまでに一人当たりGDPは4倍に増え、メダル数は88個であった。今回のリオは70個であったが、これは経済の停滞を表しているのかもしれない。
これまで所得水準以上にメダル獲得数が継続的に多かったのはロシア。ソ連時代から国家の威信をかけた養成プログラムがあり、またドーピングに国家ぐるみで手を染めていたことが内部告発で今回明らかになった。
注目はイギリス。エコノミスト誌の地元であるから、詳細な分析がされている。元々、所得水準に応じたレベルのメダル数だったが、この三大会で急増。ロシアが締め出された今大会では米国、中国に次ぐ世界第三位の67個となった。金メダル数では27個で、中国の26個を上回って世界第二位
米国の人口が3億人、中国の人口が14億人に対して、6500万人であることを考えると驚異的だ。イギリスは何を変えたのか?一言でいうと、「お金と戦略」。それまでオリンピックに中立的立場を取っていたイギリスがロンドン開催を狙ったと同時に積極策に変わった。1996年のアトランタで金メダルが1個という屈辱を味わったことで世論が変わったことも大きかった。National Lottery(宝くじ)を原資に予算が付き、その金額は2000年の£50Mから、2012年の£250Mまで5倍に増えた。£250Mということは、現在の為替レートで330億円。今年の日本のスポーツ関連予算が324億円だったというから、ほぼ同じだ。
もう一つは、戦略。伝統的に強くて、他国があまり力を入れてないもの。かつ種目数が多くて、メダル獲得可能性が多い競技に予算を集中した。その効果が如実に表れたのが自転車競技で、67個の獲得メダルのうち12個が自転車競技。なんと自転車競技18種目のうち、6個が金。そのイギリスもBrexitで今後しばらく景気が悪くなりそうだから、東京オリンピックでは期待できないかもしれない。
さて、日本はGDP規模で世界第三位であるが、一人当たりGDP(PPP)で見るとシンガポール、香港、台湾のはるか下(下図)。しかし、奇しくも、物価の高いイギリスとは同水準。既に予算規模がイギリスと同水準だから、あとはメダル獲得可能性で重点競技を絞り込めば、今回のイギリス並みは行けるのかもしれない。日本オリンピック委員会でも、4年後の東京オリンピックでの目標を「金メダルで世界第三位」の20-30個としており、ちょうど、今大会のイギリスの水準だ(金27個)。
最大の問題は、悪平等の日本で、予算の「選択と集中」が許されるかどうかだろう。
