2015年09月30日
日本の高知化

今回の高知遍路の旅で、お寺以外に寄ったところが二つ。それが、高知県立美術館と牧野植物園。寄ったのは日曜日だったが、美術館のシャガール展示室にも、牧野植物園の牧野富太郎記念館にも、30分余りの滞在中に見学者は私一人。すさまじい低利用率なのだ。
どちらも素晴らしい施設で、建物も展示内容も立派。県立美術館は「約1300点に上るシャガールの世界的コレクション」で有名だし、牧野植物園は17.8haの広大な敷地の中に、内藤廣設計で村野藤吾賞を受賞した牧野富太郎記念館などが点在する。どちらも、レストランやカフェ、庭園などがあって、一日中過ごせる施設だ。
こうした公営施設が税収豊かな地域に在って、それが多くの市民に利用されているなら、例え、その維持に毎年莫大な税金が投入されていても、それは意味のあることだろう。ところが、高知県は全国最低水準の平均所得で(図)、当然、税収も少ない。県の財政の大半は国からの交付税で賄っている。その上借金をして(公債)、県民がほとんど関心のない施設をこの規模で造るというのは常軌を逸している。
個人的にはシャガールの魅力はディズニーランドに負けないと思うが、県立美術館の常設展の入場者は年間1万人に満たず、高知県はその維持に年間3億円を投じている。TDLは年間に3000万人以上が利用する。言ってみれば、360円の入場料(現在)は、本当は3万円掛かっている。県民がシャガールに関心がないのであれば、その価値が分かるコレクターに売った方がシャガールも浮かばれるというものだ。
高知はその経済水準に対して公共施設が顕著に立派過ぎると感じたのだが、これは日本全体にも言えることだ。旭山動物園は1990年代に年間入場者数が30万人を切り(しかも、有料入場者は10万人以下)、旭川市が一時廃園を検討した。それを機に、職員の間で危機感が出て、その後の展示や運営の抜本的改革につながり、入場者数は300万人を超えるまでになった(うち250万人近くが有料入場者)。全国の多くの公共施設が、改革前の旭山動物園状態だといえる。