2016年08月17日
ツール・ド・フランスの知られざる内幕
話題の映画「疑惑のチャンピオン」(なんか、「汚れた英雄」みたいw)はまだ見てないのだけど、告発者の一人であるランス・アームストロングの元チームメイトであるタイラー・ハミルトンの著作を読んでみる。ハミルトンはアームストロングと同じアメリカ人のプロ自転車選手で、オリンピックの金メダリストでもある。彼の証言はアームストロングが一貫して否定していたドーピングを否定できないものにした。
背景にあるのは、巨大なスポーツビジネス。23日間にわたり3500kmにも及ぶコースで繰り広げられる世界最高の自転車ロードレスであるツール・ド・フランスは観客数1000万人、TV放映190か国であり、動く資金も巨額だ。レースの人気が上がれば、主催者も、自転車メーカーも、スポンサーもみなハッピーだ。
そして、選手は、他のスポーツ同様、勝利者に対する報酬はスポンサー料も含めて数十億円と巨額なものの、他のトップクラスの報酬は数億円、各チームでトップクラスをアシストする選手は数千万円、ツール・ド・フランスに憧れながら、アシストとしてさえチームと契約できないその他選手はせいぜい数百万円の年収と何百倍もの格差がある。
だから、チームも選手も勝つためなら「何でも」する。そこに付け入るのが、スポーツ医学を極めた医師たち。ドーピング専門の医師がチームや選手に最新のやり方を売り込む。本によれば、アームストロングはじめ当時のトップクラスの選手は年間数千万をドーピングにつぎ込んでいたという。
ドーピング問題は長年指摘されていたが、疑惑の中でアームストロングがツールを7連覇もするまで誰も証明できなかった。それは、アームストロングがツール7連覇のヒーローである方が関係者誰にとっても都合がよかったので、本来ドーピングを取り締まる側の主催者UCIさえもグルであったからだ。
おりしもリオ・オリンピック開催中。ロシアは「国家ぐるみのドーピング」をしていたことで参加拒否された。この本を読むと、ロシアだけなのか?と思わざるを得ない。
自転車レースの世界でも、EPOと呼ばれる血液増強剤の使用が検査で難しくなった後は、「自己血液ドーピング」が主流になった。自分の血液を採血しておいて、レース前やレース中に輸血して酸素供給量を増やすわけだ。自分の血液なので、薬物反応は出ない。これも現在では、血液中の赤血球の年齢(若さ)を調べることで、利用を防止しているらしい。
金銭的インセンティブが巨大であれば、イチかバチかやってみようという選手は必ず現れ、ニーズがあればソリューションを提供して稼ごうとする医師が必ず新しい手法を編み出す。
「スポーツは面白いけど、たかがスポーツ」と観客が冷静であることが最大のドーピング防止策だろう。観戦して興奮するのもいいが、ほどほどにして、自分で体を動かす方がもっといい。
*ランス・アームストロングとは、いったい何者なのか?11はじめに:ドーピングは自転車ロードレースのパフォーマンスを10-15%も引き上げられる。そしてロードレースは、1%以下のパフォーマンスの差が勝負を決するスポーツだ。アームストロングと共にツール・ド・フランスの表彰台に立ったほぼすべての選手も、その後、何らかの形でドーピング疑惑と関連づけられていた。12はじめに:それらのすべてを鋼鉄の金庫のように保護していたのは、”沈黙の掟”だった。プロのロードレーサーは、ドーピングについては固い沈黙を守らなければならない。25はじめに:それは速くなるためにはどのような禁止薬物をとることも厭わない代わりに、落車したライバルが集団に戻るのを待つという、とことん腐敗しながらも、奇妙なまでの騎士道精神が貫かれた世界の話でもあった。

