2015年09月21日
竜馬と酒と黒潮と
連休なので、軽いものを読んでいる。本書は高知の風土解説から始まる。
11:豊臣時代、大阪城下の町民たちがはじめて土佐武士というものを見た。土佐の長宗我部氏が秀吉に降伏し、大阪へ上ってきたのである。(中略)
―その風体、夜盗に異ならず。
北を険しい四国山脈に隔てられ、南は太平洋に面する土佐は、近年まで陸の孤島だった。その中で、独特の文化を育む。あるいは、大昔に外界から入ってきたものが、ガラパゴス諸島のように、外界では消滅したのに残っていたりする。
17: 土佐人は、水をmiduという。づを発音することができるのである。づとずを区別する。ぢとじを明瞭に発音わけする。(中略)江戸期に土佐藩士が江戸へ行き、江戸者をはじめ他国の者がこの区別ができないことに気づき、江戸弁や上方弁よりも土佐弁のほうが日本語として正しいとおもった。方言による劣等感を持たなかったばかりか、軽い優越感すらもった。これは幕末の土佐人が藩外活動をする上で自信の根拠の一つになったであろう。
土佐弁は発音に「正当日本語」を残すだけでなく、論理性が際立って高いと言われる。
25:土佐人の固有の気質がその方言をいまいうような性格に性格づけたのだが、同時に土佐人の発想と行動はその言語によって制約され、特徴づけられる。いま高知市で、人口密度に比して日本一多い職業はなんだときくと、意外に酒売り業ではなく、
―弁護士です。
(中略)県民たちは互いの議論で片付かぬとなると断固法廷へもちこんでゆき最後は法律で黒白をつける。
現在の弁護士数を調べてみると、高知県は人口1万人に一人くらいなので、標準的である。香川県は7000人に一人なので多い方だ。現在の弁護士数を決めているのは、民事ではなく、主に企業活動だから、経済状況があれでは弁護士もやっていけない。
30:たとえば土佐人の無神論的あっけらかん性である。この土地の一種の奇蹟は、日本最大の宗旨である本願寺宗をほとんど歴史的にも現在も受けつけていないことであり、自然、日本人が共有している後生欣求的な湿潤な瞑想の感情をもっておらず、江戸時代からそれが珍奇とされた。
交通やマスコミの発達してない昔の方が、地域多様性があったのは間違いない。司馬遼太郎が取材のために高知を頻繁に訪れたのは昭和30年代で、高度経済成長によって日本が変貌する前だった。
方言が廃れるのは寂しいだけでなく、言葉とともにある文化まで変えてしまう。多様性が尊ばれる現在、「地方創生」は中央からの指示ではなく、地方の自立でなくてはいけないと思う。
