2016年06月02日
アメリカの真の支配者
リンカーン・センターの劇場、メトロポリタン美術館、スミソニアン博物館、その他の美術館や医学研究センターに共通する名前の建物がある。アメリカに多い、多額の寄付者の名前が付けられた建物群だ。それが、David Koch。彼は男ばかり4人兄弟で、カンザス州ウィチタの地方財閥コーク家に生まれた。
長年にわたり、「人々が名前など聞いたこともない企業の中で最大の企業」がコーク社であった。しかし、コーク社の製品をアメリカの全国民は毎日使っている。ガソリン、ステーキ、肥料、石こうボード、窓ガラス、カーペット、ブラウニーペーパータオル、ディキシー紙コップ・・・。こうした日常品でコーク社は大きなシェアを持っている。
その「知る人ぞ知る」コーク社がアメリカ国民に知られるようになったのは、Tea Party。アメリカ独立のきっかけとなった「ボストン茶会事件」をもじって、最大限の個人や経済活動の自由と、最小限の政府を求める運動だ。この運動の最大の支援者がコーク一族だったのである。
読んでいると、中西部の保守的な価値観を大切にする企業であり、そのオーナー一族である。父親のFredはMITボクシング部の選手で、兄弟のうち3人は父を見習ってMITに進学している。本書では触れれていないが、この分では、MITにも一家の名前の付いた建物がありそうだ。
1: 「坊ちゃんたち、車から出て気が済むまで殴り合いなさい」デイヴィッドとビルは、コーク家の双子の兄弟で、当時は10代の少年だった。彼らはまた激しい喧嘩を始めたのだ。6:チャールズとデイヴィッドは目立たないように経営することを望んだ。デイヴィッドはかつて、自分たちは「人々が名前など聞いたこともない企業の中で最大の企業」を経営しているのだ、と語ったことがある。(中略)コーク社は世界最大の天然資源と農産物の取引業者である。7:「政府は悪だ」という考えを保守的な父親から叩き込まれたために、チャールズはリバータリアニズムに魅かれるようになった。リバータリアニズムは、個人と企業の自由の最大限化と、そうした自由を守るだけの機能を持つ最小国家(政府)を主張する哲学である。354:コーク社の外側では、市場に基づく経営管理法を強制しようとして失敗していたが、会社の内部ではこの経営哲学は着実に浸透してきている。(中略)2007年にチャールズは自身の経営哲学をまとめた『成功の科学』を出版した。この本はコーク社の新入社員にとって必読の書となった。また10ヵ条からなる「指導原理」は、工場労働者のタイムカードや会社内のコーヒーカップに印刷されている。
355:「コーク・インダストリーズはつねに、グラフの象限で右上にランクされる人を探しているんです。グラフの縦軸に謙虚さ、横軸に能力の高さを取った場合、会社はこの二つが共に最高点に近い人を採用したがっているのです」(ナンシー・フォーテンハウワー)
