2016年06月14日
ノーベル賞を培う風土
ノーベル賞には6部門あるらしい。経済学賞は正式には「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」というらしく、本当のノーベル賞ではない。「真のノーベル賞は物理学、化学、生理学医学の自然科学三賞につきる」ということだ。
アジア諸国の経済発展は目覚ましく、シンガポールや香港、台湾の実質所得水準は日本を上回る。しかし、ノーベル賞受賞者が居るのは日本だけ。研究者をきちんと国内で育成できる体制があるのは、世界でも米英独仏露と日本だけだという。
そうした研究教育水準に加えて、著者は二つの本質的な要素が必要だという。一つは、美しい自然、芸術、文学などが身近に存在すること。もう一つは、精神性を尊ぶ風土。
20世紀初頭に活躍したインドの天才数学者ラマヌジャンを調べにインドに行った際の事。彼ゆかりのチェンナイ、カルカッタ、ムンバイなどの都市は混沌と不衛生があるばかりだったという。ところが、彼の聖地タミルナドゥ州では、1000年前のチョーラ王朝時代に建立されたブリハディシュワラ寺院の幾何学的な美しさに息を呑む。
自然科学でノーベル賞をとったインド人3人と数学者のラマヌジャンを含む4人全員の出身地が「半径50km以内」だというのはスゴイ。「人間は環境の生き物」であることを再認識させられる。
41:数学や物理学における世界の天才を調べたことがあるが、私得意の独断によるとまず美の存在である。美しい自然、芸術、文学などが身近に存在することだ。自然科学の独創に最も大切な美的感受性がこういったもので培われる。次いで精神性を尊ぶ風土である。金銭に結びつかず役に立つかどうかさえ分からないことをも尊重する風土、すなわち人間性がそれの生み出す普遍的価値に敬意を払う気風のあることだ。
42:カーストの最上位だが貧富とは無関係で、バラモンのラマヌジャン家も空腹を抱える生活を送っていた。そんな貧困の中で働きもせず、何やら高尚らしきことに没頭している言わば穀つぶしの青年ラマヌジャンを、周囲は温かく見守っていたのだ。この州からはノーベル物理学賞のラマン、同じく物理学賞のチャンドラセカール、化学賞のラマクリシュナンも出ていて、ノーベル賞をとったインド人は自然科学ではこの三人だけなのだ。しかもラマヌジャンを含むこれら四人の出身地は半径50キロの円内に入る。

